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003:カフェ・ブレーク


 003:カフェ・ブレーク


 アメリカ軍らしき兵士たち5人は、ライフルを肩に構えてあからさまにオレの事を警戒しながらカーポートまでやって来た。

「サンキュー・ヘルプミー。マイネームイズ・トウヤ・ヤマモト。ソゥ・エニィシン・ハッペン?アンド・ドゥーユー・スピーキン・ジャパネィーズ?(助けてくれてありがとう。オレ、山本 登也。で、一体何がお起きてんだい?後、日本語話せるヤツ、いる?)」オレは、兵隊さんたちにティラノから助けてくれた礼を言った。ライフルはこの際無視だ。

「OK、登也。私たちは、アメリカ海兵隊 横須賀基地駐留部隊 第3小隊所属。私はチームリーダーのターク・カニンガム大尉」

 オレは取り敢えず手を出した。

 隊長はオレの真意をはかったのか、ちょっと間を置くと苦笑しながらオレの手を握り返して来た。

「マイネームイズ・ジョージ」間発入れずに、隣の金髪碧目が握手して来た。

「マイネームイズ・ダン」

 都合、全員と握手することになった。

 驚いたことに、チームには女性隊員がいてジェシーと言う。ジェシーは、爬虫類がニガテなのか、かなりドン引きしながらのグリーティングになった。

 そして、スクラップを呆然と眺めていた、色黒で人懐こそうな隊員ポール。「クルマ、ザンネンダナ」とお見舞いのカタコト日本語を交えてくれた。

「シュア。アンド・サンクス(ああ、ありがとうな)」オレも礼を言いながら握手する。「あ~。ウェラア・ユー・フロム?(出身はドコ?)」

「アイム・プエルトリカン(プエルトリカンなんだ)」

「お~、カリブ?カモン。ハヴァ・アイスド・カフェ(お~カリブか?おいでよ、アイスコーヒー用意するから)」一度は行ってみたいんだよな、プエルト・リコ。とっつきやすいのも納得だな。


 そして、キリがいい所でちょっと待っててもらい、家の中からキャンプ用のテーブルとイスを出して来て座るように勧め、さらにキッチンでアイスコーヒーを用意して戻り、ついでに焼け上がっていた目玉焼きと冷めたスープを持って戻る。

「悪いけれど、朝食の最中だったもので。よければあなたたちにも用意しましょうか?」

「ハウ・ティスト・ザッツ・ティラヌ?(ティラノってウマイのかな?)」誰かがぼそっとつぶやいた。

 確かに。言われてみれば気になる。昔ワニを食べたことがあるけれど、かなりウマかった。ティラノ、ウチにある包丁で卸せるかな?

「ノー!!ノーノーノー!」隊長が断固とした口調で言った。「ザッツ、ヒューマン。ユール・ビケミン・マンイーターズ?(あれは人間だぞ。お前ら人喰いになるつもりか?)」

「隊長さん。それ、ホントですか?」ヤバい所だったな。

「ムナクソワルいが、事実だ」

「ひょっとして、わたしと同じ、恐竜になった人間、って言うことですか」

 ターク隊長は黙ってうなずいた。

「でも…、戮してしまいましたけど…」そう言うオレも、さっきの応戦は正当防衛扱いになるのか、かなり気になった。前に酔っ払いに絡まれて殴り倒したら、問題になったことがあったもんで。

「その辺も踏まえて手短だが説明しよう」隊長も"もはや後の祭り"と言わんばかりの淡々とした流れだった。


 隊長が言うには、今朝から家の中に恐竜が出現する事態が関東全域で発生している。どうやら住人が恐竜化してしまったらしい。そして、その恐竜たちは、軒並み知能が動物並になってしまっており、コミュニケーションはまったくとれなくなっている。そして肉食恐竜になった者たちは、家人や近隣の住人を襲い牙にかけているという。

 アメリカ軍は、日本政府の要請を受け自衛隊と協力して、見境なく人間に襲いかかる恐竜を制圧しているのだという。


「それで、わたしたちはこの地域を回り、恐竜になった者がいないか調べて歩いているのだ」

 オレはウィンナーが突き刺さったフォークを口に運ぶ途中で固まってしまい、呆然としながら隊長の話を聞いていた。

「あぁ。それでさっき"お前はなぜしゃべれるのか"と訊いたのですか」

「そうだ。しかも、キミはシャツを着てネクタイまで締めている。

ビジネススーツを着た恐竜が、K1チャンプのようにティラノに戦いを挑んでいるシーンには兵士として感動した」

「あ~、それでさっき笑い転げてたんですか。そりゃそうですよね…」オレ、クルマにかじり付かれてキレただけなんだけどなぁ。

「いや。君のファイティング・スピリッツには敬服する。部下に欲しいくらいだ」プロの軍人に真顔でそう言われると、照れる反面、チト怖い。

「ところで、このハプニングの原因は分かったのですか?」

「目下の所、不明だ。現状はデータを集めている最中なのでな」

「まさか、パンデミック?さっき握手してしまいましたが、感染しないんですか?シェイクハンド・カンティジェン?(握手で感染しないの?)」

 その質問に、隊長以下全員が目を剥いて『しまった』という顔になった。

「ザッツイル・ダン(かまうもんか)」2番目に握手したジョージが苦渋の決断といわんばかりの渋い顔で言った。「アイ・ソークハンズ・ウィズ・ファーバリッ・ダイナソー(好きな恐竜と握手できたんだ)」やっぱりそうか。こいつ恐竜のファンなのね。

「う~ん。気休めかもしれませんが、恐竜になるタイミングは、"朝目が覚めた時"みたいですし、たぶん、握手じゃ感染はしないのではないでしょうか」

「取り敢えず、コマンドポストに連絡して指示を仰ぐ」

「あ、その前に確認しておきたいことがあります」

「何かね?」

「わたしはこのままここにいていいんでしょうか?どこかに連れて行かれるなら、きちんと人間扱いしてもらえないとイヤですよ」

「キミを応援のヘリでコマンドポストに輸送することになる。だが、アメリカーナ並に気さくなK1チャンプで、怒らせるとティラノを蹴り斃す猛者だ、と伝えておこう」いきなり盛って来るね、隊長さん。


お互いに物好きでよかったよかった。

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