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恐竜日和 ウォーク・アバウト  作者: ニジヘビ
トリケラトプス編
28/138

028:ブルズアイ

プリンキングを通して語り合うヤロウ二人。



 028:ブルズアイ


 デイノニクスのミハルは、射撃訓練の出だしから行き詰っている。

 とはいえ、打開するアイデアはあるんだな。

「ミハル、ロボ警官のB級SF映画って観たことある?」もちろん旧作の方ね。

「おまわりさんがサイボーグにされちゃう話しですよね。わたしあれ好きじゃないです」

 ウップ。そういやミハルは警察官だったんだっけ。なんだか今日は失言の連発だな、オレ。

「ゴメン。でもこれ訓練がらみのハナシで、他意はないんだ。

 あの話の中で、主人公が相棒に腕をサポートしてもらって銃の照準を補正するシーンがあったのは覚えているかな?」

「ロボがメッタ撃ちにされた後のシーンですよね?…あ!」ミハルは気が付いたのかジェシーを振り返る。

「いいアイデアじゃない。私も手伝うわ」ミハルの相方のジェシーが乗ってきた。

「ウェル。アイル・マグロード・トゥー(そうだな。オレもマガジンロード手伝うぞ)」ポールもこういうにぎやかなのが好きらしく、乗ってきた。


 M4ライフル用のマガジンは装弾数が30発と多いので、弾丸込めが割とめんどくさい。ジェシーとポールがその役を買って出てくれたので大助かりだ。

「クックッ(なあミハル)」それぞれの相棒二人をよそにオレはデイノニクス語でミハルに話しかける。

『なんです?』ミハルもデイノニクス語で答えた。

『練習方法なんだけど、まずはライフルを構えて的に照準を合わせることから始めようと思うんだ』

『いいですけど。なんで恐竜語なんですか?』

『ちょっとアイデアがあってね。できれば練習中も意識してデイノニクス語に切り替えてみてもらえないかな?』

『なんでですか?』

『ほら』オレはジェシーとポールを鼻先で差した。

 案の定、ジェシーとポールの動作は、スローモーというか止まったようにゆっくりとしたものになっていた。

『ええ?何が起きたんですか?』ミハルは慌てて辺りを見回す。当然ながら訓練中のジョージやダンも止まったようになっている。

「どうかなミハル。オレの考え読んでもらえた?」オレは日本語に戻して話を続けた。

「だって…。あれ?」ミハルも体感時間が通常に戻ったのか、ほっとしながらも冠羽を立てて興奮した様子だった。

『これなら、練習時間がかなり増やせると思わない?』

『ええ、行けそうです。すごい。銃の弾丸タマがゆっくりに見えますよ』

『でも体の動きそのものは思ったよりも迅くなってないんだよな』

『確かに。なんだか防弾チョッキを重ね着したみたいです』

『サイボーグみたいにはいかないけど、切り札には使えるだろう?

それに体の重さも、なんていうか、長い間体を動かしていなかった時のなまったような感覚だから、今のこの状態になじめばもっと早く動かせそうな感じじゃないかな?』

『そうですね。なんだか、しばらく入院していた後のリハビリの感覚に似てます。

 でもすごい!加速装置というかターボモードというか。

 スイッチはきょ…デイノニクス語に切り替えるタイミングですか?』

『そうみたい。じゃ、ジェシーたちがタマを用意してくれている間に、照準合わせの練習をやっちゃおう』

『はい。お願いします』


 まずは銃を自然体で構えられるよう、基本的なフォームを見る。

 使っているライフルは3点バースト仕様のM4にフォアグリップを付けたバージョン。

 いろいろと構え方を模索した結果、オレたちデイノニクスにとっては、フォアグリップをマガジンキャッチ(マガジンの挿入口)の直前辺りまで動かしたスタイルが一番楽だということが分かった。

 それからオレは、ミハルにライフルを構えてもらうとサイト(照準器)を覗き、ミハルの腕を動かして照準補正をする。そしてライフルを下ろし、また構え直してもらい、オレが照準補正する。

 何度か繰り返すと、ミハルは大体の位置を覚え込んだようだった。


 多分、体感的には20分弱くらいだったが、マガジンロードを済ませたジェシーとポールが怪訝な顔つきでこちらをうかがっているのに気が付いて、通常モードに復帰した。


「どうしました?」

「いえ、なんだかものすごい勢いでライフルをおもちゃにしているように見えたから。獲物の取り合いみたいだったわよ」

「アンド・ゲソー・フォアグリップ・ムービング…(それにフォアグリップを動かしていたようにも見えたし…)」

「あ、ごめんごめん。

 ちょっと熱中しちゃってたみたい。確かに、ミハルが構えやすいようにグリップの位置調整したんだけど、問題ないか見てみてもらえないかな?」オレはしれっとごまかした。ミハルもジェシーにライフルを差し出して、併せてくれた。

「ん、大丈夫ね。試しにライフル構えて見せてもらえる?」

「ありがとう。じゃあ、やってみるわ」ミハルはライフルを受け取るとテーブルの前に立ち、的に向けてライフルを構えた。

「あら、いいじゃない」

「照準合わせもトウヤさんが大体見てくれてたんだけど、そっちも見てもらえる?」

「どれどれ…。うん、ちょっと左寄りかな?これくらいなら練習すれば直せると思うわ。

 じゃあ、やってみましょうか」


 どうにか加速能力のことを内緒にして練習が始まる。

 ミハルはセミオート(単発)でマガジンを3本ほど空にすると大体7点サークル命中させられるようになってきた。

「トウヤ、オマエモ、ヤルカ?」オレも撃ってみたくてうずうずしていた所に、ポールが苦笑いしながら話を振ってきてくれる。

「じゃあ、1マグだけ」


 ポールは自分のライフルのフォアグリップを動かして、デイノニクス向けに調整してくれた。

「サンクス」ポールからライフルを受け取ると、オレもセミオートで的を狙う。

 ミハルのフォーム練習に付き合ったおかげで最初から7点サークルに命中させることができた。

後はホント慣れだけだね。

 5発ほど撃つとポールに頼んで的を30ヤードまで動かしてもらった。

 さすがライフルだけあって弾道がほとんどブレないので、この距離もすぐに8点サークル内に収められるようになる。

 オレは加速モードに切り替えて、はじめはじっくり狙ってから撃ち始め、途中から、銃のレスポンスの限界まで連射してみた。

 そうして、30発をあっという間に使い切った。

 オレは、ライフルのエアソフトガンを持っていないのであまり慣れていない。だからスコアは高くはなかったけれど、それでも7点サークル内に何とかまとめた。


『やるじゃねぇか。

 初めてでここまで集弾グルーピングさせられりゃ上等。

 連射もフルオートいらずの速さだし、バランスのいいシューティングだ』

『意識してた訳じゃないけど、どうもね』

『じゃあ、ちょっと面白いもの見せてやる』ポールは30連マガジンを装填する。『5点サークルの下の方な』と言うと、セレクタリーを3点バーストに切り替えてドカドカ撃ちまくった。

 ボールは5秒ほどで5点サークルの下にある『5』の数字の下の丸の中に30発全て命中させていた。

「すげぇ!さすが海兵隊(プロ)!」

 この手のターゲットペーパーを使った射撃マッチは『ブルズ・アイ』と呼ばれ、射撃と言えばコレ、と言うくらいメジャーなんだ。

その昔、狩りは食料を得る他、衣類素材を得る手段でもあった。その素材が穴だらけでは見映えのいい服は作れない。だからこそ、腕のいいハンターはなるべく獲物の急所を一発で射抜く技術を磨いた。そして獲物の目を射止めることが出来れば、傷のない素材を手に入れられる。

その由来から『雄牛の眼』が付いたそうだ。

実際、ポールが見せた腕前は、ホントにほとんどの動物の急所である目のサイズに集弾させていた。

『オレもジェシーと同じで叩き上げなんでな。実力はエリートコースの士官に引けを取らないぞ。

 もっとも狙撃はジェシーに敵わないがな』

『ジェシーってそんなにすごいの?』

『ああ。2000mを愛用のM700で射貫くからな。非公式記録だと2400mを貫いたよ。中近東でな』

『ええ?なんで非公式になったの?』ええと確か狙撃兵の世界記録が2800mだったか…。ともかく、ジェシーは世界ランキング級の腕前ってことなんだよ!。

『まあ、なんだ…。隠密作戦の最中だったんでな。作戦記録を残せなかったのさ』

『うわ、もったいないな』

『戦争ってのはそういうモンだ』


『そういや、昨日のティラノの時、ありがとうな』昨日の後先考えずにティラノから買ったタイマンの時、ポールたちの援護のおかげで生き延びられた。

『なに、お前も今朝の目隠し作戦、イケてたぞ。

 明日、江戸川に行くんだよな』

『そうそう。彼とダチになったんで先生に診察にしてもらいに行くんだ。

 ほら、コレ』

 オレはトルヴォサウルスのター坊が、錯乱して家を破壊して回っているステゴサウルスを止めようと戦っている動画(byリモさん撮影)をブラックベリーで見せた。

『あー、いっけないんだー。仕事中にエロビデオ見てるー』司令ジュニアのマイクがチョコチョコとノゾキにやってきた。

 だが、ポール動画に見入ったまま、躊躇せずにしゃがんでマイクの首を引き寄せた。

そして、マイクも目を剥いて一緒に見入った。

 動画が終わると、二人とも放心したようにオレの方を見た。なんか、目がコワいんすケド…。

『言っておくけど、家壊してる方じゃないぞ。ステゴを止めにかかっているトルヴォの方に会いに行くんだ』

『マジか?(×2)』ポールとマイクがハモる。

『だから、ポール。明日もよろしく』

『おう、任せろ!』ポールの性格なのかプエルトリカンの気質なのか知らんけど、やっぱノリいいよな。

『ええ!、明日コイツに会いに行くの?』司令ジュニアが割り込んでくる。

『いや、知らん(×2)』今度はポールとオレ。一応、明日のパトロール任務の資料を見ていたんでな。作戦がリークすると、チーム全体がヤバいのだ。

『どうする、マイク。このまま営倉で謹慎処分にされるか、それとも聞かなかったことにするか、どっちがいい?』ポールは司令ジュニアに言い聞かせるように訊いた。

『…分かった、黙ってる』

『よし。ってぇ!』マイクは去り際にポールのベンケイ(スネ)を蹴っ飛ばしてダッシュで逃げて行った。

『ってって。悪ガキでな、来るといつも面倒を起こすんだ』

『友達、いないんかな?』

『多分な。それに日本が好きじゃないらしいんだ。

 それより、そろそろ献血の時間だろ?

 切り上げて行かないか?』

『あ、そうだな。じゃあ、頼むよ。

 あと、そうだ。今夜よかったら付き合わないか?』

『飲みにか?』

『ジェシーにコイツ(M.E.U.)の話聞かせてもらいに行くんだ。

 よかったら、一緒に銃の話や武勇伝聞かせてもらえないか?』

『おう、いいとも。

 それなら、オレからも頼みがある』

『なんだい?』

『なるべく日本語で話してもらえないか?オレもジェシーみたく日本語にもっと慣れたいんだよ。…ねぷた祭り見に行きたいんでな』

「ねぷた祭り?」

「ニホンノ マツリ セイハシタイ(日本の祭り制覇したい)」

「いいな。オレでよかったら。それに祭りにも付き合うよ」


トウヤ:ところでねぷた祭りってどこのヤツに行きたいの?

ポール:えーと…ねぷた市?

隊長&先生&指令トリオ:それ、ちゃう。


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ちなみに執筆時点での狙撃最高記録は2800m。

投稿時点では3540mに記録が塗り替えられました。

2020Jur 記録はまだ破られていません。


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