026:射撃訓練 その1
今回はデイノニクスの射撃訓練。
そして、当然といえば当然の弱点が浮き彫りになります。
あとジョージの微デレも。
026:射撃訓練 その1
プライベートでエアソフトガンをイタズラしているので、銃の基本的な扱いは同じなんだと分かった。
使う銃は今朝トリケラトプスのビルとの一件で宛てがわれたもので、なぜか受領書やら取り扱いに関する誓約書にサインさせられた。
代わりに予備マガジンにマガジンポーチ、それに交換バレルとクリーニングキット、そしてメンテナンスマニュアルがジェシーから手渡された。
「なんだか、ものものしいんだね」
「当然よ」ジェシー(シャルビノ少尉)はちょっと神妙な様子で答えた。
「信頼と実績のある、けれどもう生産されていない惜しむべき名銃。
その中で使用可能なフレームを元に、チューンナップパーツで組み換えた海兵隊スペシャルなのよ。
だから、大切に使ってね」
「…実銃を持つのは初めてなんだ。だから文化的な所から教えてもらえないかな?」
「長話にならないなら、むしろ喜んで」
「銃ってものはクルマと同じで消耗品なんだよね?
なのに、なぜ古い銃を直して使うの?」
「その点に付いては、アメリカ軍が数々の戦闘を通じて学んだ歴史を知る必要があるから、詳しい事は後でね。
かいつまんで説明すると、あなたと同じく、戦闘中での信頼性があるから。その銃は私たちが選んだもので世界一信頼のあるモデルの中の一丁よ。
書類が色々多いのもそんなバックグラウンドがあるからなの」
「ミハルのとは違うんだね」ミハルはH&KのUSP.45(西独H&K社USP半自動拳銃の45口径バージョン。)が貸し出されていた。
「ミハルは後衛だし私がいるもの。それにアサルトライフルも借与されているからね。
ひょっとして不満だったかな?」
「ううん。悪いね。ちょっとカマ掛けただけ。
M.E.U.を貸し出してくれるなんて光栄だよ。
ただオレよりミハルの方が実銃の扱いに慣れているだろうから、彼女の方に渡すべきだと思ったんだ」
「そうかもね。
うーん、うまく言えないんだけど…。私はあなたをミハルと同列には見ていない。ウマに例えるとミハルはアラブ種、あなたはマスタング。アラブ種はあくまでもウマとして優れた品種だけれど、マスタングはウマを超えた何かなの。
今朝の作戦だけれど、トウヤだけ(銃の-)スライドを引かなかったわよね?
あれ、なぜなの?」
「逆に邪魔になるだけだからね。
バードウォッチャーとしての経験から、道具を意識すると鳥の考えている事が読みづらくなる。
初めて会う動物とコミュニケーションを取る場合、そんなものいらない」
「やっぱりね。
私も生き物が好きだから、よく分かる。
あなたは、フレンドリーな野生動物的な所があるのよね。
わたしもそれが分かっていたから、あなたと初めて会った時、自分を抑えていたのよ。
友達になりたかったから」ジェシーは嬉しそうに微笑む。
「オレも、今朝の恐竜時代の話。よかったよ。
その時不思議に思ったんだ。
この娘はどんな人生を送って来たんだろうって」
「私、テキサス出身なのよ。
後は訓練があるから夜にしましょう。ポールも一緒に呼んでいいから。ほら、サブ・チーフがジレてるわ」
「うん、分かった。
銃、大切に使うよ。ありがとう、こんなイイのを」
「じゃ訓練ガンバって。
あ、そうそう。隊長から言われたこと、注意は必要だけど気にしないでね」
「え?ああ…」
「わたしも叩き上げだけど、結構前にOCS(士官候補生学校)の訓練資格をもらえてたんだ。忙しいのとめんどくさいんで先延ばしにしてたのよ。
けど、ホント、他の連中のやっかみには要注意よ」
「ありがとう。けど訓練も他のメンバーと同じものをこなせるよう努力するよ」
ジェシーはサムズ・アップするとミハルの待つブースへ向かった。
オレも受領書類と銃のセットを抱えて、シューティングポストでイライラしているジョージの所へ急ぐ。
「おまたせしました、大尉」一応業務中なので官位で呼ぶ。
「時間がないんだからテキパキやって欲しいね。
今日は70発。
最初は練習用のソフトロード(薬量の少ない弾薬)を28発。残りは実戦用のホットロード(薬量を多めにした弾薬)で練習してもらうよ。
使い方は分かる?」
「操作だけはエアソフトガンで知っていますが、実銃を撃つのは初めてです。
注意点とコツを教えて下さい」
「撃つ時以外は常に銃口を下に向けている事。
決して銃口を覗かない事。
撃ち終わったらすぐ安全装置。
スライドを引く時はトリガーから指を離して銃口を下に向けてから引くこと。
そしてこれは好みだけれど、その銃は撃鉄をハーフコックに出来るから、使い終わったらハンマーを指で押さえながらゆっくりとハーフコックにした方がいい」取り扱いはエアソフトガンでも同じなのか。
「ハーフコックにする理由は?」
「誤動作しても弾が発射されないよう心掛けておく意味がある。
そしてすぐに使えるようにしておくため。
敵襲に常に備えて置くんだ。
日本じゃそんなコトまずないから、だから好みでいいんよ。
けど、本国じゃそんなことしたら、厳しい人ならシリを蹴られるね」
「やっぱり実戦部隊だけあってシビアなんだね」
「海兵隊っていうのは殺される前に殺すのが常識だからね。
中近東に行けばイヤでも身に付くよ」
それもそうか。
「じゃあ、始めて」
「はい」
オレは弾をロードボックスの中にあけて、マガジンを取り出し、実包を詰めて行く。
詰め…。
爪がジャマで実包をつまめない。
そんなこんなでようやく1発詰めて2発目にとりかかった所で「はい、タイムアップ」とジョージの声が掛かる。
振り返るとジョージがストップウォッチをこちらに向けて肩をすくめる。見るとタイムは180秒を過ぎていた。
「今は仕方ないけれど、弾倉装填作業を早くこなす訓練をメニューに入れないとならないな。
貸して。今日の所は僕がリロードしよう」
「お願いします」
ジョージは実包を無造作にいくつか掴むと、チャッチャッと詰めて行き、1分足らずでマガジン4本にリロードを済ませてしまった。(練習用のソフトロード4マグ分)
やはりこういう細かい作業は人間には敵わないな。
「今日はシューティングそのものに慣れてもらうことが課題だからね。
1マガジン45点以上がコンスタントに出せるようになるのが目標だよ」
「…はい」イロイロと気落ちしているところに、1マグ45点以上…。つまり、7発で7点サークル内に命中させないといけないのかよ。
上等だ。
ガバ(社名変更前の米コルト社のガバメントのこと。M.E.U.のベースになっている半自動拳銃)なら手慣れたもんだ。やってやろうじゃん。
オレは気を取り直して銃を前肢で掴み、銃口を下に向けたままスライドを引いて、チェンバーに弾が装填されていないことを確認した。そしてマガジンをエントリーし、スライドを引く。
ん?
オレはセフティを掛けると、ジョージに訊いた。「イヤーバッフル(耳栓)はないんですか?」
「ああ。実戦で使わないモノは使わないんだ。発射音に慣れてもらうためにね」
「了解です」
さて、撃ちますか。銃を両前肢でしっかり握り、構えて撃つ…。
なんて事だ!。アゴがジャマで銃を顔の前に持ってこれない!。
「教官。銃を顔の前に持ってこれません…」
ジョージは腕を組んで渋い顔でどうしたものかとうなりはじめた。
見てみると、ミハルとジェシーも四苦八苦していた。
ジョージ:デイノニクスが銃にここまで弱いとはね。
トウヤ :しょうがないじゃん。指太いんだし。
ジェシー:ミハルなんかもっと苦労してるわよ。M4のマガジンロードで。
ミハル :弾丸が細すぎて掴むこともできないです。もう泣きそ~。




