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恐竜日和 ウォーク・アバウト  作者: ニジヘビ
トリケラトプス編
25/138

025:ローリング・ストーン

トリケラトプスの応急手当と隊長からトウヤにあんまり調子に乗るなよとクギ差しです。

トウヤはちょっとヘコみます。



 025:ローリング・ストーン


 トリケラトプスのビル・フィールズ少尉は、気が緩んだのかその場にへたり込んだ。

 チームのDPVデューンバギーがやってくると、ジェシーがファーストエイドキットを引っ掴んで駆け寄ってくる。

それからのジェシーはすごいものだった。

『待ってて、今手当てするから。

 ダン、CP(コマンドポスト:指令センター)に連絡してジョンソン少佐を大至急応援に来るよう要請して!。

 ミハル、少尉に水を上げて。

 ふたりはクルマからファーストエイドキットを持ってきて!特に傷口を洗浄する水を多くね』ジェシーはトリケラトプスの巨体に臆することもなく、傷口を洗浄し始めた。


 本来は現場確保のため、オレも周囲警戒をするべきだったが、隊長に頼んで海兵隊のファーストエイドを直に学ばせてもらえることになった。ちなみにオレ、救命士講座を受講済みなんだ。

「わたしね、獣医なのよ。実家が牧場やってるんで、親父に言われてね」アシストをしているオレに、ジェシーは何の気なしに話してきた。

「クニには帰らないの?」

「う~ん、まあ、親父といろいろあってね。それに海兵隊が性に合ってるの。世界中あっちこっちに行っていろんな生き物を見られるしね」

 まあ、なんだ。人生いろいろあるやな。オレは話題を変えた。「しっかしアレだな」

「ん、なに?」

「狩猟恐竜が草食恐竜を治療してるなんて、おかしな風景だろうな、と思ってね」

「う~ん。それどうかな?オオカミやライオンは、人間や種の違う動物の子を保護することがタマにあるわ。恐竜時代は1億年も続いたんだし、おんなじことはあったんじゃないかな?

 当時に人間みたいな治療技術をラプトルたちが持っていたかどうかは分からないけど、なんとなくそんな時折助け合うような関係があったらいいなって思う。

 悩むことなんてない。助けたければ助ければいい。食べたければ仕留めるだけ。私だってステーキは好きだしね。

 はい、じゃ次の処置やるわよ」


 ジェシーを手伝い簡易縫合を続け、ジョンソン先生が現場到着するころには搬送可能なまでに初期施療を完了させていた。


 血相を変えてやってきた先生は、ビルのケガの具合を一通り視診すると胸をなでおろしたようだった。「いやはや、見事な手際だ少尉」

「しかし、なぜ先生が来たんですか?」

「君たちにはまだ伝えていなかったのだが、まだ恐竜に輸血ができないんでな。失血によるショック状態の対応のため、ずっと待機していたのだよ。

 トリケラトプスがいくら体が大きいとは言え、縫合が必要な裂傷があちこちにある。それに失血の影響もある。輸血か造血剤の投与が出来ればまだ少しは余裕はあるのだが、トリケラトプスの血液ストックなどWHOにもWWFにもなかろうよ。造血剤も然りだ。

 ふたりとも、多少のケガは構わんが、当面の間は輸血が必要なケガだけはしてくれるなよ」

「マジっすか?」血の気が下がるとはまさにこのことだ。オレは、大ケガした時のことを完全に失念していた。

「マジだとも。少なくとも、君たちデイノニクス用の造血剤は、トウヤの血液サンプルを元に今突貫で作ってもらっている、だがそれでも1週間ほどかかる。

 良ければ自分用に輸血用血液をストックしておくこともできるが、どこかでスケジュールを立てようかね?」

「明日、出撃予定があるんですよね?今日さっそくお願いできますか?」

「わたしもお願いしたいです!」

 オレもミハルも明日は江戸川の方へのパトロールでトルヴォサウルスのター坊を訪ねて行く予定がある。しかもター坊の現地レポートでは凶暴な恐竜がうようよしているとのことで、実際にター坊も10回ほど凶暴化した恐竜と交戦エンゲージが余儀なかったと言っていた。

 このままだとふたりともマジでヤバい。

「わかった、スタッフに用意させておく。昼食前に医務室へ出頭してくれ。1時間ほど見ておいてくれ」

「ありがとうございます。毎度助かります」

 先生は、ビルに自力でトラックに乗ってもらうと、一緒に搬送されて行った。

「では帰投するか」ターク隊長が状況終了を宣言する。



 出動後の後片付けの後、ケチャップたっぷり山盛りスクランブルエッグで朝食を済ませるとデブリーフィングになった。

「今朝はご苦労だった。基地の人的被害もなく、上々の首尾だった。

 本日の予定だが、私は午前中ミーティングがある。他の者は射撃訓練を実施のこと」ターク隊長は、朝一アサイチ仕事への労いの後、スケジュールの説明を始めた。

 主に英語がほとんど分からないミハルと、ある程度は分かるオレに向けて、日本語と英語との説明が折り重なる。

「ミハルは警察でハンドガンの訓練を受けているので、ハンドガンとライフルの両方を訓練してもらう。

トウヤは実銃が初めてということもあり、ハンドガンのみ。ただし余裕があるならライフルも覚えてもらう。

 トウヤは副長に、ミハルはジェシーにそれぞれ指導してもらえ。また2名とも装備品受理の書類を書いてもらうので、ジェシーに指示してもらえ。

同じく2名とも1000時より献血のため医務室へ出頭のこと。

 午後は1400時よりコンバットシューティング。平たく言えばサバイバルゲームだ。

 以上だが、何か質問は?」


 オレからは特になかったし、他のメンバーも同様だった。


「では続いて、いくつか通達事項がある」

 そして、ジェシーの少尉着任が正式に伝えられ、みんなでおめでとうを言い合った。ついでにOCS(士官候補生学校)どーすんだ?というツッコミも。

「それについては大統領特例ということで2年後に正式な試験を受けてもらう予定だ。もっともジェシーは実力自体はずば抜けているからな。2年後に向けてみんなでサポートしてやってくれ。とりあえず後で教科書テキストを受け取りに行くように」

 続いて、オレとミハルも少尉着任が伝えられる。で、聞いてみた。

「隊長。オレたちもそのOCSのカリキュラムをこなす必要があるのでしょうか?」

「本来ならな。

 システムをサラッと説明するとだ、成績が超優秀な兵卒がごくまれにOCSへの入学を認められ、みっちりと訓練を受けた後、ようやく准尉になれる。普通は大学を卒業後にOCSで訓練を受け、その後に各大学の予備役将校訓練課程を卒業して初めて認められるものだ。

 君たちは大統領令での大抜擢なんだぞ。ジェシーは今後カリキュラムを続けてもらうため問題はあまり起きないとは思いたいが、君たちふたりはかなり嫉まれる。

できれば、海軍と海兵隊のことを一つでも多く学んでもらい、内面的にも向上してもらいたい」

「そんな…に?」オレは絶句した。そのあまりにも遠い道のりとその重さに。

 だが、隊長はそこでしたり顔でほほ笑むと続けた。

「そこで、上層部では一つの解決策を実施することにした。きみたちにはそれぞれハンドラーとして、同階級以上のメンバーを随行してもらう義務を負ってもらう。

つまるところ、余計なちょっかいややっかみから君たちを守ってもらう役回りのお目付け役だ。

 そこでこれよりハンドラーの発表と任務を説明する

 まず副長、君はトウヤのファーストハンドラーだ。次にポール、君はトウヤのバディ兼セカンドハンドラーだ。

 そしてジェシー。君はミハルのバディ兼ファーストハンドラー。最後にダン、君はミハルのセカンドハンドラーだ。

 忘れないでもらいたい。私たちのチームはあくまでも実験的な編成なのだということを。

 結果が出せなければ、早ければ半年後には解散になる。そして、この結果については"パンデミックの解決へつながる作戦行動"ということで明確な定義がない。だが、少なくとも昨日の作戦が大統領の目に留まり今朝の作戦も好評を得ている。

 そのキーマンはトウヤ、君なんだ。何か発見したことやアイデアがあれば、私か副長か少佐に報告してくれ。

 一緒に壊れ始めた世界を立て直そうじゃないか」


士官クラスの海兵隊員というのは超人ともいえるエリートだってこと。

対するトウヤはサバイバルに長けた人間がデイノニクスの皮をかぶっているだけ。

これからちょっとづつ訓練メニューを重ねていくことになります。


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