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020:ミハルとジョンソン先生

深夜チャットしてると割とハラ減りますよね。

今回はセンセとミハルがトルヴォとダベり、トウヤが二人に珈琲を点てるだけ。



 020:ミハルとジョンソン先生


 オレと同じく、恐竜化シンドロームを発症してしてデイノニクスになってしまったミハルの部屋を訪ね、ドアチャイムを押した。

「どうしました?」ミハルはすぐに出て来たが、さすがに少し眠た気な様子だ。

「寝てるトコ悪いけど、ちょっと来ない?今、面白い人と話してるんだ」

「面白い人、ですか?誰です?話してる人って?」

「オレたちと同じ、人間の言葉を話せる恐竜と彼のパートナーだよ。恐竜になった者同士、情報交換しようとしてるんだ。ビデオチャットでね」

「行きます!ついでにジョンソン先生も呼びましょうよ」

「そうだな」

「所でその方はどんな人(恐竜)なんですか?」

「ガードマンだってさ。体長10mのね。トルヴォサウルスなんだ」オレはケータイでジョンソン先生を呼び出す。

「何だね、トウヤ?」先生もやはり疲れた声だった。

「センセ。今、オレと同じく目を覚ました時から人間の言葉を話しているっていう恐竜と、ビデオチャットしているんですよ。

 よければいらっしゃいませんか?」

「キミはナニ夜更かししとるのだ?君の部屋だな?すぐ行く」医師としてのスイッチが入りましたナ。

「軍人だとバレないカッコでお願いします。その方がいいですよね?」

「いい点に気がついた。了解した」

 ミハルと部屋に戻り、ビデオチャットクライアントを起動していると、先生がやって来た。先生は白衣に着替えて、いかにもお医者さんという出で立ちだった。

ミハルが立ち上がり敬礼したのでオレも倣う。そういえばセンセって少佐なんだよな。


 オレは話し相手のことをジョンソン先生にかいつまんで説明するとログインした。


 Webカム越しに見えるトルヴォサウルスのター坊と彼の大家さんのリモさんは、パソコンから離れてお茶でも飲んでいる様子だった。

片や湯呑みか何か。片やバケツらしき容器で。

 お二方がいらっしゃる「倉庫」の中もなんとなく見えている。

広さが40坪くらい。

オレがイメージする倉庫というと、鉄骨&張線の骨組みにブロックか石膏ボードの内装。そこにダンボール箱が山積みになる。

しかし、リモさんの倉庫は、なんだかロッジのような雰囲気だった。

何かのオフィスにも見える。それもリラックスして仕事できそうな、いい雰囲気の空間だ。


 おっと、つい見とれてしまったが、オレもなんか飲むか。「お二方、珈琲かお茶は?」

 先生もミハルも珈琲でいいとの事だったので、ツーリングバッグからバーナーとコーヒープレスを出してお湯を沸かしに掛かる。

 続けてミルと豆も出してざっと挽くと準備完了。

 リモさんとター坊にコールする。

「ただいまです。おまたせしました」

 Webカム越しにお二方がパソコンを振り向く。

「あ、いらっしゃったみたいよ。お帰りなさい」パソコンから離れているのに、リモさんの声は鮮明だった。ワイヤレスのヘッドセットでも使っているんだろうな。

 リモさんとター坊がパソコンに近寄ってくる。

やはりというか、トルヴォサウルスのター坊は、確かに重量感があるのだが、足取りがしなやかで綺麗だ。あのティラノのドタ足とは比べるべくもないものだった。


 リモさんが席に着き、その横にター坊が腰を落ち着けると改めてチャット再開。

「すいませんね、お待たせしました。まずこちら、お世話になっているボブ・ジョンソン先生です」

「はじめまして、リモさん、ターボ君。精神科医をやっております、ジョンソンです」ターボ君って?

「そして、こちらは同僚の坂月 美春さんです」

「こんばんわ。坂月 美春です」

「こんばんわ、リモこと森と申します。後ろの子は石田 貴大君。美春さんもハンサムね。ジョンソン先生も日本語が上手ですわね」

「はい警察官なんです。石田さんは警備員なんですって?」

「うわぁ、婦警さんですか。お互い大変ですよね。仕事は大丈夫ですか?」

 うわ、いきなりヘビーな質問来ちゃったよ。

「ええ、ちょっと訓練して明後日から現場復帰よ」

 ミハルさん強い!

「オレの方は、この騒ぎで現場が閉鎖になったんでしばらく休みです。復帰できるかどうか、本社からの回答待ちなんですわ」

 オレはふと、石田さん(トルヴォサウルス)が幕張メッセで警備誘導に就いている様を想像してみた。

体長10mで人間の腕くらいの太さの25cmもの牙をゾロリと備えた肉食恐竜が、ベストと腕章を着けて警備棒を振っている。

人間はおろか、大抵の恐竜でも粗相はするまい。

「石田さんの会社ってやっぱりモール(肩紐)はエンジ(色)と他の色を使い分けているのですか?」

「はい。自分はエンジ背負ってます」

 警備業務というのは道路工事の交通誘導などから金融機関の警護までいくつかのセキュリティランクに分かれている。

当然、ランクの高い業務に就けるガードマンというのはそれだけで信用に足る人物ということだ。

 その一つの目安になるのがこのモールの色。

 黄色や水色は誰でもつけられるが、エンジは経歴や業績などの評価の上、警備会社や組織から与えられるものなのだ。

 つまり、石田さんは今朝のティラノと別格の信頼の置ける恐竜(人間)ということだ。それも、牙を使わずに大型恐竜をノックアウト出来るだけの機微を備えている。


 これなら信用してもよさそうだな。


「ほらほら、その辺で」リモさんがター坊の鼻先をペタペタ叩いて注意を促す。なんか大物だな、このおばちゃん。「すいませんね。この子ったら放っといたら何時間でもお喋りしてるもので。

 そろそろ本題に入りませんか?」

「そうですね」オレはさらっと頭の中で協議事項アジェンダをまとめる。

「まず始めに、こちらはジョンソン先生、そして、そちらはリモさんがそれぞれオブザーバー(立会人)を務めていただきます。もちろん意見参考人として意見やアイデアを出していただいて結構です。

 そして本題の情報共有ですが、私とミハル、そしてそちらの石田さん(ター坊)とで状況の取り交わしです。

 よろしいでしょうか?」これは主にミハルに向けたものだ。ミハルは、微笑みながら軽くうなずく。石田さんも、OKを返してくれた。

「次に内容ですが、年齢と性別、目を覚ました時の自分自身の状況といった線で進めようと思います。

 いかがでしょうか、リモさん」

「う~ん、出来ればそれぞれの職業を明かすことは出来ないかしら?内面や言葉を保っていられたことの何かの判断材料にならない?」

「そうですね。先生、もう石田さんもミハルもバラしちゃってますし、オレも話しても問題ナイですよね」

「うーむ、そうだな…」先生は何かを言い出しかけた後、思う所があるのか言い淀んだ。

「リモさん、ちょっとお時間下さい、いいでしょうか?」

「ええ、構いませんよ」

リモさんの快諾に、オレはマイクをカットすると、先生に話し掛けた。「先生、どこまでなら話していいでしょうか?

出来れば隠し事はしたくはありませんが、今後の活動に支障が出るようなら、国家公務員程度で濁しておきます。

もっとも、石田さんと森さんの協力が得られれば、先生にとって大きなアドバンテージになると思うんですよ」

「あー、トルヴォサウルスをスカウトしたいのか?」

「へへへ、実はそうなんです。人間としても好ましいタイプですし、恐竜同士のお仲間が増えるとお互いにいい相談相手になると思いませんか?」

「ふ~、分かった。だがまずは公務員路線でぼかしてくれ。

そして私からも相手にいくつか質問するので、その上で判断する」

「了解しました。クルルル…(やったね~)。ありがとうございます、先生」

 嬉しさのあまりネイティブ(デイノニクス語)が出てしまったが、気を引き締めながらマイク・スイッチを入れる。

「お待たせしました。先の質問ですが、私たちは公務員でして、特殊性の高い業務に就いているのです。そのためあまりくわしくお教えすることができないのです」ただしアメリカのね。

「ふーん。じゃあこれだけは教えてちょうだい。あなたのボスはジョンソン先生かしら?」

「そうです、ミズ・モリ。申し訳ない。とは言え、いずれお教え出来る機会があるやもしれません。その時はディスカッションの幅が広がると思います。それまで御容赦いただきたい」

「承りました。では話題を変えましょう。

 この…災害ですが状況はどうなっていますか?」

「…おそらくもうご存知とは思いますが、世界規模で混乱を極めています。暴動に近い出来事ではありますが、鎮圧のために自衛隊や在日米軍が出動しております。

 また恐竜についてはご存知の通り、原因は不明ですが人間が変身してしまったようなのです。

そして大多数の恐竜は荒ぶる獣として人間を襲っています。

 しかし、トウヤとミハル、そしてそちらのターボ君を含め、ごく少数ですが人間としての自我を保っている方もいるようです」

「そこだけは救いね。

 トウヤさんとミハルさんは初めから自分を保っていられたの?」

「ええそうです」

 お湯が沸き始めたので、オレは先生とリモさんのやりとりに耳を傾けながら珈琲を点てる。

コーヒープレスにお湯を注ぐだけだがちょっとコツがあるんでね。内壁伝いにお湯を注ぐ方が香りが引き立つんだ。

 コーヒープレスにフタをしてしばらくすると、部屋の中に珈琲の香りが漂い始める。

「いい香りですね」ミハルが嬉し気に囁く。

「少し薄めだよ、夜だからね。代わりに香りが強くなるようにしてる」

 先生の方はリモさんとの情報交換はほぼ終わりに近づいている様子だった。

 オレはコーヒーをコッフェルに注ぎ分けると先生とミハルに渡した。

「ありがとう。いい香りだな」

「こちらこそ遅くにありがとうございます。

 リモさんの方はどうです?」

「概ね話しは終わったのでターボ君の問診に入るところだ」

「食事は大丈夫でしょうか?」

「そうだな、それも確認しよう」


元のハナシが5倍くらいの長さだったので切り詰めに四苦八苦。


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