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013:今晩それでいいです

トウヤとジョンソン先生とケビンがレパートリーについて話し合います。



 013:今晩それでいいです


「バーガーはうまかったかね?」ジョンソン先生がステンレスポットをテーブルの上に置きながら訊いて来た。

「ええ、とても。おかわりが待ち遠しいです。それにしても、大尉や少佐におさんどんやらせてしまってすみませんね…」

「なに。それを言うなら、今の君は言わば食客だ。用心棒の先生を粗末に扱ったら、レックスみたいに蹴り殺されてしまうぞ、とタークに釘を打たれているのでな」先生は愉しげにほくそ笑む。

「なんだかオレがティラノ倒したことにされてますね」

「箔付けもあるが、君の攻撃は実際かなりいい読みをしていたのだよ。大尉たちのヘッドカムの画像と事後処理班の報告で実際明らかになっているが、あのレックスのスネには致命的なダメージが入っていた。動脈が縦に1インチほど切り裂れていたんだ。あの後立ち上がったとしても次第に足の先が酸欠になり歩けなくなっていただろうという見解だ」先生はそういうとしたり顔でニヤッと笑う。

「キッチンからマグ(カップ)を借りてくるよ。気にせず座っていてくれ」ジョンソン先生はそう言うと、キッチンへと向かった。


 あのティラノには気の毒な事をした。ヤツもオレと同じ人間だったというのに。

あ、しまった。さっきのバーガーと人間の見分けが付かなくなる下り、先生が居るときにすればよかったな。


 ちっ!


 ん!?


 ちっ!ちちちちち!


 おお!


 ちちち、ちちっ!


 おお、新発見だ。

 デイノニクスは、というより、ドロマエオサウルス科は、舌打ちが出来るぞ。

 口笛はどうだろう?


 ふー、ふー、ふっ、ふっ…。

 ヒュー!


 お、出せた。じゃあオクターブは出せるか?


 C、D、E…。


 ギリギリ1音階はカバーできるようだ。口の中が広くなっているせいか、人間より2音階ほど低くなるみたいだ。

 ちょっと「ダニーボーイ」を吹いてみる。まあ、歌ナシなんで実質「ロンドンデリーの歌」なんだが。

コレは終わりの方の高音域がチトかすれ気味になった。けど練習すればなんとかなりそうだ。

 じゃ次は「パフ・ザ・マジック・ドラゴン」。日本語版だと色々アレンジがあるけどオリジナルの曲にする。


 ちょっとノって来た所で、壁際の軍服ライフル4人衆以外の視線を感じた。振り返ってみると、キッチンの入り口でケビンとジョンソン先生が目を丸くしていた。

「あ…、これははしたないマネを」

「いや、いいんだ。口笛か。考えてみれば、恐竜の口で日本語と英語が発音できるというのもすごいことなんだ。P以外の音はほとんど発音できているしな」

「…ジャパン」

「ジャパン、かね?ほぼ"じゃふぁん"、と聞こえる。まあ、それくらいなんでもない」

「なんてこった。パン(ふぁん)を買う時に困るじゃないか。ふぁふぁふぁぷは、ぷは、ぱは、ぱ、ぱっぱっぱ…」ちなみに好物は焼きカレーパン。

「あ、直った」ジョンソン先生がさりげなくOKを出してくれる。

「コツは唇じゃなくて、アゴでちょっと口先を開くみたいですね」

「そうみたいだな。そういえば、音楽はやらないのかね?何か楽器を?」

「ええ、ハーブとバイオリンを少し。バイオリンはこの指だともう無理ですね。ハーブなら十分行けそうなので、愛用のを持って来ました」

「ほう。ワシはマンドリンをたしなんでおる」

「私はハイスクールのとき、クラリネットをやっていたな」

 ともあれ、3人とも再びテーブルに着き、遅いランチ兼ティータイムとなった。

話題はしばらくの間曲のレパートリーが続き、なんとなくヨーロッパの民謡とジャズアレンジの話に流れて行った。


「そういえば、肉食獣の食についてなんですけど」話が一区切りつくと、オレはジョンソン先生とケビンに思いついたことを話し始める。

「肉食獣の食?」

「肉食獣って、獲物のモツを食べるじゃないですか。中生代でもそれは同じだったんじゃないでしょうか?」

「ああ、そうか。内臓の中の植物繊維と植物蛋白も一緒に摂取していた、と仮説を立てられるな」

「ええ。ですんで、煮崩した野菜とかは食べても大丈夫なんじゃないでしょうか?」

「う~ん、ホウレンソウのキーマカレー。ポテト・ポタージュ。ポトフ。トウフ・パティ…」ケビンがいくつかレシピを挙げる。

「じゃあ、今晩それでいいです」

「え、ええ?ディナーのことを話してたのか?」ジョンソン先生は面食らったように声をあげた。

「はい。だって、オレがケビンと引き合わされたのも、これからの献立を考えるためだったんでしょう?」

「うむ。恐竜の生態についての話題かと思ったぞ。

キミというヤツは、とぼけていると言うか剽々としていると言うか。その割に鋭い意見を突然出してくるな」

「まあ、これで今夜の問題はカタが付いたね。明日のことは明日決めよう。今夜はキーマカレーを用意するよ」

「ええ、お願いします」

「あ、いたいた。捜したぞ、トウヤ」丁度キリのいい所で、ターク隊長たちがドヤドヤと入って来ると、ジョンソン先生に敬礼をし、先生の労いに席に着く。

「隊長。今先生たちと、今夜の献立を考えていたところです」

「そうか、決まったか?」

「カレーになりました」

「ナニ?カレーライスか?」

「はい」

「スプーン、使えそうか?」

「あ、そこまで考えてなかったな。トウヤ、と言うか、恐竜用の食器」

「フォークは使えたんだから、スプーンも何とかなるでしょう」実際、今朝ターク隊長たちとのコーヒーブレークで、ソーセージを食べた時に実績があるからな。フォークでスパゲティーをクルクルと絡め取るのは無理だけれど、握り箸的な使い方なら十分自信ある。つまりスプーンなら普通に使えるって事。


隊長 :恐竜にカレー食わせて平気なのですか?

先生 :ワシ知らん。

トウヤ:旨ければOKっスよ!


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