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012:チーズ(がちょっとしか入っていない)バーガーの午後

シェフとデイノニクスの一騎打ちです。



 012:チーズ(がちょっとしか入っていない)バーガーの午後


 ジョンソン先生がオフィスへと姿を消してから少し経つと、ケビンがチーズバーガーを持って来てくれた。

「おお、これは旨そうだ!」

いい香りだ。ボリューミーなバンズとパティ。表面が程よくカリッと焼け、肉汁が染み出している。

ファーストフード店が及びもつかないほどの一品だった。

 そして、これ食べてもなんともないようなら、今後の食生活でパンとチーズがOKということになる。つまりピザやグラタンやパスタもおそらくクリアできるだろう。

何ともうれしいテストだ。チーズが本当にちょっとしか入ってないのがナンだが。

「先にいただいていよう。アツアツのが旨い」

「そういえば、さっき先生のトコでもらったお茶が、ちょっと熱く感じたんですよ」

「その時の温度って分かる?70℃くらい?それとも60℃くらい?」

「そうですね…。70℃くらいかな?今朝、ソーセージをボイルしたんで、その時の感覚と比べて、ですけど」

「体が温度に敏感になっているのか、それとも、単に熱いのがニガテなだけなのか、ともあれ、注意するよ。バーガーの方はどうだい?熱いかな?」

「じゃあ、いただきます」

 人間からすれば巨大なハンバーガーだが、デイノニクスからすればほんの一口にもならない。しかし、まずは様子見、ということで、端を少しかじる程度にする。

 ん~!パティの肉汁とチーズの脂が口の中で溶け合い、舌の上で滑らかなジングルを奏でる。

「体感的には鉄板から切り分けたばかりのステーキ、という感じですか。イッツ・スクランプシャス!(頬が落ちそうですよ!)」今のオレにはほっぺたはないんだけどさ。

「それはありがとう…」ケビンは、オレが残りのハンバーガーをよく冷まし、一口で食べてしまったのを見てぎょっとした顔をした。

「…やっぱり、大型爬虫類がモノを食べるシーンは恐いですか?」うまかったもんで、つい。

「…うん、脅威だね。間違ってもハンバーガー早食い競争には出場しないでくれ。人間じゃキミに勝てない」ケビンはそういうとニヤっと笑った。「おかわりを作ろうか?今度のはチーズ抜きになるけれど」

「え、いいんですか?じゃあ、パティをダブルにできます?」

 ケビンは何かハンド・サインを出した。

「構わんよ」ビュッフェに入って来たジョンソン先生が答えた。片手にポットを携えている。ハンド・サインは先生への問いかけだったのか。

「4枚にオマケしとくよ。いやぁ、イイ喰いっぷりだ。バーガーを一口でパクリ、なんてアクション。カートゥーン(アニメ)の中でしか見たことなかったから、本当に出来るのか、と思ってたんだ」

「ねえ、ケビン。オレ、どうなるのかな?これからのコト考えると不安だ。いつ何時、他の恐竜たちと同じになって、人間とバーガーの見分けが付かなくなったら」

「さてね。友愛と飢餓をテーマにした映画や小説はいくつもあるけれど、つまらない結末ばかりだね。

 唯一納得出来たストーリーがあるけれど"自分の都合で決める"というのだった。だから、選択が出来るなら、常にバーガーを選ぶよう努力してもらうしかない」ケビンの目が一瞬、張り付きの軍服ライフル4人衆に向く。

「そうでなければ、ライフルの集中砲火しかこちらは打つ手がないんだ。

 私も君が気に入ったよ。食い方というのは、その人や動物の性格がよく出る。君はイイヤツだし、適度に品格もある。

それに、もう言葉を交わしてしまったしね。そんな結末は私もゴメンだ。

さて、おかわりを作ってくるよ。ちょっと待ってて」ケビンは空いた皿を手にキッチンへと立ち上がる。

 やべぇ、なんかホロリときた。


動物でも、きれいに食べるコと辺りに飛び散らせながら食べた後で床を嘗め回すコがいます。

トウヤはツーリングなどでキャンプする際に自炊するヤツなので、食べ方はきれいな方です。


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