彼は空から降ってきた。
彼女は生まれながらにして才能に恵まれた少女だった。
特に戦いに関する才能は父の才能を余すことなく受け継いだ事により一般の人間が努力で補う領域を軽々と飛び越えていく。
だからそれは油断だったのだろう。
相手は見るからに格下。彼女の本分が戦術にあったとしても直接的な戦闘でも非凡な才能を持っていた彼女にとって、相手を圧倒する事など容易い事であった。
だから気がつかなかった。
自らが守るものが自身の身一つではないことに。
後ろから上がる悲鳴。
同時に動く刺客、その数は4人。
悲鳴を上げた女性に2人、と彼女自身に2人。
思わず舌打ちをしたくなるこの状況で、それでも彼女は迷う事なく悲鳴を上げた女性に向かう二人を自らの剣で一度に切り捨てる。
そのまま返す刃で自分に向かってくる二人の内の一人を切りつけた。
(残り一人・・・)
瞬間・・背後に感じた微かな殺気に反応し剣を引き戻す。
ギィン!!
いつの間にか悲鳴を上げた女性が剣をもって近づいてきており、間一髪その一撃を受け止める。
しかし背後には先ほどの刺客の凶刃がすぐ傍にまで近づいてきていた。
(間に合わない!!)
刹那の間に自身の死を確信した少女が、それでも最後のあがきをしようとした時・・・
『ガスッ・・・・』
自分を狙っていた凶刃は空から降ってきた長椅子と少年に押しつぶされた。
緊張した空間の中に流れる微妙な空気。
そこから何を感じ取ったのか少年が、口を開いた。
「オーケー、とりあえず話し合おう。俺、暴力嫌い。」
微妙な空気は、一気に混沌と貸した。