こいうのって小説か、アニメの設定だけにして欲しいよね。
「洒落になんねぇ」
少し癖のある髪を肩まで伸ばし、それを無造作に後ろで纏めた少年が呟く。
よく見れば野生的な、悪くいうなら不良予備軍である。
「正直、自分がこんな状況になったら笑えねぇな。」
少年の名前は片桐 悠。
15歳の中学3年であり今年に受験を控える少年である。
そんな彼が何故にこんな途方にくれた状況に陥っているかといると、始まりは1ヶ月も前にも遡る。
ある日、ユウとが学業という名の拘束から溢れ出すリピドーやらなんやらで脱出して家に帰りつくと、部屋の机には『旅に出ます』との両親の書置き。
いつまでも新婚ムードの抜けない両親が、自分を置いて旅行に出かけるのは今に始まった事ではないので、特に気にもせず。一応確認の為に両親がいつも使っているPCを起動させ、メールボックスを開くとオーストラリア行きの航空券を買った返信があった事と、両親のパスポートが無くなっていた事から今回は海外だから少し長くなりそうだなと納得したぐらいだ。
しかしさすがにそれが3週間を超えたあたりで可笑しいと思い始める。
いくらなんでも連絡が無さ過ぎるのだ。普段からよく二人で旅行にいく事はあっても、時間が長くなる時には、なんだかんだで一度くらいは連絡を入れてくるはずなのだ。
しかし、今回は3週間もの間一度として連絡はない。
さすがにこれは可笑しいと思いユウが警察に連絡した所、それから1週間たった今日、ユウは警察へ呼び出され、両親の行方不明を知らされた。
しかしながら問題なのはその行方不明のなり方にある。
最後に両親が確認されたのは、オーストラリアにあるショッピングセンターの監視カメラである。
その映像で、二人は仲睦まじく買い物を行いショッピングセンターを出る映像が確認されている。
しかし奇妙な事にその同時刻に外から同じ出入り口を写していた映像には両親が映っていないのだ。
これには警察も完璧にお手上げだといわんばかり。
この映像は今オーストラリアでは一躍有名になているらしい・・・神隠しとして。
「親父とお袋の親族とかって・・・全然記憶にねぇな。」
ユウにとって親族とは両親である、生まれてこの方一度たりとも親戚などに出会ったことはない。
「とにかく、幸い今の貯蓄があれば大学までは問題ないし、後はどうとでも『ズプリッ・・・』・・あ??」
時刻は夜。近道をしようと、薄暗い公園を歩いて帰っている最中、ユウの足が地面の違和感を訴えた。
視線を下に向けるとそこには波打つ地面・・・というより地面が波打つ事などありえないので、波打つ何かがユウの足を掴んで離さない。
「ちょっっ!!!マジか!??ヘルプ!!!つかどんどん沈んでいてるし!?」
あせって近くにあるベンチに飛びつくが、穴はそれすら気にする事なく沈みこんでいく。
「まるごと!?まるごとなんですか!!!??ファック!?マジふざけんな『ガスッ・・・』『グハッ』・・・おーけー、とりあえず話し合おうぜ。俺、暴力嫌い。」
身体が丸ごと飲み込まれたと思ったら目の前にはマントとベンチに潰された男、それから銃刀法違反って知ってる??って聞いてみたくなるような刃物ばかりを持った男達だった。