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告白

「話ってなぁに? おにいちゃん」


翌日僕はおじきに頼んで急遽、店を休み妹の有栖を近場のカフェに呼び出した


朱璃が挨拶に来る前に有栖にだけは話しておかねば!


「ん…あのな…これから話すことに驚かないでほしいんだけど…」


「どうしたの? なんか変なことに巻き込まれたとか?」


心配性の有栖は僕の手を握り瞳を潤ませる


あ~すでに心配かけちゃってる


「好きな人ができた」


有栖は瞳をまんまるくしてじぃーっと見つめる


次の瞬間満面な笑みを浮かべて手を叩いた


パチパチパチ


「やったね! よかったじゃん♪玲央くんと心配してたのよ~。お兄ちゃん、女嫌いだし一生独身かなって。


めでたいめでたい♪ 玲央くんとお祝しなくっちゃ♪」



凄く…喜んでくれてる…




兄想いの妹よ…これから僕はきみをガッカリさせなきゃならないんだ


ふぅ…


思いきり深呼吸して僕は言葉を切り出した


「で、どんな人? ううんうん、おにいちゃんが好きになった貴重な相手だから細かいことは気にしないよ。


言いにくそうだから…年上か年下…でも面倒見悪いから…年上でしょ♪」



流石に僕をよく理解している


確かに年上には違いないが…


あれ…朱璃っていくつだっけ…そういえば歳、聞いてなかった!!



「ちょっと待ってな」



トゥルルル


咄嗟に彼の携帯にかけてしまった



「どうした?」


耳心地いいソフトでノーブルな声優ヴォイスが胸に響く



「あのさ、今、妹にあなたのこと、放そうと思って…朱璃っていくつだっけ?」


「なになに~? カノジョさん? 綺麗な名前ねっ」


有栖はワクワク顔で興味津々に耳をすましている


「38…挨拶しようか?」


いやいや、それアウトでしょ!


「いい、僕が話してからお願いするよ、ありがとうっ」



「店、休んだのか…なら飾りつけに…」



ピッ…


ごめん…朱璃…


あの様子じゃ車飛ばして来かねないもんな



『途中でごめん。後で連絡するからヒロくんとゴウくんによろしく伝えてね』


手早くメールを送り有栖に打ち明ける決心をした



「あのな…おにいちゃんの好きな人は…男の人なんだ…」


「え……」


一瞬 時間が止まったかのように永遠にも感じられる沈黙が訪れたが



有栖は瞳をキラキラさせると僕の両手を強く握りしめた



「いいじゃない! 素敵じゃない! 森茉莉の世界みたい♪」


有栖…


「ぜ~んぜん気にしないよって、どころか忘れたの? 私が筋金入りの腐女子だって♪


おにいちゃんは若く見えるけど流石に風木のジルって感じじゃないから…う~ん、レオとかハンスとか…ねえ、やっぱりお相手は達吉みたいな美丈夫?」


想定外な好感触と…いうより妹のがっつきに驚く栗栖



「彫刻家の紅蓮朱璃…お前の言う通り38歳の美丈夫だよ」


「すごいっ♪ でかした! おにいちゃん♪ って…待って…今、紅蓮朱璃って言った?」


「あ、うん。知ってるのか?」



有栖はますます瞳を輝かせた



「知ってるもなにも…わたし、高1の時から彼のファンなのよ! 個展も何度も行ってるし…だって紅蓮さんの作品っておにいちゃんにそっくりなんだもん」


「そうだったのか…」


よかった…ドン引きされてあわよくば兄妹の縁を切られるんじゃって思ったけど…


「で、いつからお付き合いしてるの?」


そ…それは…


「先週、店に来てね…ハーキーマーダイヤを探しに…で、個展に呼ばれて…」


「それって超最近じゃない…まさか…ワンナイトラブしちゃった…とか…」


途端に栗栖の顔が青ざめる


「やっぱりそうなのね? なんか感じが変わったなって思ったんだ…ちょっと、弄ばれたの? 言ってごらん!


いくら尊敬する紅蓮さんでも言と次第によっちゃ、許せないわ」


喜んだと思ったら今度は額に血管をたてて目が据わってる…


「違うよ…有栖…話を聞いて…」




「至って真剣ですよ…」


えっ??


聞き覚えのあるいい声に振り返り 栗栖は心臓が跳ね上がった


ついさっき通話していた朱璃がトレンチコートを羽織り口の端をニヤリと上げて長い脚で佇んでいるではないか…



「ど、どどど…」


「どうしてわかったかって? ふ…愛しいお前のことは爪の先も逃さない…」


朱璃は栗栖の顎を長い人差し指でチョイっと弄ぶと有栖に向き合い深く頭を下げた



「驚かせて申し訳ありません。紅蓮朱璃と申します…」


あんぐりと口を開いて固まっていた有栖は紅蓮の声に我を取り戻すと挨拶を返す


「あ、いえいえ、とんでもないです。こちらのほうこそ兄がお世話になって…妹の安藤有栖です」


「目元が栗栖に似ていますね。込み入った話をこちらで話すのもなんですので…よろしければうちにいらっしゃいませんか?」


「ちょ…待ってよ…朱璃!」


「はい、喜んで伺いますっ」


「ええっ、有栖、お前…」


「おにいちゃん、素敵な方じゃない! てゆーか…先生、私、高校の時から紅蓮先生のファンなんですっ」


有栖の言葉に今度は朱璃の瞳がぱぁっと輝く


「ほぉ! それは大変に光栄です。よろしければアトリエをご覧になりますか?」


「きゃ~!! 感激ですっ、おにいちゃん、ねぇねえ、おにいちゃんてば!」


興奮してぶんぶん栗栖の肩をゆさぶる有栖


「な、なんだよ? お前、興奮しすぎ…」


「だってファンなんだもんっ、先生の「眠り姫」に私、雷に打たれたような衝撃を受けて以来、何度も個展に行ったんです。作品は高くて手が出ませんけれど画集は全作、持っています♪」


「眠り姫?」


「やだ、おにいちゃんたら! 先生のデビュー作よ! ほら、これ…」


有栖はスマホを検索して見せてくれる


まるで夢でも見ているように安らかな顔で瞳を閉じて眠っている僕にそっくりな少年の顔…


こんな風に…ぼくは…この人を追いて…



栗栖の瞳からポロポロと涙が零れる


「どうしたの? おにいちゃん、大丈夫?」


泣き崩れそうな栗栖にコートを羽織らせ抱きしめる紅蓮を憧れの眼差しで見惚れる有栖



「落ち着いて…お前はもうここにいるんだ…有栖ちゃん、わたしの作品を見てくださって本当に嬉しいです! ありがとう」


あ、あ、有栖ちゃんだって…きゃあぁぁぁぁ


憧れの紅蓮にちゃんづけされ、なおかつ、兄の恋人と知って興奮する有栖…


「さあ、どうぞ…」


紅蓮にエスコートされぽぉーっとしながら後部座席に座った有栖と泣き続ける栗栖を助手席に載せて紅蓮は屋敷へと向かっていった








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