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ダンとマリー

コチコチコチ…



『うふふ、よく寝ているわ』


『爆睡してる』


『あどけない顔して…可愛いわね』


ペロペロペロ


『よせ、マリー。起きちまうぞ』


ペロ…


ん…あたたかい…


ペロペロ…


なに…誰かに舐められてる? え…


ガバッ!


自分の頬を舐める舌の感触にびっくりして飛び起きると二匹のハスキー犬がベッドの傍で自分を見上げている


『あら、起こしちゃった…ごめんなさいね』


『だからよせと言ったろうが…』


え…え、えぇぇぇーっ!!!


犬が…犬が…俺に話しかけてるっ!!


『あなた、私たちの声が聞こえるのね。嬉しいわん』


『そんなに驚くことはなかろう。俺はダン。こいつは妻のマリーだ』


「犬が喋ったぁっ!!!」


「よせ、ふたりとも」


『あら、ごめんなさい。あんまり可愛い寝顔だったから』


『俺は止めたんだが…どうにもマリーは母性が強いからな…』


コーヒーカップを片手に部屋に戻ってきた紅蓮を見て栗栖は先ほどの熱い情事が夢ではなかったことを自覚する


「紅蓮さん…」



「他人行儀な呼び方しないで…朱璃でいいよ。栗栖」


ベッドで放心している栗栖にチュッとキスする紅蓮



「失神したんだよ…可愛いね」


し、し、失神???


「カフェオレにしたよ、ミルクと砂糖たっぷりの…好きだろ?」



そうだ…僕は紅蓮に何度も何度も愛撫されているうちに光の渦がぐるぐる回って…



「そ…残念ながら気を失った相手を犯すような悪趣味ではないからね」


『キョトンとしてる…この子、わかっていないようよ。栗栖ちゃん、あなたのお尻はまだ乙女のままよ』


『おい、マリー』


『だって…ちゃんと言ってあげないと』


乙女のままって…


要するに僕は一人でその…昇天しちゃって…紅蓮さん…朱璃は中途半端なままに



「理解してくれたみたいだね…では…」


バサッ!


再び押し倒される栗栖


「ま、待って…朱璃…こ、心の準備が…」


「ん? 怖いのか? 痛くしないから…」


怖い? いや…不思議だけど 怖くはない


だって僕はこの人の肌もぬくもりも知っている 熱い指も下も唇も身体が憶えている気がするんだ



「怖くはないよ…ぼく、あなたをとても知っている気がするんだ…」


「俺もだよ…もっとも…俺のほうはしっかり記憶があるけどね…」


記憶?


「前世の俺たちのさ…思い出させてあげよう…」


「朱璃…」


そのあと僕は抗うこともなく彼に身を任せてひとつに溶け合った





「痛むか?」


心配そさうに眉をしかめながら薬を塗ってくれる紅蓮


「少し…大丈夫…優しくしてくれたから…」


「ごめんな…もっと優しくするつもりだったんだが理性が飛んでしまったようだ…」


悲しそうに俯く紅蓮の頬に手をあて栗栖は微笑んだ


「そんな顔しないで…もう平気だから…」


「きみは優しい…」


自分の頬を包み込んでいる栗栖の華奢な手に紅蓮は愛おし気に接吻する


気づくと二匹のハスキーたちがいなくなっている


「ふたりともいないね…」


「ああ、ダンにマリーは俺が生まれたときからいるんだよ」


「えっ、すごい長生きだね。犬って10年くらいだと思ってた」



「あっは、あいつらは普通じゃないからね。我が家の守り神みたいなモノさ」


守り神…


そ、そうだ。そういえば喋ってた!!


「俺が赤ん坊の頃から話してたからな…マリーは寝る前に絵本を読んでくれたりダンは伝説を聞かせてくれた…うちの両親は異常に仲が良くてね…


父も母も優しかったが両親である前に愛し合う男と女だった。爺やとあの二人に育てられたようなものだ(笑)」


「じゃあご両親もマリーたちと話していたの?」


「いや…両親には二人の声は聞こえない。あいつらと話せるのは俺と爺やだけだ…おっと…それともうひとり…お前だよ…栗栖くん」



「マリーに顔、舐められて起きたらいきなり話しかけるから一瞬、頭がおかしくなったんじゃないかって焦ったけど(笑)


でもね、昔から植物の声は聞こえて会話してたんだ…それと石の声も…」


「ああ…俺も石と話す…だから栗栖と紅蓮に呼ばれたんだよ…」


「あ~! そうだ、ハーキーマーの名前、寝ないで考えたのに…」


紅蓮はニヤリとしながら栗栖の顔を覗き込む


「当てたらご褒美の約束だったな…で、どんな名前、考えたの?」


「だってもう答え、聞いちゃったし…今更言っても疑われるし…」


「ほぅ…ってことは…」


「自信家だと思われるかもしれないけど…片割れが僕の名前ならもうひとつは紅蓮だと思った」



バサ!


紅蓮は栗栖を押し倒すと再びキスの雨を降らし始める


「だ、だめだよっ…朱璃…そうだ、個展…」




「さっき連絡しておいた…それより何が欲しい?」



えっ…


「名前を当てたご褒美…」



「いらない…先に答え聞いちゃったもん」


「控えめな子だ…」


「そうだ、聞きたいことがある!」


「なに…」


「あなたが憶えてるって言った僕たちの前世について聞きたい!」



コンコン


「爺やか…入れ」



「夕食の支度が整いました…こちらにお運び致しますか?」


夕食…


もうそんな時間なんだ…


さっきまで明るかったのに…じゃあ…あれから何時間も…僕は彼と…



「どうした? 顔が赤いぞ」


「な、なんでもないっ。あの。爺やさん、僕、食堂で頂きます」


「かしこまりました」


「…くっくっく…」


「朱璃! 笑いすぎ…」


紅蓮に笑われながら栗栖は脱ぎ散らかっている服を拾い袖を通し始める


「ねえ、マリーたちも一緒に食べるれるの?」


「ん? お前がそうしたいなら構わんが…」


「ぼく、犬が大好きでハスキー犬を飼うのが夢だったんだ。でもハスキーって体力あるから散歩の他にもドックランに連れて行かなきゃならないし、世話が大変で無理だって


両親に言われて代わりにぬいぐるみをたくさん買ってもらって全員に名前つけたんだ」



優しい眼差しで栗栖の話を聞いている紅蓮にドキリとしていると



タッタッタ…


嬉しそうに尻尾を振りながらダンとマリーが部屋に走ってくる



『なんて優しい子なの! 言った通りでしょう? ダン』


ペロペロペロ


『大好きよ、栗栖。可愛い子』


『ありがとよ、栗栖。話が出来て嬉しいぜ♪ これからもよろしくな』


グレーがかった毛並みのダンは白い毛並みのマリーより一回りほど身体が大きく足も長いイケメンならぬイケワンだ


対してマリーはもふもふの毛並みの黒目がちの美人だった


「よろしく~マリー。ダン、わぁ~ふたりともモフモフだ~♪」


マリーとダンに抱き着きながら嬉しそうな栗栖を愛おしそうに見つめながら紅蓮は頭を撫でて手を握りそっと立たせると食堂へとエスコートする


「ではお姫様、食事に参りましょうか?」


「うん、お腹すいちゃった」


「お前の好きなハンバーグにしてもらった」



ダイニングテーブルにはイタリアンチーズにホワイトソース、煮込み、グラタン、和風おろしソースとありとあらゆるハンバーグとピラフやパン、スープにサラダが美味しそうに


並んでいた





す、すごい…夢のような光景だ…


「気に入ったか? 他に欲しいモノがあれば用意させるが…」


「これで十分…じゃない! 十分すぎるくらいだよ、まるでホテルのバイキングだ♪」


ナデナデ


頭を撫でられながら栗栖は思う


この人は…なんて優しい顔をして僕を見るんだろう…


「それはよかった、冷めないうちに頂くとしよう」


「うん」


『はやく食おうぜ』


『おかわりもたくさんあるわよ』



マリーとダン、愛しの運命のひと、紅蓮朱璃とテーブルに着きながら栗栖は瞳をキラキラさせるのであった









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