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シスコン発覚でハッピーエンド

「朱璃…」


何かに引寄せられるように紅蓮のうなじにかぶりつくと華奢に犬歯を食い込ませ渇きをいやすようにコクリコクリと喉を鳴らす


「う…栗栖…」


眉間に皺を寄せながら快感に耐える紅蓮



「おにいちゃん…」


誰もが無言でその光景に見入っている中、有栖が携帯でその様子をパシャパシャ激写しだす


「お、おい、有栖…」


「黙って玲央…この瞬間を待っていたのよ…ずっとずっと長い間…なんて耽美な目覚めなの! 素晴らしいわ、おにいちゃん!


玲央も撮ってちょうだい、あとで見せてあげなくちゃ♪」



「有栖ちゃん…きみのその性格…昔と変わらなくて素敵だよ…」


「そうだねヒロくん…てか、有栖ちゃんいつ目覚めてたの?」


心配そうに紅蓮と栗栖を見守っている双子に有栖はニコッと微笑んで答えた


「生まれてすぐ…おにいちゃんはこのとおり抜けてるド天然だからなかなか目覚めなくって…叔父様たちとこりゃずっと人間のままかねぇって

ため息ついてたの」


『あら♪じゃあ私たちのことも覚えていたの?』


嬉しそうに尻尾をブンブンと振りすり寄るマリーの頭を撫でながら


「もちろんよ、マリー、ダン♪ 昔からよく遊んでくれた大切なあなた達を忘れるはずないじゃない」


「12歳の時に栗栖ちゃんの目覚めの悪さを心配した有栖に何とかしてほしいと相談されてね…兄妹、いや、姉妹といえども目覚めは他者が手を貸してはいけないから自然に待つしかないよって


100回くらい説得したよ」


「要するに玲央様も有栖ちゃんも見守っていたんですね~」


「そ。叔父様ご夫妻もね…おにいちゃんは美知留ちゃんに母性を感じて慕っていたから私が結婚した後は二人に任せていたけど心配でね…」



「うん、有栖ちゃんの隣に住んでおかしなことに巻き込まれないかいつも見守って至ってわけさ(笑)」




「本当なの!!」


渇きを癒し終え唇を拭いながら有栖を問いただす栗栖



「あら、気が付いたの?」


「うん…まだ少し…頭がぼんやりしてるけど…あ! 朱璃が…真っ青だ! どうしたのっ」


「あは…栗栖くんが吸い過ぎたから貧血気味なだけだよ。ご主人様、こちらのワインと薔薇をどうぞ…」


200本近くの大輪の薔薇をゴウとヒロがテーブルに置いて紅蓮にエナジーを与えるとだんだんと顔色が戻ってきた


「ありがとう…悪いがミディアムで肉を1キロばかり焼いてくれ…」


「まぁステーキなんて素敵♪私にも600ほど頂ける?」


「はいはい♪皆様の分も焼いてまいりますよ。少々お待ちくださいねっ」



「お前は目覚めても食欲旺盛だね…可愛い…」


まだ幾分か顔色は優れないまま優しく微笑みかける紅蓮に泣きながら栗栖は抱き着くと何度も謝った


「ごめんなさいっ、ごめんなさい…薔薇の香りを嗅いでいたらなんだか意識が朦朧として喉が渇いて…濃厚な甘い香りで渇きは少し癒えたんだけど…朱璃を見たら猛烈に

お腹が空いて止められなかった…」



「これくらい純血種にはどうってことないさ…やっと目覚めてくれたんだな…クリスティーヌ…」


「あ…ジョゼフ…また…過去の記憶はあいまいだけど…皆のことも思い出してきたよ…有栖が僕の妹なのも…あ!!


おじきと美知留ちゃん…前世、僕らの両親だった…」


「そうよ、おにいちゃん。混乱するから今まで通りにおにいちゃんって呼んであげる。叔父様も美知留叔母様、いえ、私たちのパパとママもそりゃずーって心配して


おにいちゃんがいつ目覚めるかと待っていたんだから…二人とも喜ぶわ!」


「…そう…なのか…じゃ…玲央くんも知ってたの?」


玲央は満面の笑みで栗栖の頭を撫でながら問いに答えてくれる


「もちろん、黙っていて悪かったが教えてやるわけにいかなかったんでね…それでさり気なく君にヴァンパイア伝説を語って思い出させようとしたんだが…」



そうか! だからあんなにもヴァンパイアに惹かれていたのか…



「俺の父は純血種のヴァンパイアでその昔、パーティー会場で人間だった母と知り合い恋に落ちたんだ…むろん、周りに賛成されるはずがなく長老も首を縦に振らなかったが


こいつと結ばれないのなら朝日に焼かれて滅びると言い出して本当に焼かれようとした父を見るに見かねた長老が二人の仲を許す代わりにヴァンパイアの世界から永久追放

したってわけさ…」


「そんな…」


「蒼い口づけを交わし正式に夫婦になった二人は幸せに暮らしていたが身体の弱かった母は命懸けで俺を産んで以来、寝たきりになってしまった。


父はつきっきりで看病していたがヴァンパイアの妻になるには母は虚弱体質過ぎて…俺が12の誕生日を迎えた日にケーキを焼いて祝ってくれて…テーブルで倒れてそのまま…


父が俺にあてた遺書だ…今のお前になら見せられる」



※※



愛する息子よ


わたしはアンヌなしでは生きられない


幼いお前を置いて彼女のもとに逝くことを許してほしい


いつの日かお前にもわかるときが来るだろう


運命の相手に出会ったとき…


如何なる障害ももろともせずに共に生きたいと想うときが必ず来る


お前にはその相手がいるのだから


そして今に自分が何者なのかを知るときが来るだろう


あとのことは爺やとマリーとダン、ゴウとヒロに託してある


お前を心から愛している者たちだ


何かにつまずいたり悩んだ時は彼らに相談すれば自ずと答えが見つかるだろう



どこにいてもわたしとアンヌはいつも見守っているよ


どうかそれだけは忘れないでおくれ




クロック



※※


読み終えた栗栖は全身が震えた


「自分勝手な遺書だろう?」


涙がとまらない


朱璃のお父様はどんな想いでこれを書いたのだろう


愛する妻のもとへ逝くとはいえ…幼かった朱璃をひとりにするのは身を引き裂かれる思いだったに違いない…


「僕には…わかる気がする…奥様を…朱璃のお母さまを愛していたんだね…」


「栗栖…」



「僕も、僕だって、もしもお父様と同じ立場だったらきみを失って生きてはいけない…残された有栖が心配だけど…おんなじ道を…選んだとおも…えっ…ええっ…」


言葉を伝える途中で号泣する栗栖を紅蓮は優しく抱きしめる


「でもね…僕は僕は何があってもこの先、あなたを一人にしない!それだけは約束する。


あなたを生涯かけて愛し守り抜いていくよ…」


「ありがとう…栗栖…」


暫し熱い口づけを交わす二人…



数分後


栗栖は有栖にチクリと責められる


「よかったですねよかった…でも…おにいちゃん…もしもって…私を置いてなんの躊躇なく紅蓮先生を追うのね…ふぅん…私ならありえないんだけど…」


「…有栖??」


「ふん…なんだかんだいって妹より男のわうが大事なのよね…もういい…好きにすれば?」


有栖の言葉に顔色を変える栗栖


「待って、待ってよ有栖、そういう意味じゃ…」


「どういう意味よ? さ、帰ろう玲央。おにいちゃんとはもう兄妹でもなんでもないわ…二度と私に甘えないでね…」


マイナス100度の眼差しで見つめる有栖に泣き崩れね栗栖


「い…いやだっ、やだやだっ、有栖、意地悪しないで、僕を見捨てないで! おにいちゃんが大好きっていつも言ってたじゃないか」


「気やすく触らないで…あんたは紅蓮先生さえいればいいんでしょ…」


「そんな…二人とも同じくらい大切なんだ…ごめんね、ごめんね、有栖…ねぇ行かないでっ!! 兄妹二人でやってきたじゃないか…あ…あ…」


倒れそうに号泣する栗栖


「こらこら有栖ちゃん、そのくらいにしてあげなさいな」


「せっかく目覚めたのにこのままじゃ頭がいかれちまうぞ、重度のシスコンなんだから…」


「おじき…美知留ちゃん…」


「あら叔父様、美知留ちゃん、いつ来たの?」


「あなたのご主人からメールが来て飛んできたのよ。大丈夫? あらあら、クリちゃん涙でボロボロじゃないの」


「おい、有栖…栗栖ちゃん可哀そうだよ…」


有栖はにっこりと微笑むと泣き崩れて腰を抜かしている栗栖を抱きしめた



「う・そ。ごめんごめん、からかっただけよ、おにいちゃん♪」


顔面蒼白な顔で有栖にしがみつく栗栖


「ほ、ほんと? 怒ってないの?」


「怒ってないって(笑)ちょっと…重いよ…のしかからないでってば…おにいちゃん」


「やだやだやだっ、僕も帰る、一緒に帰る!!」


わんわん泣きわめいて有栖から離れない栗栖を紅蓮は背後から抱きしめそっと立たせた


「仕方のない子だね…可愛いよ…」


「朱璃…僕…ごめんなさい、今夜は有栖と帰るから…」


有栖に冷たくされ目がいっちゃっている栗栖に紅蓮はそっと口づける


「まったく…重度のシスコンに洗脳してくれたね、有栖ちゃん? きみから安心させてあげておくれ」


「もうおにいちゃんたら、可愛いんだからっ。ごめん、本当にちょっとからかっただけ。怒ってないしあんなこと思ってないから安心して…ねっ」


『わんわん、ダメよ、この子、完全に怯えちゃってる…有栖ちゃん、お兄ちゃんをこんなドMに教育しちゃって~』


『うむ…こういうピュアな子は染まりやすいからな…苦労するぞ…朱璃…』


ボロボロになり自分を慕う栗栖に少し胸を痛め有栖はもう一度しっかりと抱きしめた


「聞いて、おにいちゃん。さっきのは全部、う・そ。ま、紅蓮先生のオヤジと同じ道を選ぶって聞いてちょっとムカついたけど…私はね、誰よりもおにいちゃんに幸せになってほしいのよ。


それだけは忘れないで、わかった?」


栗栖は有栖の手首を思いっきり強く掴んで揺さぶった


「わ、忘れないでってどーゆーこと? やっぱり僕を捨てようとしてるんだ…やだから…離れないから…捨てたら一生ストーカーしてやんよ…」


「い、痛いよ、おにいちゃん…」


「栗栖ちゃん、落ち着いて、有栖はからかってるだけだよ、な?」


「そうよ、クリちゃん。誰よりもあなた想いのこの子があなたを見捨てるわけないでしょう? さあさ、落ち着いて」


「マショマロ入りのショコラだよ、有栖くん、さあさあ、皆さんもどうぞ♪」


バサバサバササ


「くるる、大丈夫ですわ。有栖ちゃんは栗栖くんを愛しているわよ…くるるる、落ち着いて」


羽根で優しく栗栖の頬を撫でるポッさんの言葉に耳を傾けているうちにようやく栗栖は落ち着いて平常心を取り戻した


「くる! 有栖ちゃん、栗栖ちゃんをいじめないで。私の子供なんだから」


「ごめんなさい、ポッさんに怒られちゃった~ごめんね、おにいちゃん」


流石は平和の象徴の鳩パワーである



「有栖、このショコラ美味しいよ、一緒に飲もう♪」


「うん、ありがとう」


虐めてごめんね…おにいちゃん


今までおにいちゃんの愛情を独り占めにしてきたからちょっと紅蓮先生に夢中で腹立っちゃって…意地悪したくなっただけ


お兄ちゃんは変わらない


本当にこんなビッチなサドの妹を慕ってくれて可愛いM男ちゃんなんだから…


「紅蓮先生…」


「なんだい? 有栖ちゃん」


「改めて兄をよろしくお願いします。純粋な人なので幸せにしてあげてね…浮気したりもし泣かせるようなことがあれば…


地獄の果てまで追いかけて復讐しますから…ふふ」


「安心して…きみに負けず劣らず…狂いそうに愛しているから爪の先も傷つけないさ…栗栖は俺の命だから…」


「よかった、それを聞いて安心したわ」


栗栖の目覚めと紅蓮との再会を祝して深夜の3時まで祝賀パーティーが行われ


各自が部屋で眠りにつく頃


疲れてうつらうつらしている栗栖の耳元でそっと紅蓮が囁いた


「仕方ない子だ…お前、何があっても俺を独りにしないって約束したよな…なのに妹を追いかけて帰ろうとして…


寝ている子を襲う趣味はないが…お仕置きしてやらんとな…栗栖…」


「ん…な…に…朱璃…?」


「お仕置きだ…!」


えっ? ええっさっ!!!


「待って、待ってよ、朱璃、お風呂入ってないし…僕…寝ぼけてるしぃ…」


「俺が起こしてやる…問題ない…」


えええっっっ



めでたく覚醒したものの栗栖の受難の日々は当分 続きそうである





a happy-ending novel


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