ポッさん…
「いい匂い…フォーエバーグリーンね」
モミのツリーにオーナメントを飾りながら有栖は鼻を近づけ匂いを楽しんでいる
「詳しいね、有栖ちゃん」
「日照時間の少ないフィンランドでは人々は冬の寒さの中で耐えながらもけっして枯れることのないモミをフォーエバーグリーンと呼んで命の象徴としたんだよね」
「お~流石クリスマスフリーク兄妹♪」
「クリスマスカラーのひとつだもんな…」
「紅蓮先生もよくご存じね♪」
「今まで僕らがデコレーションしてても知らん顔だったのに…栗栖様がフリークって知って勉強されたんでしょう」
「おいおい、ゴウ、ネタバレするな(笑)」
「やっぱり本物は高級感があるなぁ♪かっこいい」
「だよね♪私たち、モミのツリーに憧れていたんです」
楽しそうな二人を暖かい瞳で見つめる紅蓮
『私たちもお手伝いするわ~』
ダンとマリーがモールとオーナメントを咥えてやってくる
「マリー、ダン、さんきゅ♪あのさ、ゴウくんとヒロくん、お願いがあるんだけど…」
「なに?」
端正な双子は一斉に栗栖を見つめる
「さっすが双子、シンクロしてるし(笑)」
「笑わないで、有栖ちゃん、君たちも相当に仲いいじゃない」
「うふっ、おにいちゃんは重度のシスコンたもんね~」
「それは否定しない(笑) あのさ、二人とも僕のこと様づけはやめて栗栖って呼んでよ」
「いや、それは…」
困惑して紅蓮の顔色を見る二人
「身分違いがどうのと時代錯誤なことは言わん、栗栖がいいなら俺はかまわない」
「朱璃、身分も何も僕らは普通の庶民だし、二人のほうがよっぽど品格が漂ってるよ」
「確かに!」同意する有栖
「嬉しいですけど…ほ、本当によろしいんですか?」
「いいんじゃない? 二人とも見た目は若いけど多分…おにいちゃんより年上でしょ? 呼び捨てにしちゃえしちゃえ♪」
「そうそう、有栖のことは有栖ちゃんって呼んでるじゃないか(笑)マリーなんて栗栖ちゃんって呼んでるぜ(笑)」
わん♪
「なぁに? 私を呼んだ?」
ペロペロペロ
『マリー、栗栖を襲うな』
『いやね、ダンたら…シッティして(笑)だってこの子、可愛いんだもの…大好き!』
「よせってばマリー、ダメだよ~こら」
顔中をペロペロされながら楽しそうな栗栖
「おにいちゃん無類の鳩好きで犬好きだからね~」
「鳩…好きなのか」
「うん、昔ね ぼく幼稚園くらいのとき、お使いに行く途中で迷子になって木の上からそれを見ていた白と灰色のまだら模様の鳩さんが僕に話しかけてきて…」
※ 以下栗栖の回想
どうしょう…こっちの道…だっけ…
違うや…僕…どこから来たんだっけ…
『くるる、どうしたの、坊や。大丈夫よ、ここをまっすぐ行けばおうちに着くわ』
「鳩さん、僕のおうち知ってるの?」
『あなたのお母さんが以前、私たちにパンをくださってね…。お陰で飢えをしのげてとても感謝しているの。私についていらっしゃい、案内するわ』
バサバサバサ…
心細かった僕は時折後ろを振り返ってはゆっくり飛んでいく鳩さんの後をついていったんだ
数分後 無事に家に帰れた僕は当然おつかいに失敗したけど母は優しく微笑んで「じゃあ鳩さんにお礼をしないとね」って庭にパンくずをいっぱいまいてくれて…
そのあと母と一緒に買い物に行って帰ってきたらパンくずはなくなってたんだ
「ポッさんね、懐かしいなぁ…よく遊びに来てたっけ」
「可愛い~名前つけたんだ」
「彼女が教えてくれたんだ。私はポッポ、よろしくねって…」
「ポッポでポッさんか…可愛いね…」
「うん、すごく可愛い鳩さんだった」
「いや、お前がだよ…」
そう言うが素早く唇を奪われ真っ赤になる栗栖と瞳を輝かせて二人をガン見する有栖
「素敵素敵♪ リアル森茉莉の世界だわっ」
「やめてよ、朱璃!」
「ごめん…お前があんまり可愛いから」
『よしなさいよ、エロオヤジ!』
『妹の前でセクハラはいかん』
「マリー、ダン、それは誤解だ…恋人にキスしてもセクハラにはならん」
『いゃあねぇ、開き直っちゃって…栗栖くんが照れてるじゃないの』
「栗栖…」
再び襲われる危機感を感じて栗栖は暖炉へと逃げていく
「僕、ガーランドしよっと♪」
「私にもやらせて~」
それからはガーランドに靴下を下げたりリースを創ったり夢中になって家中をデコレーションしているうちに空は青から漆黒へとすっかり塗り替えられていた
「お陰で助かりましたよ~続きは明日♪」
「明日もやるなら主人と来てもいい?」
「もちろん大歓迎だよ、時間がわかったら迎えに行こう」
「ありがとうございます、彼、喜ぶわ♪」
「有栖の旦那様もフリークでクリスチャンなんだよね」
「クリス…チャン…」
紅蓮の眉がピクリとする
「そのクセ、悪魔学に詳しくてヴァンパイア伝説が好きで僕がヴァンパイア好きになったのは彼の影響なんだ」
「ほぉ…なかなかおもしろい人だね…ぜひ会ってみたい…」
「ここから見る空は綺麗ね…」
窓辺に佇みながら空を見上げて有栖はため息を零した
「うん、夜の女王がマントを広げたようだよね」
「栗栖も有栖ちゃんもロマンティスト~」
「俺もギリシャ神話好きですよ」
「そうなの? ヒロくんとは話が合うね♪」
皆が盛り上がるなか、何かが窓の外からカツンカツンと何かが叩いてノックしている
紅蓮はツカツカと窓に近づくと開けてやると白と灰色のまだら鳩と灰色の鳩の番が入ってきた
「やあ、おかえり」
くるるっ
「き、きみは…ポッさん! ポッさんじゃないか」
まだらな鳩は嬉しそうに羽根を広げて栗栖に向かって飛んでくるとチョコンと左肩にとまった
『久しぶりね…大きくなって…くるるるる…』
「本当にポッさんなの? すっごい長生きなのね! 会えて嬉しいわ♪」
声をかけると今度は有栖の肩へと移動する
『有栖ちゃん、すっかり綺麗になって…くるるるる』
「きゃぁ♪やっぱりポッさんだわぁ」
「ポっさん、会いたかったよ、パパとママが亡くなってから来なくなって心配してたんだ」
『ごめんなさい、くるっ。色々あって…私も有栖ちゃんと一緒で結婚したのよ…彼が夫のグレン』
ぷっくらとした鳩胸のポさんより一回り大きいイケメンな灰色の鳩グレンは栗栖と有栖の傍に飛んでくると丁寧にお辞儀をした
『はじめまして…ポッポの夫、グレンです。妻がお世話になりましてありがとうございます』
「あ、こちらのほうこそはじめまして、僕は栗栖、彼女は妹の有栖です…っていうか君たちはここの?」
「ああ、うちの鳩だ…」
「朱璃の? い、いつから?」
「さあ…忘れたな…随分と昔からいるから」
ひょっとして
僕らの両親が亡くなったあと…ポッさんはここに来てたのか…?
だけど どうして…
「さあさあ、ポッさんたちも帰ってきたことだし夕食にしませんか?」
「ああ、そうしてくれ…有栖ちゃん、何か食べたいモノがあれば遠慮なくリクエストしてね…」
「まあ♪二人のお料理、超絶楽しみだわ♪ えっと、私は好き嫌いないのでなんでも…でも強いて言えば…焼肉が好きです
っていうかステーキでもしゃぶしゃぶでも…」
「おい、有栖、こいつ一人で600は食うからな」
「あら、そういうおにいちゃんだって800ぐらいペロリのクセに~」
「仲がいいね…では焼肉にしょう…俺も肉には目がなくてね…」
「畏まりました♪ ゴウ特性ダレに漬け込みますね♪」
「小腹が御空きでしょうから夕食が出来上がるまでサンドイッチをどうぞ…」
バトラー野崎がローストビーフと卵サンドを運んでくる
「すごっ! なんてリッチなサンドイッチ♪」
「爺やさん、僕らローストビーフのサンドイッチ初めてです♪」
「それは…よう御座いました…熱い紅茶とお召し上がりください」
「焼肉の分はあけておけよ(笑)」
「もちろんだよ朱璃♪ 有栖、食べようぜ」
「うん、おにいちゃん、そうだわ、ポッさんたちは?」
「その子たちにはちゃんと鳩さん用の特性ブレンドが用意してあるから大丈夫さ♪
有栖ちゃん優しいね~」
『ありがとう、有栖ちゃん、では主人と食べてくるわね…くるるる』
「後でね、ポッさん」ポッさんのまぁるい頭を撫でながらローストビーフにかぶりつく栗栖だった




