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6話…正々堂々じゃない話





 まだ6月上旬なのにこんなに暑いなんて。校庭はドッジボールで盛り上がってるけど。私は暑さに弱いし一試合目は補欠なので、木陰で涼んでいた。

 それにしてもうちのクラスは凄い…。どんどん相手の三年をアウトにしている。特に稲葉君。彼が一番活躍しているように見える。

 ふと、私と同じように涼んでいる男子が目に入る。…神崎君だ。

 暑いの弱いのかな…。頭からタオルを被り、何度も水筒を口にしている。ジャージも冬の長いものだ。

 話し掛けようと思って一歩踏み出すと、試合に使ってるボールが飛んできた。ギリギリ私の顔面を逸れ、木に命中する。

 びっくりしてボールを手にして飛んできた方を見ると、相手チームの三年男子がこっちを見て笑っている。…しかも稲葉君と始め揉めていた不良生徒だ…。

 ボールを返すのを躊躇っていると、横からボールを奪われた。ボールが三年の方に投げられる。…いや、ずっと遠くに飛んでいった。絶対わざと遠くに投げたんだ。三年男子が騒ぎながらボールを追いかけていく。

「…………神崎君…。」

 ボールを奪った主が頭を掻きながら眠そうにしている。

「大丈夫だったか?山本さん。」

「………………うん。」

 お礼を言わなきゃ、だけど言葉が出ない。多分暑いから…。

 そんな私をどう思ってか、話題を振られる。

「稲葉凄いよな。」

「え…あぁうん!」

「山本さんは次の試合?」

「うん、神崎君も次出るのかな?」

「……まぁな。」

「…………。」

「…………。」

 まともに会話出来ないのはきっと暑さのせい。仕方ないので試合観戦をすることにした。

 ボールを軽々とキャッチする稲葉君。ボールを投げると凄まじい威力で三年に命中する。相手チームは残り二人になっていた。しかも稲葉君と揉めていた不良だ。自分達のクラスも残り五人くらいだ。

「勝てるかな…。」

「余裕だな。稲葉は負けない。」

 随分と自信満々な言い方な神崎君。まぁ私も稲葉君が負ける所想像出来ないかも。それだけの絶対的な強さを彼から感じる。

「下らねーな!」

 突然、ボールを持っていた相手チームの一人が怒鳴りながらボールを地面に叩きつける。

「おい稲葉!てめぇとはこんなボールお遊びで勝負したくねーぞ!今ここで俺と喧嘩しろ!」

 試合放棄と思ったら…。稲葉君は呆れ顔で答えた。

「どっちにしろお前ら負けるんだから今更喧嘩なんて意味ねーよ。」

「舐めてんのか!」

「まぁ連中もここまでだ。」

 さっきから怒鳴り散らしている不良を仲間が止める。

「おい二年坊。俺等じゃなくて外野の仲間見てみろ。」

 その言葉で、稲葉君達内野の五人と観戦していた私達は見方の外野の方を向いた。外野のクラスメイトは、いつの間にか不良達に腕を掴まれて、身動きがとれなくなっていた。

「しまったー!俺とした事が!待ってろ俺が助けるからな!」

「うざい下がってろ柳川。俺がなんとかする。」

 同じ内野にいる柳川君を止める稲葉君。なんとかって…。

「私先生呼んでくる!」

「止めておけ。」

 駆け出そうとして神崎君に肩を掴まれる。

「だって…。」

「後ろ。」

 神崎君がそう囁くと、ゆっくりと背中越しに後ろを見た。私と神崎君の背後には、三年の不良が四人立っていた。

「お前ら稲葉と同じクラスの奴だろ?」

「てめぇら人質なー。動いたら…。」

 最悪だ…。コートの方は稲葉君がどうにかするとしてもこっちは自分達でどうにかしなきゃ…。

 神崎君は無表情で、特に何をしようと考えてる訳でもなさそう。

 というか、相手チームのクラス、どんだけ不良が多いんだろう。普通の生徒も居るみたいだけど、こっちを見てニヤニヤしているだけで、不気味。

 私は四人を振り返った。

 金髪茶髪、それぞれ染めていて耳ピアスを付けているのはみんな同じ。制服をこの上なく崩して着ている…下着見えてますよ、と言いたいくらい。下品に笑いながら、死んだような眼で私を見下している。


「正々堂々とスポーツも出来ないんですね。」

 私がなんとかしよう、そう思った。

「そういう所から稲葉君には負けてるんだと思います。諦めて下さい。」

 説得なのか挑発なのか、自分でもわからないけど、不良が本気でキレてきたのはわかった。

「…この…このクソ女が!」

 金髪のツンツン頭の男子に、頬を殴られる。意外に強く、痛い。

 そのまま倒れた私の纏めた髪を掴まれる。後ろでは、神崎君が三人に絡まれている。金髪は卑しく笑う。

「女だからって容赦しねぇぞ…。二度と生意気な口を叩けないようにズタズタにしてやるからな…。」

 そうは言ってるものの大事な事に気付いていない。金髪は私の体を触るのに夢中で背後に注意はしてなかったみたい。本気に馬鹿だな。

「こっちも上級生だからといって容赦はしない。」

 声が聞こえて私は必死に身をよじって金髪から離れた。しゃがんでいた金髪は背中を踏まれ地面に伸びた。

 金髪を踏みつけたのは勿論神崎君。後方では既に、他の三人が倒れていた。

「お前らっ…クソッ役立たずが…!」

 金髪は胸倉を掴まれて、無理矢理立たされた。

「最悪だな。」

 神崎君はそれだけ呟くと、腹を殴って地面に放り捨てた。

 神崎君がこちらを見る。思わず後ずさる。だって知らなかった…。こんな…。

「傷は顔だけ?」

「え…あ、うん!大したことないよ!」

 いつも通りだった。だから、喧嘩が強かった理由なんて訊かないでおこう。

「ごめん。」

「え…?」

「早く三人を片付けてればあんな事…。」

「大丈夫大丈夫!そんな変な事されてないって。」

 でもなんかおかしい。顔逸らされてる。何か付いてるのかなと着ているジャージを見たら酷くはだけていた。慌てて戻す。

「………………。ごめんね?」

「いや山本さんが謝ることじゃ…。」

「だって連中怒らせたの私だし。」

「あのくらいで怒る奴が悪い。」

 因みに四人は尻尾巻いて逃げ出したみたい。

「でもホントに大丈夫なんだな?」

「心配しないで。慣れてるし!」

 あ…。今の軽く失言だった。

「慣れてるって…。」

「私電車通学だからさ!変なのに絡まれれのはよくあるんだって!ほらそれよりコートのみんなが…。」

 コートではまだ稲葉君達と三年生がにらみ合っている。私達もそちらに向かう。


でも。




 正直さっきは怖かった。あんな思いしたのは二度や三度はあるけど。…でも。

 どうにも最近変なのに絡まれるのが多い気がする。やはりツいてないのかもなぁ私は。



 本当に、昔からツいていない。








≫≫≫≫人物紹介




山本亜留美やまもとあるみ



5月15日生まれ

身長:162cm



長く黒い天然パーマで、纏めてたり下ろしてたり。吹奏楽部でトランペット

運がかなり悪い。

大人しい美少女?に見えるが割とズバズバ物を言う。

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