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13話…御祭り騒ぎの話

8月5日5時過ぎ。



「うわ!何だお前!」

「稲葉は浴衣じゃないのか。」

 俺と神崎は女子二人より先に待ち合わせする事になり、祭りの会場である神社の近くの公園に集合した。昭葉が命令で男物の浴衣を着て来いと言っていたが、持って無い。流石に私服はどやされると思って今は消息不明の親父が着ていた甚平姿だ。

 神崎はというと…元から持っていたらしく男物の藍色っぽい浴衣だ。何故驚いたかというと恐ろしく似合っていたからだ。気のせいか髪が何時もより黒に近い。

「稲葉は甚平が似合うな…。」

 俺が神崎に見とれているのに気づいていない。まぁでも甚平でも似合うなか良かったが…。

 神崎は面倒臭いと何時も言っているが、見た目は俺の倍は気を遣っている。休日合う時にジャージ姿の奴を見た事が無い。

 しばらくすると、昭葉と山本がやって来る。昭葉の家で浴衣を着付けしていると言っていたが…。

 昭葉も山本も黒地の浴衣で、昭葉は桃色の花の模様、山本は蝶の模様の浴衣だ。

「待たせてごめんねー。」

「ちょっとハル!あんた何よその格好!」

 場面的に至って普通の事を言う山本に対して昭葉はいきなりの文句かよ。

「っせーな。持ってなかったんだよ!」

「しかし仁は似合ってるわねー。萌え死ぬわマジで。どうハル?惚れた?」

 殺意がわいてきた。

「どうよ?あたしらの浴衣。」

 昭葉はどっかで見た事ある気がする…。かなり前だ。

「あ、七五三か。」

「ちょっとあるみん酷くない!?」

「安心しろ。昭葉限定だ。」

 キレる昭葉。今回は俺の方が一枚上だったようだ。山本が苦笑いする。昭葉は神崎に掴みかかる。

「仁も何か言いなさいよ!」

「似合ってるさ。」

 予想外の言葉に昭葉は固まる。

「いや、普通に。」

「そお?」

 昭葉が照れる。分かりやすいなお前。山本は相変わらずニコニコしている。






 自然と男女に分かれて歩き始めた。まぁ昭葉は山本が好きだからそれが一番だろうな。だが他人と比べても若干垢抜けている神崎と並ぶのはいい加減辛い。

 適当に話ながらぶらぶらしていると、昭葉が急に俺の腕を掴んだ。

「なっ…何だよ。」

「ちょっと、あいつらこっち見てるんだけど。」

 昭葉が小声で言って初めて、こちらに向けられている視線に気付いた。俺達とあまり変わらない人数の男女が、チラッと何度も俺達を見ている。

「気にする事でもねぇ。大方、俺を狙ってる奴だろうが、こんな所で騒ぎを起こすわけねぇしな。」

 今までも俺に恨みがある奴に何度も絡まれた事がある。その度に逃げたり、攻撃をかわしたりした。

「あいつらに覚えはあるが無視だ無視。」

 昭葉が心配そうにしているが、関わらない、無視するのが一番なのだ。今まで絡まれたりしてそう学んだ。だが殴りたくなるのは相変わらずだ。

 いつの間にか、その集団は姿を消していた。ホッと安心していると、山本が俺の袖を引っ張り言う。

「私、さっきの達知ってるよ。」

 まぁあっちは覚えてるか知らないけど、と随分楽天的だ。

 その後は適当に買い食いしたり、金魚すくいに奮闘したり、まぁそれは殆ど昭葉と山本で、俺と神崎は、二人のペースに着いていくのて手一杯だ。

「あまり無理するなよ。」

 女子二人の様子を見ながら、神崎が俺に言った。

「本当は暴れたくて仕方ないんだろ。」

「でも暴れるわけにはいかねーだろが。」

 そうは言うものの、不良は卒業して大分経つのにこう言われてんじゃまだ俺から不安要素を感じるのか。

「いや、そうじゃなくてな。」

 神崎が目線を遠くに向ける。そこには『腕ずもう大会』『賞金五万円』の文字。

「遊びたきゃ遊べって事さ。」

 神崎の奴、なんやかんやで俺を一番理解している男だ。自然と口元が笑う。

「五万円は頂いたぜ…。」







「んで、あたし達が金魚すくってる間に五万円ゲットしたわけね。」

「お前、金魚は?」

「キャッチアンドリリースよ。」

 余裕て優勝して得た五万円が入った封筒を昭葉に見せびらかす。

「しかしアンタ凄いわ。で、何奢ってくれるわけ?」

「馬鹿かお前、お袋の病院代だ。」

 確かバイト代が入る前に病院の予約が入っていたはずだ。丁度良かった。

「おばさん…悪いの?」

「前よりかは大分マシだ。」

 流石の昭葉も五万円については触れなくなった。幼なじみのこいつは稲葉家の事情は知っている。

「もうすぐ花火が始まるから適当に何か買って食べながら観ない?稲葉君と神崎君は何も食べてないでしょ?」

 一瞬暗い雰囲気になりかけたのを察してか、山本が提案する。

「だけどいい場所あるかな…。」

 昭葉の心配通り、大分人が集まってきている。

「私場所とっとくから三人とも行ってきなよ。場所はメールするから。」

 そう言うと、敷物を取り出した。用意周到だな。

「いいの?ありがとあるみん!」

「じゃあ待ってるね。」

 俺達が口を挟む間も無く、山本は颯爽と場所取りに行ってしまった。

「だ…大丈夫なのかよ一人で。」

「あ…………。」

 昭葉は不覚だったようだ。俺達を見ていた集団も居たし決して安全とは言えない。

「あたし、あるみんの所行っておく!」

 駆け出そうとする昭葉を、神崎が止めた。

「…買いに行くの面倒だから二人に頼んでいいか?俺が行っておくから。」

「神崎何言って……。」

 こいつ、山本が嫌いなのに。いや、それ以上に面倒な事が嫌いなのか。

「わかったー。仁に頼んだわよー。」

 あっさりと承諾する昭葉。こいつ何も分かってねぇな。

「いーや、俺が行くぜ。」

「引っ込んでなよハル。」

 昭葉に睨まれる。何がいけないんだ!?俺は…。

「じゃあ行こうかハルー。」

「ちょっ………。」

 二人の考えてる事がよく分からないまま、俺は昭葉に強制的に連れて行かれた。







「何で神崎が…。」

「理解出来なくていいわよ馬鹿。」

 たこ焼きやらいか焼きやら勝った俺達は、何か無いかとぶらぶらと歩いていた。すると、さっきの男女の集団とすれ違った。無視して通り過ぎようとしたら、道を塞がれてしまった。

「あの…そこ通りたいんだが。」

「てめぇがそんな口利くタマかよ?」

 なるべく柔らかく言おうとしたが駄目だった。向こうは完全に俺を覚えているし、今ここで喧嘩振られてもおかしくはない雰囲気だ。

「ねぇその眼鏡は彼女?」

「つかさっき山本も居たよねー?」

 口々に嫌みやらひやかしやら言う連中。周りは知らん顔で通り過ぎていく。

「てめぇらそんなに喧嘩したいか?」

「ハル!」

「場所移すぞ。」

 喧嘩はするつもりは無いが、何があるかわからないし周りを巻き込むわけにはいかない。向こうもそう思ったか、俺と昭葉の腕を何人かで掴んで、会場の外へ歩き出す。





タイトルと内容関係なくて申し訳ない。

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