9 サンタテロ計画(中学受験話小休止)
パー子10才のクリスマスイブ、椅子という壇上に登り、
家族を睥睨しながら高らかに、彼女が去年のクリスマス以来、1年越しに考えていたという計画を開陳した。
「私はサンタを捕まえて見せる」
「やめておけ」「世界が不幸になる」という声にも耳を貸さず、
彼女はその壇上から「サンタを捕まえるのが目的ではない」と我々を一喝する。
「自分のプレゼントだけが目的なのではない。近所の子どもたちのプレゼントまで、収奪し手中にするのだ」
強欲ここに極まれり。サンタの対応を見てみたいところだ。
泣きながら止める3才下の弟ペーの懇願も聞かず、パー子は布団の上に籠城(?)した。
ペーは泣き疲れて寝たが、パー子の意気や軒高!
と思いきや、次の瞬間、パー子は座ったまま寝ていた。
翌朝、座ったまま起きると、昨夜の宣言を忘れたかのように、
サンタからのプレゼントに「これ私が欲しいってお願いしてたやつだ!」
「サンタ、やるやるとは聞いていたけど、ここまでやるとは」
などと手放しでサンタを讃えるのであった。
さて、このパー子の噂を聞いたのか、それとも血筋なのか、いとこのヒー子はその数年後、クリスマス前に彼女もまた高らかに宣言したのである。
「サンタの正体を必ずや暴いてやる」と。
ヒー子はパー子ほどヤワではなかった。なんと深夜になっても、目をらんらんと輝かし、サンタ捕縛作戦を決行したのである。
その時、ヒー子齢10才。あの時のパー子と同い年だが、こちらは頭の出来が違った。昼間から「今夜に備えて」と登山家のように用意周到な睡眠計画を実行し、煙突などサンタの侵入経路が何もないことを確認しながら、部屋の隅に鎮座し、土俵正面からサンタの到来を待ったのである。
寝落ちしそうになりながらも10才、根性の徹夜。
待つこと9時間。
まんじりともせず夜は明けた。
そして、その10才の年以降、ヒー子のもとに二度とサンタが来ることは無かった。