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15

 ピクシー達の案内で辿り着いた木は、とても巨大だった。

 遠くから見てる分にはあまり大きく感じなかったが。

 そして、木にはダンジョンに咲いた花と同じものが咲いていた。

 香りが強い品種なのか、花までの高さは大分あるのに木の下にまで甘い匂いがする。

 わらわらと集まったピクシー達は、木の周りを自由に飛び回っている。


「で、女王はいつ出てくるんだ?」


 イーサンへの警戒もいつの間にか解いたのか、髪を引っ張ったりして遊んでいる。


「女王は今はまだ寝てるのー」

「夜になったら起きるのー」


 夜になったら起きる?


「ここには夜が来るのか?」


 マックスが驚いたように言う。

 ダンジョンの中は一日の風景が変わらない事が多い。

 夜になっても明るい事が多い。

 金のある冒険者達は時計をもって一日の流れを崩さないように冒険している。


「うん、外と時間の流れは一緒だよー」

「女王は夜行性なのー」


 という事はここで時間を潰さなければいけないのか?

 もし起きたとしてもすぐに帰れるのか?

 一気に不安になる。


「もっと早く起こせないのか?」

「無理ですー」

「女王の邪魔は出来ないのー」

「女王の意向に従うまでなのですー」


 ふざけた調子で言うピクシーに怒りが湧いてくる。

 そもそも、何で俺は隠し通路なんか発見してしまったんだ。

 大人しく城の魔術師共の後をついていけばよかっただけじゃないか。

 イーサンのくだらないプライドのせいで、こんな訳の分からない場所に連れてこられたあげくに帰れないとか、最悪すぎるだろう。


「ここには綺麗な水もあるのー」

「お腹空いたら蜜を分けるよー」

「良かったら案内するよー」

「本当か?水の確保は重要だからな」


 うんうんとマックスは頷いているが、留まる事が前提なのか?

 まとわりついてくるピクシーを思わず振り払ってしまう。

 振り払われても羽があるせいか、遊ばれてると思ったのか余計にまとわりついてきて、逆効果だった。


「ナル、何をそんなにピリピリしてるんだ?」

「もしかしてナル、ビビってるのか?大丈夫だ。俺は野営の経験は何度もある。危険な事にはならないだろう」


 バカにしたようにイーサンが言い、マックスが無駄に胸を張る。

 何がそんなに楽しいんだ?


「危険なんかないよー」

「女王の側は安全だものー」


 違う、そんな事を言ってるんじゃない。

 明日は店を閉めるだなんて、告知していないんだ。

 それなのに勝手に店を閉めていたら、せっかく回復してきた信頼がまた地に落ちる。

 それだけは避けたい。

 しかも今はメリッサも帰ってきてるのだ。

 冒険者達の悪意がメリッサに向けられでもしたら、後悔してもしきれない。

 だから未開の場所になんて行きたくなかったんだ。


「俺は、早く、帰りたいんだ」


 切実に訴えてみたが二人は首を傾げるだけで、全く分かってくれない。


「ちょっとぐらい遅くなったって平気だろ?」

「いつメリッサが帰ってくるか分からないだろ?」

「メリッサちゃん?」

「なんでメリッサ嬢が出てくるんだ。それよりもこれは世紀の大発見なんだぞ。それに比べれば小娘の一人や二人放って置いてもいいだろ」

「そうだぜ。こんな経験滅多に出来ないぞ。それにメリッサちゃんはココの店に居るんだろ?ナルが心配する必要なんてあるのか?」


 大アリだ。

 俺はメリッサが店を受け継ぐまで頼まれている。

 もし何かがあったとしたらセオドアさんに顔向け出来ない。


「前から思ってたんだが、ナルはメリッサちゃんに対して少し過保護じゃないか?俺なんか学園に入学したら一人前として、親から放って置かれてたぞ」

「そうだ。過干渉が過ぎると余計に嫌われるぞ」


 うるさい、うるさい、うるさい。

 お前らには全く関係ないだろ。


「とにかく俺は帰りたいんだ。おい、他に方法は無いのか?」


 最初に俺の服にしがみついてきたピクシーに詰め寄るが、首を振るだけだ。


「待てと言われてるんだ。少しぐらい待ってやれよ」

「くそっ、女王は寝てるだけだろ?ならこれはどうだ」


 俺はロートボム茸から抽出して作った爆薬を出す。

 見覚えがあったのか、マックスがギョッとしたのが分かったが、俺だって引けない。

 俺は帰る。


「ナル、やめろよ!」

「少しは冷静になれ」

 

 何回か使った事あるから威力を知っているのだろう。二人は途端に慌て始めた。

 本来は、岩とかで道が塞がっている時に使う強い爆薬で、投げつけるだけで発動する便利なものだ。

 こんな脅すような事をしたくないが、仕方ない。


「いいかお前ら、さっさと女王を起こさないとこの爆薬を木に投げつけてやる。自分の寝ている場所が燃えればさすがに女王とやらも起きるだろ」

「女王の眠りを妨げるのは許さないのだー」

「のだー」


 ピクシー達が集まって、一つの魔法陣を作り上げる。

 俺は盾で防ごうとしたが、それよりも早く魔法陣が光って何をされたのか分からないが、全身が痺れたあとに、俺の意識は暗闇に落ちた。

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