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6

 依頼のあった薬草を見つけて、ギルドへと提出する。

 危険な事は何一つなく、いつものように何事もなく終わった。

 まだカウンターにエリンが居たから、手続きをしてもらう。


「はい、確認終わりました。お疲れ様です」


 ただ、薬草の採取だけだとランクを上げるのには、微々たるものにしかならない。

 冒険者のランクを上げるにはバランスが必要だ。

 戦闘力、知力、そして人脈。

 戦闘力も人脈もない俺は、薬草を一万本持ってきた所で、ランクをこれ以上あげるのは難しいだろう。

 まあランクが上がっても特にやる事なんてないから、別にいいが。

 魔術師の一団はまだ帰ってきていないようだったので、良かった。

 ダンジョンの事は、またマックスにでも聞いてみよう。

 薬屋に戻ると、メリッサが居た。

 何事もなかったようだ。

 冒険者の監視をしながら売れたものをメモして、在庫の確認をする。

 やっぱり二人体制だと楽だな。

 少し良いものを食わせてやるのに、時間をかけた料理が作れる。

 何事もなく閉店してすぐに夕食にする。

 メリッサは昼はまた定食屋に行ったようだ。もうすぐ子供が生まれると言っているので、迷惑をかけないように言ったら膨れられた。

 そういう所は全く変わっていない。

 後片付けをしていると、風呂から上がったメリッサが出てくる。

 髪の毛が上手く乾いていないか、濡れている。


「もっと良く拭かないと風邪引くぞ」

「子供じゃないんだから、分かってるわよ」

「どうだか」


 冬の寒い時期に、よく風邪を引いていただろう。

 少しタオルを取り上げて、乱暴にふいてやる。 


「ナルは、もう寝るの?」

「いや、ギルドからポーション作成の依頼を引き受けたから、少し片づけようと思う」


 帰ったら確認してもらおうと思っていて、忘れていた。

 契約書を見せると言うとびっくりしたような顔をされる。


「見せて」


 納品数は50本。

 期限は出来た順から納品してくれればいいと言っていた。

 しばらくはギルドとの往復が続くかもしれないが、いい金にもなるし、暇だからな。


「ねえナル。これは月で契約しているのとは別よね?同じ本数求められてるわよ」

「そうだ。なんかダンジョンに来る人が増えて需要が増えているらしいんだ。出来た順での納品でイイって言ってるし、まあ一週間もあれば出来るだろう。それに急ぎだからと1.2倍の料金で買い取ってくれるってさ。太っ腹だよな」


 薬草の採取依頼のついでに足りなさそうなものも採取してきたし、メリッサが店番をするなら問題ないだろう。


「もしかして、明日にでも王都に帰るつもりだったか?」


 まあそれなら少し睡眠時間を削ればいいだけだし、どうにかなるだろう。

 幸いにも3日後は休業日だ。

 最悪ここでまとめて作ればいい。


「違うわ。町には期間ギリギリまで居るつもりだけど……」

「別に構わず戻ってもいいんだぞ。学生の間は友達と遊ぶのも重要だしな」


 夏季休暇は2ヶ月はある。

 その間こんな寂れた町よりも王都の方が栄えているし、娯楽も沢山あるだろう。

 せっかくの休みなんだ、仕事をしてる必要もない。

 寮にだったら同じ年の子で他にも残っている子も多いはずだ。

 俺も居残り組だったしな。


「私は自分から帰ってきたのよ、それに戻らないって言ってるじゃない。今問題にしてるのは、何で私に相談もしないで勝手に仕事とってくるるのかって事よ」


 ああ、責任者はメリッサなのに、相談をしなかった事を気にしてるのか。

 別にこの事でメリッサに迷惑をかけるつもりもないし、気を使う必要なんて全く無いというのに、責任感が強い所ばかりセオドアさんに似てしまっている。

 思わずため息がでてしまう。


「勝手にとってきた事は悪かったよ。だけど、暇だからってただ時間を潰しててもしょうがないだろ?金はあるだけ困らないだろうし」


 王都は居るだけで金がかかる。

 貯金と十分な仕送りはしているつもりだが、貴族の友人と付き合うにはかなりの金がかかるだろう。

 金が無い事で、学園での生活で困った事にさせたくない。

 ただでさえ平民の数が少ないというのに。

 帰るまでに恥ずかしくないぐらい、もっと小遣いを持たせてやりたい。


「……なら私も手伝うわ」


 時刻はもう9時を過ぎている。

 明らかに働きすぎだ。

 俺は首を振り断る。


「いやいいよ。子供は寝る時間だろ?今日は店番もほぼ一人でしてたし疲れてるだろうし」


 半年前にもしていたから慣れてるかもしれないが、久しぶりの仕事だったんだ。自分の自覚の無い所で疲れているかもしれない。無理は禁物だ。


「分かった、もういい」


 何でそんな不機嫌そうな顔をするんだ?

 メリッサは何か言いたそうにしていたが、結局何も言わずに自分の部屋に帰ってしまった。

 反抗期か?

 学園でも居たな。

 俺は自分の学園時代の事を思い出したが、良く分からなかった。

 とりあえず色々な資格をとって、村に帰らない事ばかり考えてたし。

 女と付き合った事もほとんどない。

 俺は、やっぱり宿を探す事も視野に入れつつ、依頼されているポーションを作る事にした。

 

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