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 俺は作った白い定着材を、髪の毛に丁寧に塗る。

 その間に売り上げを記録して、在庫を確認する。

 十分に乾かした後に、作った緑色の染料を髪に丁寧に塗る。緑の髪の色は、この町では結構多い。

 一説にはダンジョンの魔力が関係しているんじゃないかと言われているが、事実はわからない。

 その内どこかの賢い人が判明してくれるだろう。

 鏡を出してムラがないか確認する。かなり綺麗に染まったな。

 ちなみに定着材を落とす剥離剤も既に作成済みだ。

 一日限りの色染めにも対応出来る。

 時計を見ると待ち合わせの時刻が近かったから、手を洗ってからいつもと同じ格好で家を出る。

 すると、もうエリンは来ていた。


「待ったか?」

「ナルさんですか?」

「ああ」


 俺だと分かったからか、エリンが警戒を解いたのが分かった。

 髪の色が違うから分からなかったか。

 スマン。

 そういえばギルドの制服以外のエリンを見るのは、初めてだった。

 クリーム色のブラウスに濃い緑のロングスカート姿は新鮮だった。

 無言で眺めてしまっていたからか、エリンが居心地の悪そうな顔をする。


「何か、変ですか?」

「いや、いつもと雰囲気が違うから驚いた。似合ってるよ」


 安心したのかエリンは笑顔を見せた。


「ナルさんこそ、何で髪の毛の色が緑なんですか?凄い綺麗に染まってるんですけど」


 躊躇いがちにエリンが聞く。

 髪の毛を緑色に染める染料は無いからだ。


「えー、あー、以前スカーフを上げただろ。あれの染料を使ったんだ」

「え、布を染めるだけじゃないんですか?」

「どっちかというと染料ではなくて、布や髪の毛に染料が乗るように固定する液体の方が、重要なんだ」

「凄い、大発明じゃないですか。特許とらないんですか?」


 エリンは普通の話しは聞いてる事が多いが、研究の話しになると途端に目を輝かせる。

 接客業ではなく、研究者になりたかったのかもしれないな。


「まだ試作の段階だからな。遅れそうだから、続きは歩きながらでもいいか?」

「あ、そうですね」


 二人で染料について話しながら、シビルの店に向かった。

 エリンは博識で話がとても弾んだ。

 ギルド職員でいるのが勿体ないぐらいの知識量だ。

 もしこれがエマだったら「え、便利そう。いくら?」で話が終わるだろう。

 もう少し話したかったが、シビルの店に到着してしまい、中に入る。

 カウンターに居る黒服に声をかけると、小さな声で「話はシビル様から聞いております。席にご案内致します」と案内してくれるからついていく。

 エリンはシビルの店に初めて入ったのか、緊張してガチガチになっていたのが面白かった。

 案内されたソファーに二人で座る。


「最初のセットドリンク代金はもう頂いています。他に頼むのでしたら、精算が必要になります」


 親父、本気が過ぎるだろ。

 二人分の料金を払ったのか、それともシビルに融通してもらったのか分からないが。

 これで何の成果もなく帰ったらキレられそうだな。

 俺は密かに気合を入れ直した。

 俺だってココを変な男の嫁になんてやりたくないからな。

 トビー?

 まあいつはまだ子供だから、成長する伸び代がある。

 それまでに生意気な口を叩かないように、躾をしとかないとな。


「分かった」

「今、女の子を呼んできます」


 黒服は丁寧に頭を下げてから、さっと行ってしまった。

 周りが見えなくなったからか、エリンの緊張が少し緩んだのが分かった。


「私だけじゃなくて、女の人のお客さんも居るんですね」

「まあ接待用にも使われる店だからな。今は外部から人が来てるから余計にそうだろう。おっと、少し声を落とそう」


 少し目線を上げると、ちょうどギルド長が誰かを連れて入ってくるのが見えた。


「あいつか?」

「はい。ギルド長と面会していた人です。テレンス=ガイラー男爵です」


 男爵か。

 なら平民と近い感性を持っている可能性もある。

 金髪でにこやかに笑う姿は、クリスに似ていて、それだけで腹立たしさを感じる。

 しかしクリスと違って鍛えていないからか、全体的にひょろ長く温和な雰囲気を持っている。

 まさに子供が思い描く、王子様そのものの外見だ。

 俺の時には姿を現さなかったシビルが姿を現し、ギルド長と一言二言会話をしてから、優男と握手をした。

 そしてシビルと何かを話すとシビルが女の子達を呼んだ。

 その中には、珍しくアディラが入ってなかった。

 代りに見た事のない胸の大きな女の子と、前にイーサンが甘えまくっていた女の子がついた。

 胸か、巨乳好きか。

 でも、ココは巨乳じゃないぞ。

 女はガイラー男爵の腕をとり、胸を腕に押し付けている。

 その様子を見たシビルが何事かを言うと、見るからに落ち込んだ様子を見せる。

 ガイラー男爵が何かを言うと、女は嬉しそうに笑ってからガイラー男爵にまた抱きついた。

 シビルの顔が不機嫌そうに変わったが、一瞬で元に戻った。

 さすがプロだな。

 でも、内心凄い怒ってそうだ。

 この店は基本的にお触りは禁止だからな。

 女の子の方から触らせるっていうのも珍しいが。

 これは簡単な男だったらコロッとするだろうし、アディラとは合わないだろうな。


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