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 いくらイレギュラーな事があったからと、納品日は関係なくやってくる。

 今日はギルドへの月1の納品日だ。

 冒険者達が来なかったおかげで、余力のある時に作っておいたのだ。

 本当に天国な日々だったな。

 案の定戻ってきた冒険者達は、こぞって棚の商品を買い占めようとしてきて、一時期ポーション棚だけ空っぽになったが仕方ない。

 本当に冒険者って人種は、やる事が変わらない。

 ポーションの生成に関しては低級ポーションだけが異様にはけただけで、問題はない。

 素材になる薬草は腐る程あるし、制作にかかる時間もとられない。

 むしろルスットゥル商会のポーション瓶にギルドのラベルを取りに行く為に往復する方が、時間がかかったぐらいだ。

 俺は箱にポーションと各種解除薬を詰めて、ギルドへと向かった。

 昼間のギルドは閑散としている。

 なのに、空気を読まない男が受付嬢に絡んでいる。

 本当に邪魔だ。


「でね、俺がこう剣をバーンと振ってね」

「邪魔だ、どけ」


 俺がカウンターに箱を置くと、マックスは破顔した。


「ようナル。今日は俺が来なくて寂しくなかったか?」


 マックスは昨日から他の冒険者のチームに誘われて、この町から隣町への商品の護衛に行っていた。

 この町から隣町へは馬車で一日も掛からないが、たまに魔物や盗賊などが出たりする。

 定期便には高価な魔物よけがついてるという。

 定期便は王都の公爵が経営しているらしく、公的な機関だ。

 襲ったりなんかしたら、即指名手配、即殲滅。

 地の果てまで追いかけられて地獄を見るらしい。

 その事を盗賊達も知っているので定期便はいくらバカな盗賊でも襲う事はない。

 その為護衛をつけるのは定期便以外で移動している商人達だけだ。

 ストロム祭りが近い為。近隣の町からも臨時の屋台を出そうと人の行き交いが多い。

 そして、今回依頼で四人の護衛を雇いたかったらしいが、三人のチームが受けようとして一人足りなかったからマックスを誘ったらしい。

 これは全部昨日の朝にマックスが一人で喋りまくったから知っている事で、俺は全く興味がなかった。

 つまり、寂しくなんてなかった。

 むしろ、もっと長期間居なくても、良かったぐらいだ。


「どうでもいいからカウンターを空けてくれ」


 マックスは体を起こして場所をあける。

 俺はその隣に持ってきたポーションの詰まった箱を置く。


「ポーションの納品に来たから確認して貰えないか?」

「今ギルド長を呼んできますね」


 エリンがさっと席を立とうする。


「いや、いつもギルド長呼んでないだろ?確認だけしてくれればいいんだ」

「ナルさんが来たら呼ぶように言われてるんです」


 嬉しくない事を言いながら、エリンはギルドの奥へと行ってしまう。


「随分とエリンに気に入られてるわね」

「は?」


 突然ミラに言われた言葉に、変な返事が出てしまう。


「あの子が笑顔を見せるなんて珍しいもの。いつも笑顔が足りないって私が忠告して上げてるのに、緊張してるから。なんて言ってはぐらかしてるのに」


 膨れても全く可愛くないからな。

 っていうか、お前は誰にでも笑顔を振りまきすぎだろう。

 冒険者全員に唾つけようとでもいうのか。

 笑顔が無いだなんて、ただ職務に忠実なだけだろう。

 確かに真面目でミラよりも数倍好感をもっているが、それだけだ。

 おいマックス、そこで知らなかった。みたいな顔をするな。


「ポーション中毒の件でもナルさんの事庇ってたし、Aランク冒険者のクリスに立ち向かうなんて、普通は出来ないんだからねー」


 いや、客観的にみたら俺の方が正しかっただけだろう。

 ギルド職員は公平であれと言われるものだし。


「良い事、エリンがナルさんの何を気に入ってるかは分からないけど、エリンを泣かせたりなんかしたら、許さないからね」

「そうだそうだ」


 ミラにビシッと指を突きつけられるが、げんなりする。

 だから、何でマックスはミラと一緒なってるんだ?

 っていうか、何で女ってすぐに恋とかに繋げるんだ?


「それに比べてマックスは凄いわよね」


 ミラに褒められて、マックスが胸を張る。

 いつからお前らは呼び捨てで呼び合う仲になったんだ?


「まだ来てそんな経ってないのに、今回の護衛依頼でマックスはDランクになったんだから」


 あっそ。

 確かにこの短期間で俺と同じDランクまで上がるのは、早い方だろう。

 しかし、マックスは元々辺境出身で。学園でも体を鍛えていたし騎士団にも一応短い間だが所属していた。

 普通の何もした事がない一般人に比べれば、戦闘に向けた基礎的な体の作りが元から出来ていたから当たり前といえば当たり前だ。

 そんなバカと俺を比べても意味がないだろう。


「ナルさんもたまには依頼受けてランクを上げようっていう気にならないの?」

「言っておくけど、俺の本業は薬屋だからな」


 納品に来たこの箱が見えないなんて、目が腐ってるんじゃないか?

 俺は思い出した。


「じゃあそろそろマックスはギルドの寮から出るのか?」


 俺の言葉にマックスが固まったのが分かる。

 規約では百日は滞在出来るが、大体Dランクになったら寮から出ていく。

 高ランクの依頼も受けられるから、金に余裕も出来るからな。

 それに、いつまでも寮に居ると初心者だと侮られるからな。

 ブリキのように固まった動きで、マックスがエマを見る。


「大丈夫よ、百日までは滞在出来るって規約もあるし」

「なんだ、良かった」


 こいつ、全く何も考えてなかったな。


「ナルさん、ギルド長は今面会があって終わらせたら来るそうです」


 とっとと帰りたいのに、面倒だな。


「あとマックスさん。お手紙が届いています」

「俺に?」

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