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 ちょくちょく話しながら解析をしている内に、マックスが帰ってきたので、食べながら続きにとりかかる。

 食べ終わったにも関わらず、イーサンもマックスも帰る気は無いようだ。

 監視のつもりだろうか?

 わざわざ見ていなくてもサボるつもりはないが。

 屋台でテイクアウトの夜食を買ってきたマックスは、その後も献身的に様々な雑用をしてくれていた。

 俺は遠慮なんかせずに、ここぞとばかりに本を持ってくるように言ったり、面倒で後回しにしていた雑草抜きなどを頼んだが文句は言われなかった。

 真夜中に雑草を抜いているマックスの姿は、まさに不審者にしか見えず、で少し不憫に思ってしまったが、俺は心を鬼にした。

 倉庫の整理は、何か壊されると困るから頼まなかった。

 俺が何かを頼む度にマックスは嬉々として命令を聞いているが、償いのつもりだろうか?

 まあ許さないけどな。

 イーサンは俺がポーションの分離をしたり、試薬で試しているのを興味深そうに見ていた。

 最後の方には飽きたのか、自分の研究をしていたが。

 だったらここじゃなくて部屋でやれよと言ったが、雑用が居るから便利だと一蹴された。

 マックスは、イーサンの雑用までこなしていたからだ。 

 日が登った頃には、ほぼほぼ特定が済んでいた。

 固まっていた体を伸ばすように伸びをしていると、俺の手が止まった事に気がついたのか、イーサンが読んでいた本から目を上げる。


「終わったのか?」


 夜の仕事をしているからか、徹夜ぐらいは何ともないらしい。

 マックスは疲れ果てたのか、いつの間にかソファーで眠っていた。


「ああ」


 俺は眠気覚ましに、ハーブティーでも入れる事にした。

 ついでにイーサンは飲むかというと、同意された。

 お湯が湧くまでの間に、寝ているマックスの上に毛布をかけてやる。

 優しさではなく、風邪なんかひかれたら世話をしろと、面倒な事を言われそうだからな。

 お湯が湧いたのでカップに入れると、スッキリするような配合をしているからか、匂いだけで頭がスッと目覚めていくのが分かる。


「なんだ、これは。あれだけ重かった頭が、スッキリと目覚めていくぞ」

「俺のオリジナルブレンド」


 ピサンリの根を丁寧に洗って乾かし、細かく刻む。

 花の部分はポーションに使う。

 なんて無駄のない植物なんだろうか。


「市販で売っている下手な目覚まし薬よりも効果があるじゃないか。味も悪くないし」


 そう言ってイーサンが自分の手を見る。

 ステータスの確認をしているのだろう。

 イーサンは自分のステータスのみだが、鑑定出来るスキルを持っている。

 これもレアスキルだ。

 普通は、神殿で高い金を払わないと確認出来ないステータスを、自分で確認出来るという事は自分のスキルに何が適正があるか、分かっているという事だ。

 これがイーサンが天才と呼ばれる所以である。


「ほら、さっきまでついていた眠りの効果が切れて、覚醒に変わっている。これはポーションと言ってもいいのではないか?売るなら買うぞ」

「家で育てているハーブを使うから数が揃えられない。たまにで良いなら個人的に売ってやる」


 嘘をつくとイーサンは満足そうに、またハーブティーに口をつける。

 無理強いをしない辺り、俺の性格を分かっているのだろう。

 それに収益がデカいから色々な所に狙われそうだ。

 雑草から出来てるなんて貴族が卒倒するだろうから、個人で楽しむだけに限る。


「朝食は?簡単なもので良ければ作るぞ」

「頂こう」


 俺は気分転換もかねて畑に行くと、角に大量に生えていた雑草が山となっていた。

 こんなに生えていたのか。

 俺は食べれそうなものを収穫して、台所で簡単に卵とサラダとスープを作る。


「んがっ」


 大きな物が落ちる音と、マックスの間抜けな声がした。

 匂いで起きたのだろう。

 二人で何かを話している声がするが、無視して朝食を作る。

 ダイニングにはすでに二人が定位置で座っていたから、作った朝食を出す。


「わり、ナル。いつの間にか寝てた」


 申し訳なさそうにマックスが言うから、いい加減にうっとおしくなる。


「別にいい。色々手伝って貰って助かった」


 礼を言うと嬉しそうに朝食に手をつけ始める。


「それで、解毒薬は出来そうなのか?シビルも気にしていたぞ」

「結論から言うと、解毒剤は出来ない」

「え、まずいんじゃないか?」

「そもそも使われていた不明の2つは、ムメモドキとチュシアンだったんだ」

「げぇ、ムメモドキって鳥の餌だろう?」


 ムメモドキは一赤い小さな実だが、渋くてアクが強く食用に適さない。

 唯一、迷惑な鳥型の魔物バンゲラだけが食べる。

 すぐに増える害獣でもある。

 その木の周りはバンゲラの糞だらけになって、低ランク冒険者の掃除依頼も絶えない。


「でもあれは害が無い筈だろう。害があるならもっとバンゲラは減っている筈だ」

「そうだ。普通だったら幻覚作用が出る前に、排出されてしまう」

「だから糞まみれなのか」


 俺は頷く。


「問題はもう一つ使われていたチュシアンだ。ムメモドキとチュシアンが組み合わさると、何故かムメモドキが体内から排出出来なくなる特性をもってしまう。代わりに、微力の魔力を取り込んでいるから体力値が回復している夜霧草の代わりに使われたのだろう」


 ポーション作成に使われるメジャーな薬草の中でも、一番高価だと言われているのが夜霧草だ。

 単体で魔力を多分に含んでいる上に癖がないから、他の薬を作る時にも推奨されている。

 この夜霧草と同じ効果を出るものを探すのが薬師が一番にぶち当たる壁でもある。


「それは知らなかったな」


 ああ、俺も知らなかった。

 ルスットゥル商会の誰がこの組み合わせを考えたのかは分からないが、天才的としか言えない。


「元々の2つが害のないものだから、解毒する事は出来ない。外に排出するしかない」

「ふん、じゃあどうするんだ?ナルの事だ。何か考えているんだろう」


 イーサンに言われて俺は頷いた。

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