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 依頼を受けたからには完璧に完遂させなければ。

 むしろ、鬱陶しいルスットゥル商会を合法的にぶっ叩ける良い機会だ。

 いい加減毎日のように生ゴミを店の前に撒かれたのを、片付けるのは面倒だったんだ。

 合法的に叩く理由をくれたのだから、突っかかってきた冒険者達には、ポーションを高く売りつける事で納得しよう。

 まあ今日の事はすぐに町中に広まるだろう。

 偵察に行った時からルスットゥル商会にはダックウィードの町の人たちは居なかったが、冒険者まで居なくなるだろう。

 金の翼まで絡んでるんだ、あっという間に噂は広がる。

 あいつらが動くと物事が大げさに広まるからな。

 っていうか、もうあいつらが帰ってくる時期だったのか。

 長期間王都に依頼に行っていて、平和だったのに。

 もっと長引かせろよ。

 一応有能というのは本当っぽいな。

 クリスじゃなくて、周りが有能なのだろうか?

 無視してくれればいいのに、一々突っかかってくるから面倒すぎる。


 店に戻っていつもの作業場に籠もる。

 そして、ポーション作成用の器具を色々と取り出す。

 後は試薬か。

 ギルド長から預かったルスットゥル商会のポーションを鑑定する。


 『低級ポーション。体力が少量回復する』


 一応毒ではないようだ。

 さすが大手の商会。

 鑑定に出るという事は、少なくともこの配合で販売申請をとっている確かなものだという証明にもなってしまう。

 余計に厄介だな。

 俺は中級鑑定にかける。

 魔力を食うからあまりやりたくないが、手探りで薬の解析をする方が手間だ。


 『低級ポーション。〇〇、〇〇、シュロキ草が配合されている。摂取しすぎると中毒を起こす可能性があるので、取り扱いには注意が必要である』


 シュロキ草はポーションを作る上で基本となる薬草だから表記されているが、後の2つは空欄となっている。

 俺の鑑定力じゃこれが限界か。

 もっとスキルを磨いてる奴だったら、不明の部分まではっきりと読み取れるんだろうな。

 ルスットゥル商会の売っているポーションが俺の鑑定で読み取れないという事は、普通のポーションでは使わないようなものが使われているという事だ。

 じゃなきゃ俺の売ってるポーションより安く売れないわな。

 俺の場合は畑で育てているものと、道端で簡単に手に入る組み合わせで作っているから原価は抑えられているが、流通している手順で作ったら赤字だ。

 王都では1.5倍以上の値段がつけられているが、俺の店では価格が抑えられるのは、これが理由だ。

 他の薬も同じだ。

 その上、ダンジョンにしか生えない貴重な薬草も地図で売確認して、すぐに取りに行ける。

 研究されつくしたダンジョンだからこその利点だ。


「2つか」


 簡単に分かればいいが、もし植物でないものまで混じっていたら骨が折れる。

 それでも2つ分かっただけでも労力が減る。

 俺はシュロキ草と不明の2つの薬物を分離させる為に、分離機へと入れる。

 中級鑑定にかけてやっと判明するだなんて、悪質だな。

 寂れた町に、鑑定を持ってる人が少ないと分かっていて売ったな。

 その通りだが。

 王都でこんなもの売ったら、即商売権が剥奪される所を考えると、ここでしか売っていないのは幸いと言ってもいいだろう。

 しかし、ギルド長が出てきた以上ルスットゥル商会は終わりだろう。ギルドは全領地にネットワークを持っているからな。

 すぐにこの件は報告されて共有される。

 冒険者の命に直結するポーションに、依存性と異常性をきたすものが入ってただなんて、ルスットゥル商会の商品を買う奴は誰も居なくなるだろう。

 商売は信頼が命だ。

 それを投げ売ってまで粗悪品を売ったんだ。

 自業自得だ。

 分離している間にライブラリーでまずは「毒のある植物辞典」を開く。

 明らかに冒険者達が中毒症状を起こしている所を見ると、確実に毒性はある。

 幻覚症状と依存性。

 高価なものは使われていないだろう。

 売るだけ赤字になるから。

 それだけでも随分と種類は絞られるはず。

 あとは接種すると似たような症状を起こす植物を探して、総当たりで調べるしかないだろう。

 今日は徹夜になりそうだ。

 これがギルドの依頼でなければもっと燃えたかもしれないのに、仕事になると途端に憂鬱になる。

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