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 ルスットゥル商会は俺の所に来た次の日に、早速店をオープンしたらしい。

 らしいというのは、直接見に行ったわけではない。

 俺の所に来たのは、根回しばっちりな最終的な視察だったんだな。 


「やっぱり、あっちのルスットゥル商会の方が安いぜ」

「ぼったくってたんだな。あっちに行こうぜ」


 と大声で言いながら去っていく冒険者たちが何組も冷やかしに来たから、嫌でも分かるというものだ。

 俺の値付けよりも安いって採算取れてるのか謎だが、本格的に潰しに来てるという事は嫌でも分かった。

 むしろ冒険者達がルスットゥル商会に流れてくれれば、相手にしなくて済むし快適だ。

 次の日も外に生ゴミをぶちまけられたが、2回目となるとすっかり慣れきってしまった。

 消臭剤を負けば、匂いすらも敵ではない。

 集めた生ゴミはマックスの言った通り肥料にでも使うか。

 仕分けして薬と混ぜて肥料にする。

 薬草の発育に違いがでるかもしれない。

 どうしても使えないものは火を起こすときの燃料にすれば無駄にならない。

 それにしても、こんなに毎回大量の生ゴミどこで手に入れてんだ?

 もしかして嫌がらせの為にどっかから盗んできたりしてるんじゃないだろうな?

 その労力にお疲れ様と言いたくなった。

 午前中にはいつも通り町の常連が何人か来て、常備薬やら湿布薬やらを買っていった。

 世間話のようにルスットゥル商会の話をしてくれるから、情報は集まってくる。

 ずっと使われていなかった場所を改装したらしい。

 何年か前に、同じようにこの町で店を開いたが、流行らなくてすぐ閉めて、ずっと空き家になっていた場所だ。

 それほどこの町で新しく商売をするのは難しい。

 証拠に、今でも町の常連が普通に俺の店に来ているからだ。

 ルスットゥル商会もいつまで持つのか気になる所だ。


 冒険者達が来ないから研究がはかどる。

 染料を材料をただ煮詰めるだけではなく、スライスして、乾燥させ粉末化するという工程を経る事で粉のような形状にさせる事が出来た。粉にした染料は凝縮されたおかげで、鮮やかな色が出る。塗る時にも油で延ばせば薄くなる事もないという事も判明した。

 ただ手作業で全てを行うのは困難なので、小型の乾燥機ぐらいは買おうかと思っている。

 今までも物によっては粉末化させていたのであると言えばあるが、少ない量しか出来ない。

 何かいいものがあれば、ギルドに依頼して取り寄せようと思っている。

 本当は自分で取りに行ってもいいが、コスパのいい魔道具は王都で販売されている。

 こんな田舎町にあるのなんて何世代も前のものだ。

 どうせだったら良いものが欲しいが、今店を開けたら嬉々として嫌がらせをされそうだ。

 隙を見せる訳にはいかない。

 それにまだ試作段階だから時間がかかっても問題はない。


 まずはいきなり自分の髪に試すのではなく、布を染めて様子を見ようと思う。

 布はシビルの店の物を安く買い取ったから、大量にあるのだ。

 シビルの店のお楽しみ部屋の布類は、痛むと当然変わる。

 それに衛生的観念からなのか、こだわりなのか、シビルは季節ごとにお楽しみ部屋の内装を変えたりする。

 その際に大量に出た古い布を処分すると言うから、格安で譲ってもらったのだ。

 高級店で使っているぐらいだから質はいいし、ちょっとしたラッピングなどにも使えると思って。

 その中でも真っ黒な布に染料を乗せてみる。

 黒い布にはやっぱり染料は上に乗っただけで、全く色が映えていなかった。


「そうなるよな」


 という事はやっぱり染料を乗せる前にベースとして何かをコーティングするように塗った方がいいだろうな。

 俺は別の鍋でストックしてあるスライム粉をドロドロに溶かす。

 スライムは水辺に居るごく弱い魔物だ。

 ダンジョンに出てくるものは特殊な進化をしていて毒性を持つものも居るが、川などに居るものは毒性もなく、色々なものに使われている。

 しかも繁殖も早い。

 害がないから放置されるぐらいだ。

 大手の商会では繁殖させて売っているほどメジャーな素材だ。

 乾いたら固まるようにポコクグターの液と混ぜてしばらく煮る。

 ポコクグターという木の中にある白い樹液は液体の時にはドロドロとしているのだが、乾くと白くなる接着するという特性を持つ。。

 それをスライム粉と混ぜて糊のようなものを作ったのだ。

 つまり、黒を一回白に戻してから塗る。

 後は反発して色が乗らないなんて事がなければいいけど。

 黒い布一面に出来た液体を塗った。

 そして、乾く前に染料を乗せると、きちんとくっつき、鮮やかな色が糊の上に残った。

 むしろ染料よりもこの定着液の方が売れるんじゃないだろうか?

 俺は少し大きめに緑色に染めた布に定着液を塗ってから、適当に模様を書く。

 そして、その上に染料を載せていく。

 ちょっとオシャレかもしれない。

 調子に乗って何枚も作ってしまった。

 だが、やはり粉の状態では乗せるのも大変だ。

 だからと言って油で延ばしすぎると、今度は定着材がはがれやすくなる。

 まだまだ研究が必要だな。

 気づいた時には、色々な色の模様がついた布だらけになっていた

 こんなにラッピングする程必要か?

 試しにココにでもやるか。

 好評だったら衣料品店にでも卸すか?

 衣料品店にあるものは良く言えば実用的なものしか置いていない。

 模様がついたものは刺繍が一般的だから流行るかもしれない。

 あとはこの染料が長く固定されるかだな。

 布のように耐久性の悪いものに鮮やかな色を乗せるとすぐにくすんでいく。

 その辺りも研究だな。

 

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