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基本的に仕返しはしない主義である1

 思ったよりも色々あったが、ダックウィードの町民が仕組んだ依頼は終わった。

 マックスと合流できた冒険者たちは疲れ切った様相だったが、マックスに会うと抱き合いながら喜んでいた。

 涙を流している奴もいる。

 すっかり忘れていたが、確かマックスが居なくなったのは朝ごはんを食べていた時と言っていた。

 それから3時間以上は過ぎていたが、もしかして居なくなってからずっと探していたのだろうか?

 だとしたら随分とお人好しな冒険者たちだ。

 それともマックスのたらしこみ方がいいのだろうか?

 伯爵の雇っている兵士たちとも、すぐに仲良くなっていたしな。

 もう依頼も終わってるし、馬車に一緒に乗ってダックウィードの町へと帰る事になった。

 マックスも入れた五人は、仲良く和気あいあいと話している。

 もうそのままパーティに入ってしまえ。と俺は行きと同じように馬車酔いで吐きそうになっているイーサンの背中を擦りながら思った。

 思った通りに冒険者達はダックウィードの町ではなく、もう一つ離れた町で降りるという。

 ダックウィードの町にそのようなお人好しの冒険者が居るはずない。

 町についてすぐに二人とは分かれた。

 マックスはギルドに討伐の報告へ行くと言っていたし、イーサンはシビルの店に回収した金を受け渡しに行くのだろう。 

 二人共金が入るから今日はもう来ないだろうと、俺は久しぶりの一人についウキウキしてしまう。 

 それに、明日は元々の休養日。

 休みに合わせて行って良かった。いつもの事だが、屑な冒険者たちの相手は精神力が削れていくのだ。

 使った薬の補充もしたいしな。

 3日も閉店する計算になるが、領主の依頼は3日以上の売上があったから金銭的な問題は全くない。

 面倒だったが金にはなった。

 パン屋の親父が町の人たちには周知してあると言っていたから問題もない。

 困ったのは冒険者達だけだろう。

 それでも三割増しではあるが必要であろうものは、ギルドで売ってるんだから問題ないだろう。

 少しは閉店する事で俺の有難みを知ればいいんだ。 

 帰ってきて外に出る気も起きなかったから、元からストックしてある余り物で腹を満たす。

 缶詰類の多い健康に問題がありそうな食事だが、一人だからいいんだ。 

 そして夜更かしをする。

 少し高い酒も一人だったら開けてもいいもんな。

 二人が居る時に開けられたら全部呑まれてしまう危険があるから、絶対にださない。

 つまみに乾き物を出しながら、アイディアブックを取り出し、酒をちびちび飲みながら新商品になりそうなネタを書き連ねていく。

 大人になってからの夜更かしは、またいいものなのだ。

 いつも決まったものを売るのもいいが、新しい物を作るのも楽しい。

 消臭剤のように、何が金になるか分からないから。

 それに学園に通っていた頃には出来なかった事も色々出来る。

 ライブラリーでストックした本の中から、新商品の参考になりそうなものを探してメモをする。


 そう、新商品。

 心踊る単語だ。

 バルテ伯爵の家に行って思ったが、やっぱり女性は何歳でも美容に気をつけていて、貴族にはその傾向が強い。

 パン屋の口うるさいババアですら髪に白さが目立ってきた時には、心無しか元気が無かった。

 丁度パン屋の親父が町の代表に選ばれたばかりで、気苦労が多かったのだろう。

 髪の色や髪自体が抜けるのには、心労が関係しているというのが最近の研究で解明していたからだ。

 相談をされた俺はパン屋の親父にスカーフをやった。

 試しで染めたもので、失敗作とは言わないが別に高価な品ではない。

 疲れていたババアはそれだけで自分の事を気にかけてくれていた。と凄い喜ばれたようで、それからずっとパン屋の親父は何かと俺の事を気にかけている。

 トビーはクソ生意気だがな。

 思考が逸れた。

 つまり、パン屋のババアと同じように悩んでいる女性に向けて、髪の毛を痛めずに色を変えられる商品を出したら貴族に受けるんじゃないかと俺は思ったのだ。

 今までも毛を染める液体はあったが、どうしても暗い色になってしまい、一度染めるとまず落ちない。

 落とすには特殊な薬品を使うため、髪の毛が凄く痛む。一般には普及していないものしかなかった。

 もっと手軽に色々な色で染められ、かつすぐ落とせて平民にも手が届く値段で売れる商品が作れたら、凄い売れるんじゃないかと思う。

 と言ってもそれは容易ではない。

 体につけるものだから、もちろん人体に害がなく、最低でも一週間ぐらいは持続させたい。

 とりあえず、一般的な茶色の髪をベースに赤や緑、青、人気の金髪などの色が出せるようになれば王都でも売れるかもしれない。

 他の色は普及してから出せるようにすればいい。

 部分的に色を変えるというのもオシャレかもしれない。

 特別な祭りなど、普段出来ないちょっとしたオシャレとして貴族に受けるかもしれない。

 流行るようなら王都に居る恩師に、販売権を丸ごと売ってしまえばいい。

 すぐ落ちるようなものなら犯罪者も使わないだろう。

 夢が膨らむな。

 俺は染色に使えそうなものをライブラリーで探しつつ酒を飲むという、細やかでは有るが充実した静かな夜を過ごした。



 

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