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13

 何故か高揚しているイーサンとマックスと共に、祭壇を後にする。

 もちろん帰りにバッテリー代わりのデカい魔石は外す。

 貴重だからな。

 すると暗くなるじゃないかって?

 復活したイーサンに充電器代わりになってもらうに決まってるだろ。

 向かう途中に、ちまちまスカロプスから回収したクズ魔石をいっぱいかませてから今度はイーサンがマックスに持ち上げられて、たっぷり二時間は点灯しておけるように魔力を込めさせる。

 それぐらいしか取り柄がないからな。

 目一杯に魔力を入れたから、魔力が無くなったらクズ魔石は消えてなくなるだろう。あれ、証拠隠滅にもなってラッキーじゃないか。

 何か訳の分からない事をイーサンが言って、マックスが適当な相槌を打ち、精神的なお守りに疲れた俺は適当に聞いていた。

 ガイが言っていた通り、一時間程歩いた所で土砂と岩で塞がれていた所に辿り着く。


「ガイ君は居ますか!!」


 大声で叫ぶと、逆側に居る人達がザワザワとしてから「ガイです!」と大きな声で返事が返ってきた。

 良かった、まだここに居たんだ。


「今からこの岩をどかしますから、みんなに離れてくださいと伝えてください」

「え、っていうか何でナルさんソッチ側に居るんですか?」

「この岩をどかしてから伝える」

「分かりました。皆、ここから離れてくれ」


 ざわざわしていたが、みんなガイの指示に従って離れていっている。

 もしかしてガイって俺が思ってるよりも地位が高いのか?

 ……よし、考えないようにしよう。

 合図が出たのでマックスに破壊してもらう。


「フレッカー流、気合術!!」


 マックスがふざけたように叫びながら土砂に手を当てる。

 決して、ふざけている訳ではない。

 マックスの言うフレッカー流とは、辺境伯独自に発展した体術だ。

 簡単に言うと、自分の魔力を相手に当てて吹っ飛ばすという、デタラメな体術だ。

 しかも体内の魔力を使っているだけなので、外には何も変化が起きず、初めてくらったものは何が起きたのか分からないという初見殺しの技を使う。


 こちら側には変化は無いが、向こう側では野太い歓声があがっている。


「すげー、岩がどんどん崩れていくぞ」

「一体何をしてるんだ?」

「やっと地上に戻れるかもしれない」


 手作業で二週間も作業をしているのだから当たり前だ。


「やべ、ちょっと足らないかも」

「イーサン」

「仕方がない、高貴な私の魔力を分け」

「グダグダ言ってないでさっさとやれ、クカラッチャ」

「ナル、帰ったら覚悟してろよ」


 ブツブツ言いながらもマックスの背に手を当てるイーサン。

 魔力ポーションは貴重な薬草を使うから、節約節約。


「うおー、力がみなぎってきたぜ」


 さすが貴族。

 天井のライトの充電もして、さらに余ってるだなんて、魔力の量が桁違いだな。


「うおりゃあああー」


 妙な奇声と共に岩は粉々に砕けた。

 これ、人体にやったらまずい技じゃないか?

 辺境伯ってヤバいな。

 崩れた先には呆気にとられたようなガイと、満面の笑みを浮かべた筋肉ダルマ。

 歓声と共にマックスが筋肉ダルマ達に囲まれている。


「一体どんな力を使ったんだ」

「俺にも教えてくれよ」


 手作業で掘るしかなかった所に圧倒的な力で崩したんだから、弛んでいる兵士達のいい刺激になったのだろう。


 イーサンは無視して先に階段へ行き地下から上がっていく。

 魔法が使えない事がそんなに屈辱的だったのかと呆れてしまう。


「本当にナルさんだったんですね。声が聞こえた時には驚きました。何でそちら側に?」

「穴に落ちたんだ?」

「穴?」


 ああ、言っておかないと。


「この家から西方向に100ぐらい行った先に巨大な穴が空いているから、間違えて落ちないように注意してくれ」

「そんな穴があるなんて危険ですね。すぐに修復に向かってもらうように執事長に伝えます。まさか、ナルさん落ちたんですか?」


 心配そうに行ってくれるが、そもそも穴を開けた元凶があそこで談笑している。


「ああ。中はいつの間にかスカロプスの巣になっていた。ここの岩が崩落したのもそのせいだろう」

「成る程、すぐに伝えます。場合によっては編成を組んで退治しないといけませんね」


 と言ってもあの祭壇の謎の光で消滅してるかもしれないが。

 言わないけど。


「ところで」


 まだ何かあるのか?

 まさか祭壇を起動した事を黙っているのはマズイのか?

 あれだけ光ったんだ。

 こっちにも異変が伝わってもおかしくない。


「あの方は誰ですか?」


 マックスの事か。

 そりゃ不審にもなる。


「一緒に穴に落ちた奴だ」

「知り合いですか?凄い強い人ですよね」

 

 ガイも心無しか目をキラキラとさせているが、マックスに憧れるのは止めた方がいい。


「顔見知りというだけだ。偶然、本当に偶然会っただけだ」

「そうなんですね」


 信じたかは分からないがガイは納得してくれたようだ。

 マックスと話したそうにソワソワしてるガイに先に上に戻ると伝えたら、慌てたようにガイもついてきた。

 そして執事長にガイにしたのと同じ説明をすると、すぐに討伐と、穴に目印を立てに行かせると言ってくれた。

 地下が魔法が使えない為、職人に依頼しなければならないので、時間がかかると思うが、元々伯爵の家には滅多に来客も来ないから、大丈夫だとお咎めもなかった。

 これで誰かが穴に落ちる事もない。

 まあ、落ちたとしても岩もどかしたし、地下道の通行も出来るから大丈夫だろう。

 次に出る馬車の時間を聞いた所、もうすぐだったので外で待つ事にした。

 太陽はもう天辺まで登っていた。

 もう少し早く帰るつもりだったが仕方ない。 


「はあ、やっと町に戻れる」


 時間的には対して長い時間ではなかったが、知らない場所に居て知らず知らずの内に緊張していたようだ。

 嫌な思いばかりの町だが、ダックウィードはいつの間にか俺の帰る場所になっていたようだ。

 

 

いいね、やブックマークありがとうございます。

明日から、また新しい事件が起こりますので、よろしくお願いします。

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