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 道中は特に何事もなかった。

 たまにスカロプスが迷ったかのように飛び出てくるが、特にマックスが危うげなく切り捨てていく。

 俺はスカロプスの死体から魔石だけをとりあげる。

 スカロプスはほとんど素材として使える部位はない。

 弱い魔物だからな。

 そのまま置いていこうとも思ったが、魔石は数を集めれば色々と使い道はある。残った死体は集られないように軽く埋めた。帰りも通るからな、重要だ。

 そういえばと、俺はマックスに気になっていた事を聞く。


「マックス、何でまだこの辺に居たんだ?てっきり昨日の内に帰ったのかと思ってたぞ」

「いやー、馬車で会った奴らの依頼をついでに手伝ってたんだけどな、目当ての魔物が思ったよりも群れになっていてさ。終わった時には、帰りの馬車の時間が過ぎてたんだ。仕方なく、一緒に野営したんだ」


 俺だったら初めて会った奴らなんか信用出来ないから、絶対に帰るか、無理してでも離れるけどな。

 こういう価値観が合わないんだよ。


「で、朝ご飯を食べていたらあのスカロプスが俺の飯を勝手に奪って逃げやがってさ、追いかけてたらお前らに会ったんだ」


 スカロプスもいきなり追いかけられて驚いたんだろうな。

 必死な形相で逃げてたし。

 哀れ。

 っていうか、一緒に居たという冒険者達は今マックスを探してるんじゃないだろうか?

 まさか地下に居るとは思わないだろうし、お気の毒に。

 でも、マックスと組むという事は、こういう事なのだと諦めるしかない。


「ナル達はあんな森の中で何をしてたんだ?」


 喋っている間にも向かってくるスカロプスを切り捨てている。

 爽やかな笑顔で血みどろの剣をこっちに向けるな。


「面倒だから、イーサン話しておけよ」


 イーサンはこの鉱石を何とか持ち帰って研究したいとかブツブツ言っていたが、さすがに鉱石をとるような道具は持ち歩いていない。


「私の武勇伝が聞きたいのか?なら、話してやろう」


 武勇伝というか、変態の調教だろう?

 イーサンが色々と誇張をしながらも大体あった事を話している内に開けた場所についた。

 そこには地下なのに何故か泉があって、浮島のようになって短い橋が一本かかっていた。


「地底湖のようだな。大分古い時代からあるように見える」


 そして、バルテ伯爵が言っていた通りに、真ん中にポツンと祭壇のようなものが置かれていた。


「これがバルテ伯爵の言っていた結界を作る装置ってやつか」


 おっかなびっくり橋を渡り近づいてみる。

 石で組まれたそれは、俺達の腰ぐらいまでの高さの小さな家を模したようなものだった。扉にあたるであろう部分の前には、何かをそなえる為の皿が前に置かれている。

 確かに、装置という感じではない。

 あまり来ていないという話は事実なのか、少し薄汚れているような気がする。


「嫌な感じはしないな」


 専門家でもない俺には、とても古い物だという事ぐらいしか分からない。

 中に入っているものが気になるが、何故か無闇に触ろうという気にはならなかった。

 イーサンは興味深そうにジロジロと見ているが、俺もマックスもすぐに興味を失った。


「なあ、腹減らないか?」


 唐突にマックスが言う。

 確かに警戒しながら歩いたからか少し疲れた。


「休憩でもするか」

「なあ、この湖って魚居ると思うか?」

「さあ、居るんじゃないか?」


 濁っていて底が見えないから、俺は適当に答えた。

 冗談で持っていた釣り竿を渡すと、マックスは早速釣りを始めた。

 地下で火をつけるのは気がひけるが、少し冷えているし水も近くにあるから大丈夫か。

 収納バッグから簡易コンロを取り出し、水筒の水でお湯を沸かす。

 湖の水でもいいが、この濁り具合だと濾過させないと駄目だろうな。


「お、来たぞ」


 早速何か、かかったようだ。

 つーか、メッチャひいてる。

 普通の魚じゃないだろう。

 竿が思いっきりしなって、マックスが力負けしてるのかズルズルと水の方へ引きずられてるのが分かり、俺は慌ててマックスの腰を掴み支える。


「サンキュ」


 体制が安定したからか、思いっきりマックスが竿を引く。

 つーか、このままじゃ馬鹿力で竿が折れる。

 ただじゃないんだぞ。


「少し離すぞ」

「おお」


 俺は収納袋から、押し付けると雷の魔法を発して痺れさせる棒、スタンガンを取り出した。

 市販品は、ちょっと痺れる程度だが、対冒険者用に俺が改造したから、起動させたら素手では持っていられなくなる程強力だ。だから、ゴム手袋も忘れずにつける。

 マックス?死なないだろ。

 それでも一応気を使って、しなっている釣り竿の先端に、糸が焼ききれない程に出力を抑えて押し付ける。

 まあ強めの糸を使っているから大丈夫だと思うが。

 糸を伝って衝撃が魚に伝わったのか、見るからに竿を引く力が弱まったのが分かった。


「いってーな、ナル!!おおっと、おりゃあああ」


 マックスの気合の一声で、明らかに魔物と思える魚が釣り上げられた。

 なんせ全身が紫色で三メートル以上はある。

 巨体に思わず口をあんぐりと開けてしまう。


「随分と食いごたえがありそうだ」


 マックスが言った言葉が分かったのか、ギロッと俺達の方を見た。

 獲物だと認識されたようだ。

 良かった、無造作に泉に手を突っ込まなくて。

 俺は慌てて盾を取り出して構えた。


「地上に出ればこっちのもんだぜ」


 マックスが釣り竿を放り投げ、剣に持ち替え振りかぶる。

 俺?

 当たり前のように盾を構えたまま下がる。

 戦闘はマックスに任せておく。

 十分離れた所で、マックスと魚との戦いを見守りながら、お茶の準備の続きに戻った。


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