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「もしかしてここは地下の結界へ続く道じゃないか?」

「今更気づいたのかよ」


 マックスは居なかったから「なんだそれは?」という顔をしている。

「ちょうどいい、ついでに見ていこうじゃないか。元々今日はそういう予定だったのだから」


 面倒。

 それに俺はイーサン程結界に興味はない。


「帰るぞ」

「何でだナル。まさか貴様までもが私の崇高なる研究を阻もうとでもいうのか?」


 何言ってるんだ、こいつ。

 お前の研究なんてどうでもいい。

 この危機的状況で帰る以外の何をするんだ。

 一応領主の家の地下とはいえ安全とは確認出来てないんだぞ。

 俺は懇切丁寧に説明してやる。


「イーサン、勝手に来ているのがマズイと言っているんだ。一応ここは伯爵の家の地下だろう?事故で落ちたと信じてくれればいいが、害意があったと判断されたら平民の俺なんか処刑案件だぞ。それにマックスが開けた穴の事も報告しないと、誰かが落ちたら大変だろう」

「それもそうだが、少しぐらいいいじゃないか?それに、いざとなったら揉み消してやる」


 信用出来ない。

 何だ、何だとマックスが気にしているようだが、無視する。


「はっきり言うぞ、イーサン。ここには弱いが魔物が居る。魔法が使えないイーサンなんて、クカラッチャ以下っていうぐらいに役に立たない。だから帰るんだ」

「わ、私がクカラッチャだと」


 衝撃を受けたような顔をしているが、そもそもイーサンが普通に魔法を使えていれば、俺がマックスに担がれた挙げ句に落とされるような目にも合わなかったのだ。


「ナル、本当の事だからって言ってやるなよ。可哀想だろ。いくらイーサンが魔法しか取り柄がないとしても」

「言わないと理解しないだろ」


 っていうか、追い打ちかけてやるなよ。

 可哀想だろ。

 イーサンが黙ったまま俯いたから、キレたら面倒だと思っていたら、期待とは逆にイーサンは満面の笑みを浮かべながら顔を上げた。

 イーサンが笑顔だなんて、絶対録でもない事考えてるだろ。


「マックス」


 優しくマックスを呼ぶ声で俺は警戒心を上げたが、マックスは何も気づいてないかのように返事をしている。


「なんだ?」


 イーサンが懐から何かの紙を取り出す。


「私の護衛をしてくれるならシビルの店の二時間飲み放題券をやろう」


 汚え、買収する気かよ。

 マックスの目が輝いた事が分かった。


「マックス、良く考えろ。護衛をしながら闘うのは並大抵の大変さじゃないんだ」

「それぐらい騎士団でやってたから、今更言わなくても分かってるぞ、ナル」

「だったら」

「でもな、友人が困っているのに放置出来る程オレは冷たくないんだ」


 言いながらマックスはイーサンの持ってた券を収納袋に入れている。

 簡単に買収されすぎだろう。


「ナルは一人で残ってもいいし帰っても構わないぞ。まあ無事に伯爵の家まで辿り着いた所で、マックスが居なければ土砂で塞がれた道は通れないと思うがな」


 勝ち誇ったように言うイーサンの言う通りだ。

 俺一人ではあの岩はどかせないから結局待つ羽目になる。 

 くそ、さっきまで凹んでた癖に立ち直り早すぎるだろ、もう少し凹んでろよ。

 俺は仕方なく結界へ向けて歩く二人の後をついていくしかなかった。

 

 

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