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 俺は収納袋からランタンを出す。

 ダックウィードから出る時には何があってもおかしくないから、一通りの物は当然用意しているが、本当に良かったと思う。

 ランタンと言っても、夜に道を照らすだけの小さな物で、少し明るくなった程度だが、無いよりはマシだろう。

 天井に点ってはいないがポツポツと魔導具のライトが設置してあるのがぼんやりと見える。

 という事は、ガイの言っていた結界への道の先なのか?

 俺達の落ちてきた上の方にランタンを向けると、所々に空いた穴からスカロプスが見え、照らされた事で慌てて隠れた。

 ここはスカロプスの巣なのか。

 きっと結界への道が塞がれたのも、こいつらが穴を掘りまくったせいだろう。

 という事は、崩れる前から結界の力が弱まっていたという事か?

 まあでも、これで道は分かった。

 天井の灯りがある方に、伯爵の家の方に向かって歩いていけば、さっき居た地下道に辿り着くだろう。

 そして、マックスの馬鹿力で土砂をとりのぞけばいい。

 目処が立った俺は放置していた二人を見る。


 何故かマックスは剣を岩に叩きつけていて、イーサンは頭を抱えている。

 ガンガンとマックスが叩く音がうるさいのに気にならないのか「魔法が使えない私はクズだ、存在価値はあるのか」とかブツブツ言っている。

 まあ、イーサンは魔法しか取り柄がないから魔法が使えない今、クカラッチャと同じくらいクズといえばクズだが、心優しい俺は言ってやらない。

 ネガティブモードに入ったイーサンが復帰するには時間がかかるから放置して、奇怪な行動をしているマックスをまずは止めるか。

 マックスは一心不乱に剣を岩に叩きつけている。

 その音にスカロプスがこっそりと動く音がして肝が冷える。

 そんなに大きな音を出したらスカロプスが寄ってくる。

 スカロプスは好戦的なモンスターではないが、刺激をしたら向かってくる可能性もある。

 今はランタンで照らすと怯んだように逃げていく。

 いきなり降ってきた俺達に怯えているようだ。

 その内にさっさと止めよう。


「マックス、あまり大きな音を立てるな。魔物が寄ってくるぞ」

「ああ、悪い悪い。暗いから松明でも作ろうと思ってな。さすがにナルみたいにランタンは持ってきてないからな」

「いや、衝撃で地面がえぐれているだけだぞ」


 確かにそのような方法で火花を散らす方法もあるが、同じ硬さの石で打ち付ける事が前提だろう。

 今知ったみたいな顔をするんじゃない。

 まあ暗いと行動がしづらいのは確かだ。


「ちょっと待ってろ」


 俺は洞窟の天井部分をランタンで照らす。良かった、どこにでも売っている市販品だ。しかも型も古そうだ。

 ライブラリーから『日常で使う魔導具機構3』を探しページを捲る。

 そこには日常的に使う魔導具の簡単な修理方法などが乗っている。

 専門の所に出すと時間がかかる事もあるし、簡単なものの修復なら自分でやった方がいいと思っていたが、役に立つもんだ。

 思った通り178ページに魔導具の灯りの機構が載っていた。これで天井のライトがつけられるかもしれない。


「イーサン、手伝え」


 声をかけたが、イーサンはまだ魔法が使えない状況から立ち直れて居ないようだ。

 ため息をついてから、天井の辺りを自分で照らす。

 本に載っていた通り、うっすらと鉄線がライト同士を繋いでいた。


「マックス、俺の事を持ち上げられるか?」

「いい方法でも浮かんだのか?」

「ああ。天井のライトを繋ぐ部分に直接魔力を流す」

「魔法は使えないんじゃなかったのか?」

「多分平気だ」


 さっきイーサンが魔力を流そうとした時も、魔法陣自体は浮かんでいた。

 多分外に流すことが出来ないだけで、直接触れれば大丈夫だろう。

 それにさっきもマックスは無意識にだが身体強化をしていた。

 じゃないと落下のスピードを緩められる程深く岩に剣なんて突き刺せないだろう。


「わかった」


 両手を使う作業だから、イーサンに照らしていて欲しかったが、仕方ない。

 角度を調整して地面に置くと、待ってましたとばかりに、マックスは俺を子供を持ち上げるように、向き合ったまま軽々と抱き上げた。

 俺がヒョロい訳ではない。

 マックスが馬鹿力なだけである。


「違う。肩の上に乗せろ。そうじゃないと天井にまで届かないだろ?」

「おう」


 一回おろしてもらってから、肩車の要領で担がれる。

 そのままマックスの頭を支えにして慎重に立ち上がると、すかさず膝を支えてくれる。

 靴のままだが気にならないのか?

 まあいいけど、さっさと終わらせよう。 

 だが角度が悪いのか暗く、良く見えない。


「イーサン、ランタン傾けろ!」


 イーサンは返事がない。

 本当にあいつは突発的な事に弱すぎる。

 マックスが無造作に足元のランタンを蹴ると、ランタンは倒れ、角度が変わってちょうど見えるようになった。 が、倒れたランタンは油を使ってるんだぞ。そのまま地面に倒したままだと、故障の原因になる。早くしないと。

 俺は鉄線を掴み、袋から工具を取り出し鉄線を切断する。本当は良くないが緊急事態だ。スカロプスのせいにしよう。

 そして切断面を掴み魔力を無理やり流す。

 勢いよく流したおかげでライトが次々についていく。

 良かった。これでつかなかったら、ただの器物破損だ。

 その後中央に大きめの魔力の入った魔石をかませて結び直す。

 こうすれば掴んでなくても魔力を流しっぱなしにできる。

 高いから後で必ず回収しないと。


「おお、明るいな」


 終わったという前に、はしゃぐようにマックスがジャンプをする。

 まだ俺が上に居るというようにそんな事をしたから、俺は当然体制を崩し、地面に落ちた。


「マックス!」

「悪い悪い」


 絶対悪いなんて思っていないだろう。

 それでも、まあ帰る目処はついたから帰るか。

 俺はまだ呆けたままのイーサンの頭を殴る。 


「イーサン、早く帰るぞ」

「は、私は一体何を」


 何をって、何もしてねぇよ。

 本当にクカラッチャ以下だよ。

クカラッチャ=黒くてピカピカした虫のようなものです。

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