7
予約の日付を間違えてました。
申し訳ありません。
口裏を合わせるようにマックスに言ってから、ギルドへと押し込んだ。
あれだけ念入りに言ったんだ。
口を滑らせない事を祈ろう。
後何件か依頼をこなせば、マックスはEランクになる。
俺の肩の荷も降りた。
時間も三時までに終わったし。
俺は依頼から帰ってくる冒険者にボッタクられないように注意をしながら店番をして、店を閉めた。
疲れたが、これからマックスに絡まれない事を思えば、何て有意義な一日だった事か。
今日は薬も作らずに溜まっていた本でも読もう。
せっかく手に入れたウフ茸もフーゴもあるし、高いワインでも開けて一人乾杯だ。
マックスは依頼料が入ったからと酒場に行くと言っていたし、邪魔は入らない。
そうだ、これが俺の平和な一日だ。
お高いワインを開けながら一人でゆっくりとライブラリの量を増やす。
次の日も爽やかな目覚めだった。
いつものように薬草の手入れをする。
そろそろ収穫時のものもある。
丁寧に採取してから家に入ろうとした時、絶対に見てはならないものを見てしまった。
「おーい、ナ」
最後まで聞く前に俺は慌てて家に入り、鍵をかけた。
何でだ、何で家の前に居た。
もう俺は用済みの筈だろ。
「おい、ナル。居るんだろ?さっき目があっただろ?」
ひいいい。
ドアノブが乱暴にガチャガチャ言っているが無視する。
っていうか寮に帰れよ。
そこでお仲間でも何でも見つけて、自由にやればいいだろ。
「帰れ」
俺はドア越しに叫んだ。
「何でだよ、入れてくれよ」
高速でノブが上下している。
「あ」
マックスのとぼけた声と共に、バキっという嫌な音がした。
そして、ドアは何も障害もなく開いた。
「悪い、壊れたみたいだ」
全く悪いと思っていないようにマックスが中に入ってきた。
そして、とれてしまったドアノブを固まっている俺の掌に押し付け、昨日と同じ席に座る。
「今日の朝食は何だ?昨日食ったソーセージは美味かったな。あれはまだあるのか?」
こいつ。
中に入ってしまったものはしょうがない。
俺は仕方なくもうひとり分の朝食を用意する。
昨日の残りと追加で玉子を焼く。
「おお、今日も美味そうだな。いただきます」
家主かのようにマックスは飯をガツガツと食い始めた。
「って違う。なんで家に来るんだよ、ギルドに帰れ。金あるだろ」
不満を爆発させた。
マックスは俺の興奮具合にやっと迷惑だと理解してくれたのか、真面目そうな顔でナイフとフォークを皿の上に置いた。
「思ったんだよ、ナル」
「何だ?」
「俺には金がない」
「そうだな」
「ギルドでの朝食には金がかかる」
当たり前だろ。
と言っても大した金はとってないはずだ。
料金に対して量は凄くあり、一応栄養面とかも考えられているはずだ。
冒険者は体が資本の商売だから気を使っているのだろう。
「今後の事を考えたら金はあまり使わない方がいい」
お、先の事を考えられるようになったのか。
マックスも成長したんだな。
この町に来た事は迷惑だが、マックスの父親の判断は間違ってなかったみたいだ。
「ここに来れば飯がタダで食べれる」
は?
今意味の分からない事を言われたぞ。
「な、何か今良く分からない事を言わなかったか?」
「まだ寝ぼけてるのか、ナル。だから、ここに来れば飯がタダで食える。その分の金が節約出来る。つまり金が貯まる。な、いい考えだろ?」
「それって、毎日俺がお前にタダ飯を作れっていう事か?」
「人聞きが悪いぞ。友達のよしみで一緒に食事をとろうという話しだ。昨日の奴も言っていたがナル、お前友達居ないんだろ?友達である俺がナルと一緒に食事をとってやるから、ナルは俺の分の飯をついでに作ってもらう。どっちにとってもウィンウィンだと思わないか?」
全くウィンウィンじゃねぇよ。
俺は孤独を愛してるんだ。
「そ、そんなに気を使ってくれなくていいんだ。この町での付き合いも大事だろ」
「ああ、平気平気。俺、ナルと違って友達すぐに出来るし。昨日の奴ともギルドに帰ってからきちんと話し合いをして分かって貰ったぞ。いやー、いい勝負だった」
勝負って言っているが、本当にそれは話し合いだったのか?
違う、今は昨日の奴らなんてどうだっていい。
どうやったらマックスが帰ってくれるかだ。
「震える程嬉しいのか。朝から良いことをすると気分がいいな。あ、ソーセージ食わないなら貰っていいか?」
マックスが俺の皿から勝手にソーセージを奪い取った所で我慢がきれた。
「帰れーーーーー!」
「そんなに照れるなよ」
こいつとは、やっぱり分かりあえる気がしない。