君への懺悔
「僕はオープンリレーションシップじゃないと付き合えないけど、平気?」
好きな子に告白して言われた言葉。
オープンリレーションシップって初めて聞いたけど、意味も分からず「いいよ」って言っちまった。
付き合えるなら何でも良かった。
それだけ魅力的で可愛い子だった。
高校一年の春。
同じクラスの女みたいに肌が白くて細くて、透明感がある男、相澤理玖。ストレートのマッシュヘアは光に当たると茶色に光る。高校で初めて一緒になって、一目で恋した。
俺、須藤将也は野球部で身長もクラスで一番デカい。百七十八センチ。怖そうってみんなから言われるけど、話すと良い奴って言ってもらえる。
目線が合うと笑顔をくれるし、ボディタッチも多めだった。あんまり話した事はないけど、付き合える確率は高いんじゃないかって勝手に思い込んでた。
人生初めての告白。
七月のむせ返るような暑い教室で。二人きり。
家で何回も練習した言葉。口から心臓が飛び出るほど緊張した。
付き合えた日は嬉しすぎてなかなか眠れなかった。
翌朝、オープンリレーションシップを調べた。
絶句した。理玖が他の奴と一緒になるなんて、想像しただけで胸がムカついた。
でも、そんな事を忘れるくらい理玖との毎日は幸せだった。
俺が部活が終わるまで待っててくれて、二人で手を繋いで人気の少ない道を帰った。人気を感じたらすぐに手を離す。そのスリルも楽しかった。
初めてのキスは自販機の前で。
俺がコーラで、理玖はカフェオレ。
「カフェオレ一口ちょうだい」って言ったら、まさかの口移しだった。興奮した。
コンビニでアイスを買って、駐車場の隅で二人で過ごした時間も暑かったけど甘酸っぱい記憶だ。
笑えるのは、理玖の机の中はパンパンに物が詰まってて汚かった。顔は美形なのに、机は汚い。そのギャップがまた萌えた。
嘘みたいに夏なのに涼しい日があった。
忘れもしない、あのファミレスでの出来事。
キングサイズのパフェを二人で食った。
信じられないくらいの腹痛に襲われた。
頼まなきゃ良かったなって後悔して笑った。
だけど、幸せは長くは続かなかった。
「なあ。昨日は誰と一緒に居た?」
「えー。他校の林君って子ー」
「俺、見たんだよ…。理玖が他の男とカラオケ入るの」
「あ!じゃあ将也君も清水駅前に居たんだ?家から遠いのに、どうして?」
「俺は浮気してねーのに、お前は平気な顔して他の男と一緒になるんだな」
俺は真一文字に口を結ぶ。
二人の沈黙がチクチクと痛む。
「ごめん。やっぱ無理。他の男と一緒になる理玖は無理」
「へぇ。そっか」
「何だよ、そっかって!そんだけかよ!」
「だから、付き合う前に言ったよね?オープンリレーションシップじゃないと付き合えないって。やっぱ将也君もダメだったんだなって思っただけ。誠君は半年もったけど、ぼくが他の男の子との所見られちゃってダメだったな。カイ君はねぇ、短かった。一ヵ月かな?やっぱ十代って多感な時期だからね。僕は、もっと理解のある大人と付き合った方がいいのかも」
「気持ちわりーよ…。何でベラベラとそんな事言えんだよ」
「アスペルガーなんだよ僕って」
「何だよそれ」
「ふふ。僕も知らなかったけどねー。お母さんに言われた」
「もっと簡単な言葉で喋れねーのかよ」
「将也君とは二ヵ月半くらいかな?付き合ったの。ありがとね」
「まだ別れるって言ってねーし…」
「僕がダメなの。こういうの面倒だから。じゃあまた明日。学校でね」
そう言って軽やかに帰って行った。
理玖が見えなくなるまで俺はずっと理玖を見てたけど、理玖は俺の方を振り返る事は無かった。
それから俺は今では二十四歳になり、理玖を含めて六人と付き合った。体だけの関係はもっとあるけど。
ゲイの世界じゃ浮気する奴ばっかだ。俺も含め。別の誰かと付き合う度に思い出すのは理玖だった。初めての彼氏だったから。今でも忘れられないほど好きな人だった。
俺は謝らなきゃいけない。
俺は理玖に嘘をついた。
俺自身が、浮気してたんだ。
でも、俺は醜く、理玖の事だけを責めた。
ごめんな。
気持ち悪いって言って。
俺は自分が浮気したのに、君の浮気は許せなかった。
君は潔く、素直に生きる人だった。
短かったけど、忘れないほど濃い思い出。
二度ともう会えない、そんな気がする。
愛が何なのか、まだ分かんねーけど。
一緒に居たいって、何度も考えてしまう。
退屈な思いはもうさせないって誓うから。
今なら、俺達きっともっと上手くいくって思う。
もう一度、君に会いたい。
YouTubeに朗読したものをアップしました。
初めての事で分からない事も多いですが、是非見ていただけると幸いです。
よろしくお願いします。
2023年1月10日