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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
85/592

この解呪はどこかおかしい11

「生成を開始します。およそ、604788秒後完成予定です」


 なんてこった!

 まさか、ユーナと雪のクローンまで作られてしまうのか?

 こうなったら、バッグベアが去ったあと機械を停止させるしかない。

 しかし、下手に触って酸素供給も停止させてしまったら溺れ死んでしまう。

 ラグナはもともとそうやって葬るつもりだったけど、ユーナと雪はまだまだ完治に時間がかかるだろうし……培養槽内でユーナと雪の周りを変な機械がぐるぐると回っている。

 たぶん、データを収集しているんだろう。

 光を当てて、スキャナーみたいに動いているし。

 あのスキャンが終わってしまう前に停止できればいいのだが……。

 

「うむ、あとはラグナが修復されるまで待つか」


 待つの!?

 いやいや、あんたも魔界へ行くんでしょ!

 早く準備しないと勇者様に怒られますよ。

 というか、本当にここから去ってくれよ!

 

 コッコッコッ


 また、トンネルのほうから足音が聞こえる。

 おそらく、ホークだと思うが次に会ったときは敵とか言ってたしな。

 ユーナと雪が治るまでは待ってくれるか?


「パパ――!」


 パティ!?

 あいつは確かタワーの倒壊で……バッグベアによってラグナと同様に生き返ったのか?

 確か忍耐の使徒だったな……それにしても、パパだって?

 

「ここは危険だと言ったはずだぞ、パティ」

「だって、だって! 早く魔界に行きたいもん! 早くマオー殺したいなぁ!」


 幼女の口からなんて恐ろしいことを言ってるんだ。

 ちょっと、そこのスキンヘッドサングラスのお義父さん!

 貴方の教育、間違ってますよ!


「あ――! この女の人……ラグナおじちゃんを殺した人の仲間だ」


 パティがユーナを指差す。


「なんだと!? パティ、それは本当か!」


 ひ……ひぇぇぇ!

 そういえば、パティには見られていたんだった!

 

「うん、他に男の人2人と女の人1人いたよ。側仕えのおじちゃんが言うにはね、この女の人の近くにいた男の人がラグナおじちゃんとホークおばちゃんを殺したって言ってたよ。それでねうっかり、あたち泣いちゃったの」


 いや……違います!

 俺じゃないんですってば!

 あのならず者の勘違いですからぁぁぁ!

 それにラグナもホークも死んでいないからね、パティちゃん!


「そうか……偉いぞ、パティ」

「うん!」


 バッグベアがユーナの入っている培養槽の前にある制御盤を操作する。

 まさか、酸素供給を止めるつもりか?


 ピッピピピ


「強制排出を開始します」


 ドシャァ!


 ユーナが入っている培養槽が開き、ユーナと共に液体が流れ出る。


 ガッ


 バッグベアがユーナの髪を掴み、持ち上げる。

 

「それなりに胞子は消えているはずだ……話せ。他の仲間はどこへ行った?」

「う、うう……」


 ユーナはまだ意識が朦朧としている様子だ。

 くっ……あんな状態じゃ、まともに話せないだろ!

 それくらい理解できるだろ!

 これだから、悪人って奴は!


「話さないつもりか?」

「う……」 

「パパ――、殺しちゃうの?」

「そうだよ。ああ、パティがやるかい?」

「やったぁ!」


 狂気!?

 この親子……異常すぎんだろ!


「リュー……ジ……」

「ん……リュージ? それが仲間の名前か? 早速、手配書で確認してみるか?」


 ぎゃ――!

 ユーナ……何を口走ってんだ!?

 俺のことを想ってくれているのは嬉しいけどさ!

 今、俺の名前を言うのは違うんだって!


「きっと、ラグナおじちゃんを殺した男の人の名前だよ。パパ!」


 違いますぅ!

 何度も言うけど、違いますぅ!

 あんたの勘違いですぅ!


「そうだね、パパもそう思うよ」


 んもうぉぉう!

 信じてくださいよ!

 俺は無実なんです!

 

「そいつらの居場所はどこだ……言え!」

「う……う……」


 まだ、培養槽に入れてから1時間も経っていない。

 見た感じ、ほとんど治っていないんじゃないのか?

 まだ熱も下がっていないようで顔が赤いし。


「……まだ早かったか? まぁ、良い。名前がわかれば何とかなるであろう」


 ブンッ!

 ドサッ!


 バックベアがユーナを放り投げ捨てる。

 培養槽に戻すつもりは無いのか?

 ……そりゃ、そうか。

 敵だしな。

 

「パティ……ホークの所へ行くぞ」

「え――、殺さないのぉ!?」

「いいから来なさい!」

「はぁい……」


 コッコッコッ


 トンネルの奥へバッグベアとパティが戻って行く。

 今のうちにユーナを培養槽に入れるとしよう。

 でも、操作がまるでわからねぇな。

 ……あいつらが戻って来たときにユーナが治療を受けていたら不審に思われるか。


「リュージ……入れてあげて」

「だが、奴らが戻ってきたら……」

「次はあたしが……あたしの判断で……守る。操作も任せて」


 ナデシコが何とかしてくれるようだ。

 こいつを信じてユーナを培養槽に戻す。


 ゴボゴボゴボ


 ナデシコが制御盤を操作し治療を再開する。

 だが、同時にスキャナーらしき機械も動き出してしまう。


「ついでにクローン生成を停止したいのだが、なんであの機械が動き出したんだ?」 

「一度動くと……強制停止できない」

「まさか、クローンの生成を開始したらキャンセルできないのか?」

「うん……コピーからは全自動だから……下手に止めるとオリジナルにも悪影響が出る……ユーナ姉は一度出されたから……心配」


 マジか?

 欽治のホムンクルスに続き、ユーナと雪の黒子も奴らのホムンクルスになるのか?

 ナデシコみたいに、またキメラ化させたりはしないだろうな?


「異常発生、異常発生、生命維持装置以外の緊急停止を行います」


 なんだ……赤いランプが点滅し部屋が真っ暗になる。

 また停電か?


「リュージ殿……雪殿の培養槽が」


 雪が入っている培養槽が淡く光っている。

 次から次へと……今度は何が起こるんだ?

 淡い光が雪から離れ、配管を通り何も入っていない培養槽に移動する。

 

「何が起こっているでござるか?」

「俺に聞くなよ。俺にもわからないんだ」

「あたしも……わからない……あんな風にホムンクルスは生成されない」


 ゴボゴボゴボ


 淡い光が移動した培養槽に胎児が現れる。

 何も入っていないところからどうやって?

 液体の中に受精卵でも入っていて、それが急激に成長しているのか?

 凄い速さで成長を続けている。

 10分ほどたったのだろうか、すでに雪より少し幼いクローンが形作られている。


「おかしい……いくら何でも早すぎる……こんなに早くは……生成されない」


 確かにおかしい。

 ユーナが浸かっている培養槽から伸びている配管の先にある薬液だけが入っている培養槽には何も見えない。

 雪のホムンクルスに淡い光が入っていく。

 あの光の正体はいったい何なんだ?


「生成完了。強制排出を開始します」

「強制排出!? 誰も操作していないのに?」


 ナデシコが驚いている。

 

「どうした?」

「強制排出は誰かが操作するか、生成されたホムンクルスが死体であるときにしかされないの……だから、あれは……」


 死体ってことか……嫌なもんだな。

 雪の酷い姿なんて見たくも無い。


 ドシャァ


 培養槽が開き、液体ごとホムンクルスが放り出される。

 雪のホムンクルスの遺体か……せめてロッカーに入っていた白衣でも被せておくことにしよう。


 ゴソッ


「ふ……ふわぁぁぁ……」

「生きてる!」


 えっ……マジでか!

 すかさず振り向くと大きなあくびをし、眠そうな顔をしている雪のクローンがいる。


「雪……雪!」


 ナデシコが雪のホムンクルスに抱き付く。

 おいおい、冗談じゃないぞ。

 なんか、ホムンクルスのバーゲンセールになってきてないか?


「ああん……誰だよ! てめぇ!」


 ……うっわぁぁぁ……これってもう……うっわぁぁぁ案件だよ。

 まさか、せつなのか!?

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