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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
69/592

この逃走はどこかおかしい2

 欽治と黒子二人が睨み合っている。

 三人とも太刀を強く握り構えたまま動かない。

 先に動き始めたのは欽治のほうだった。


「誅武の型……」


 おぉっと、中部。

 お次は何県だ?

 

「腑苦威剣!」


 福井県かぁ。

 動きは鞘に刀を入れたままだから居合だよな?

 

 サッ!


「そんな直線攻撃当たるのは欠陥品くらい」


 ドゴッ!


「ゴハッ!」


 一人目の黒子は欽治の居合による剣撃をうまく躱したが、もう一人の脇腹に鞘による打撃技が決まる。

 

「2段……攻撃……油断し……た……」


 ドサッ


 少年漫画で見たことのある剣と鞘による2段攻撃か。

 一撃目は普通の居合だが居合の動きによる身体の回転を活かし、そのまま強く握った鞘で相手に打撃技を与える攻撃だ。

 そのうち、目にも見えない九段攻撃技とか出てくるんじゃ無いだろうな?

 だが、これで一対一になった。


 ヒュゥゥゥ

 ズガァァァン!


 また、何か落ちてきた。


「ぐぅ、TUEEE!」


 なんだ、ならず者のほうか。

 だが、気を失っていないとはタフな奴だな。

 

「ん……今はまだ増援は不必要」


 ブンッ!

 ドシャ!


 落ちてきたならず者の頭部を思い切り太刀で串刺しにする黒子。

 

「1043号も欠陥品……あんな攻撃に直撃するなんて……先に処分を開始する」


 そう言いながら倒れた黒子のもとへ寄り、刀を大きく振り上げる。


「や……やめなさい!」

「ん……無理」


 ブンッ

 ガキィィィン!


 欽治が倒れた黒子を庇うように相手の振り落とした刀を太刀で受け止める。

 

「気を失っているのに、とどめを刺す必要なんてあるんですか!?」

「肯定……欠陥品は後の作戦に支障をきたす」

「ダメです……欠陥品でも命は……あるんですよ!」


 ガンッ!


 相手の刀を弾き構えを取る欽治。

 抜刀状態だから居合技じゃなさそうだ。


「そうだった……あんたも欠陥品だった……忘れるなんて自分も欠陥品?」

「僕は欠陥品じゃありません!」


 黒子も構えを取る。

 居合……じゃないようだな。

 

 ブンッ!

 ガンッ!

 ガンッ!


 先に動いたのは黒子のほうだ。

 どうやらホムンクルスはオリジナルの動きを完全にコピーまでできていないらしい。

 太刀を持たされても振り下ろしたり、横に振ったり、後は太刀を思い切り投げつけたり、欽治が過去に使った技にも似たようなものがあったし、それの劣化版と言ったところか」


 だが、一撃はかなり重いようだ。

 剣戟の音が辺り一面に響く。


「こっちだ! こっちのほうから音がするぜ?」

「ほんまや!」


 ならず者に気付かれるよな……こんなに音が出てりゃな。

 剣戟の音で気付かれるが、ステルス状態の俺やルーシィさんは気付かれていないよな?


「そんなことは良い! あの、イカレ女を止めるんだ!」

「急に進路を変えていったい何がしたいんだ!? あの女!」


 まだ、声はそれほど遠くないが侵入者が大暴れしているらしい。

 頼むからこっちへ来ず、どこかの侵入者さんのほうへ行ってくれよ。

 

「はぁはぁ」

「体力低下……スタミナ不足……けど、戦闘続行は可能」


 欽治と黒子の剣戟も止まった。

 お互い、スタミナ切れか?

 筋力はあっても体力は無いもんな、こいつら。


「欠陥品……しつこい」

「降参したら……どう……ですか?」

「それは……無理」


 ブォン!


 太刀を思い切り投げつける黒子。

 刀って本当は飛び道具じゃないんだがなぁ、黒子の奴らは好んで使うよな。


「それを待ってました!」


 ガキィン!


 欽治はいとも簡単に飛んできた太刀を弾き落とす。

 そして、その太刀を拾う。

 武器を手放したのは失敗だったな、黒子。

 

「どれもなまくらですが仕方ないですね」


 二本の太刀を両手に持ち構えを取る。

 二刀流キタ――!


「迂闊だった……自分も……欠陥品確定?」

「急襲の型ぁ……」


 黒子も素手で構えを取る。

 まさか、ホムンクルスは素手でも殴り合えるのか?


「不苦悪禍剣!」


 福岡県!?

 間を詰めてからの袈裟斬りと逆袈裟斬り。

 エックスの字を描くように黒子に斬りつける。

 

 ヒュッ

 ヒュッ


 2撃とも後ろに下がり軽々と躱される。

 欽治、何をやっているんだ。


「避けられるのはわかっています……禁忌の型、無羅剣!」


 奈良県キタ――!

 黒子との距離がまだあるというのに、両手に持った太刀を大きく振り下ろし地面に当てる。


 ドゴォォォン!


 激しい土煙を上げ、少しの間何も見えなかったが、土煙が風で流され消えていく。

 欽治の前方数メートルほど地面に亀裂が入っている。

 いったい、どんな技だったんだ?

 俺には単に斬り下ろした剣が外れたかのように見えたが?

 黒子はどうなった?


「きゅぅ……」


 気を失っているし、身体のあちこちに何かが当たったような跡がある。

 そうか、二刀流のパワーで足元を破壊し前方に大量の石つぶてを放つ土属性の剣技ってところか?

 物理攻撃だけじゃなく、属性攻撃もできるなんて、その剣術すごすぎないか!?


 パキン


「やっぱり、なまくら刀ですね。威力も半減だし刀も折れちゃいました」

「いやいや、十分凄いだろ」

「おねーちゃん、凄――い!」

「それじゃ、急いでこの場から去ろう。また厄介のが飛んでこないとも限ら……」


 ヒュゥゥゥ

 ドゴォォォン!


「あいたたた……」


 ……いい加減にしてくれぇ!

 また、黒子が降ってきたよ!


 ヒュゥゥゥ

 ヒュゥゥゥ

 ドゴォォォン!


「1020号、重い」

「974号、下敷きになった」

「「眼前に別の侵入者らしき人物を発見」」


 うっぎゃぁぁぁ!

 次は三人の黒子じゃねぇか!

 

「お姉ちゃんが増えたぁ! やったぁ!」

「ちょ……ちょっと! 雪!」


 こりゃ、マズくないか?

 欽治の武器は今や脇差一本だ。

 あいつらの太刀を奪えばまだ勝機はあるかもしれないけど。


「1020号、974号、あそこを見て」

「1037号、1043号が壊れてる」

「欠陥品確定? 処分する?」


 またか、こいつらに仲間意識とかいう考えは存在しないらしい。

 やられた者は欠陥品で処分するというのが刷り込まれているようだ。


「待ちなさい!」

「あれ……あっちにも欠陥品」

「あれも処分?」

「もちろん、する」


 ギュン!

 ガキィィィン!


 三人同時に欽治に斬りかかる。


 ガキィィィン

 ガキィィィン


「くっ……脇差じゃ、三人相手はキツい!」


 また、太刀を投げてくれないかと思っていたが、いきなり接近戦をしてくるとは。

 これじゃ、先に欽治がスタミナ切れを起こしてしまうぞ。

 ルーシィさんのほうを見るとダリアと愛輝の目を覚まそうと、いろいろと手を尽くしてくれているようだ。

 

 ザシュ!


「痛!」


 欽治が一撃をもらってしまい、左腕から血が流れ落ちる。

 あれでは、鞘での防御はできそうにないな。

 右腕だけじゃ、黒子たちの猛攻を凌ぎきるのは困難だ。

 ヤバいぞ、何とかしなければ。

 

「どのおねーちゃんも頑張れ――!」


 ピタ


「ユキお姉様?」

「ユキお姉様だ」

「1020号、974号、違う。あれは自分のお姉様」


 三人の黒子の動きが止まり雪をじっと見つめる。

 このホムンクルスたち、雪に何か関係しているのか?


「はぁ……はぁ……はぁ」


 欽治が膝をつき、激しく呼吸している。

 雪の声かけが無ければ、ヤバかった。

 だが、これからどうする?


 ザッザッザッ


 雪のもとに歩み寄ろうとする黒子たち。

 

「ま……待ちなさい! 雪に手出しはさせません!」


 欽治が必死に声を出し、三人を制止しようとするが、どの黒子も欽治に構わず雪の近くに歩み寄ろうとする。

 

「違う……あれは自分のお姉様」

「欠陥品は後で処分。あれは1020号のお姉様」

「1020号、974号、違う。あれは自分だけのお姉様」


 欽治の声に反応しつつも、三人で口論しながら雪のもとへ歩み寄る。

 

「喧嘩しちゃ駄目だよ。何か知らないけど、みんなのだよ――!」


 ちょ、ちょっと……危ないぞ、雪!

 雪が三人の黒子と話し始める。


「お姉様、そなの?」

「否定。ユキお姉様は自分だけのお姉様」

「1020号、974号、違う。これは自分だけのお姉様」

「そんなことで喧嘩しちゃ駄目なのっ!」

「「お姉様……ごめんなさい」」


 あ、あれ?

 何か言い合っているが雪に危害を加える様子が無い。


 ヒュゥゥ


 また、何か降ってくるのか?

 けど、この方向はタワーのある方角からだ。


 ドン!


「おい……お前ら、何してやがる?」


 背後から聞き覚えのある声?

 振り向くと同時に周囲全体が凍り付いた。

 黒い胴着にサングラスの男がそこにはあった。


「あ、あ、あ……」


 欽治がまたも顔面蒼白になっている。


「まさか……あんたまで勇者に加担してるとはね……」

「ほぅ、ルーシィじゃねぇか? 相変わらず、別嬪さんだねぇ」

「使徒様だ」

「使徒様……ここにお姉様がいるの」


 な……何だ?

 ルーシィさんと知り合い?

 だが、とてもお友達って感じには見えない。

 ルーシィさんが凄い形相であいつを睨んでいるし。


「まぁ、待て。お前らの相手は後にしてやる。こっちに先客が来るからな」


 ドドドドド


 砂煙を上げながら何かがこっちに向かってきている。

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