この二人はどこかおかしい2
欽治を救出することができたし、おそらくここに居るであろうダリアも急いで見つけなければならない。
雪が目覚めたことは想定外だが欽治の言うことなら大人しく聞くだろう。
「うわぁ、おねーちゃんがいっぱいいる――!」
「え? こ、これって……」
2人は培養槽で眠っている欽治のクローンを見て驚いている。
欽治からするとどんな心境なんだろうか。
自分のクローンを見て、妙に真剣な顔つきになっている。
「許せない……」
怒っているのか?
そりゃ、そうか。
勝手に自分と瓜二つの存在が大量にいればなぁ。
アソコは無いけどな。
「な……なんで! 身体が女性なんですか!?」
怒るところはそっちなの!?
「僕はれっきとした男です! 漢です!」
なんで、二度言った?
「失礼にもほどがあります! 誰ですか! これを作ったのは!?」
命令したのはさっきの女性研究員だろうけど、今は欽治に言うことではない。
先にダリアを探さなければいけないからな。
「ここのおねーちゃん、いつ起きるの?」
「雪、それは僕ではありません!」
「う――、いっぱいおねーちゃんがいたらいつでも一緒にいれるのに!」
雪は相変わらずだ。
ホムンクルスを欲しがるとは、まぁ俺もこんな美少女だから一人は欲しいけどさ。
「とにかく、ここにダリアもいるかもしれないから一緒に探してくれないか?」
「先輩が? もしかして先輩もクローンを?」
「その恐れはあるだろう」
「わかりました」
「おねーちゃんたち、また後でね――!」
ピクッ
今、培養槽で眠っているクローンたちの指が少し動いたように見えたが雪の声に反応したのか?
頼むから目覚めないでくれよ。
この場を去り、女性研究員らが向かったさらに奥の区画に進んでみる。
「これも素晴らしい素体ですわ!」
「お気に召されたようで何よりです」
女性研究員の声が聞こえる。
欽治が培養槽を割って出たというのにその音にも気付かないとは、こいつらも馬鹿なのか?
「この娘の能力は何ですの?」
「現在分析中ですが、一ヶ月前に襲った町にてテレポートらしきものをしていたという報告を受けております」
「テレポート……魔法じゃないんですの? まぁ、どんな能力でも良いですわ! この娘、私の好みなのでぜひ、お創りになりましょう!」
何だろう。
あの女性研究員からは別の意味で凄くヤバいニオイがプンプンするのだが。
「リュージさん、あそこに」
欽治が女性研究員の目の前にある培養槽を指差す。
ダリアが中に入っている。
意外と早く見つけられて良かった。
あの女性研究員らが別の場所に行ってくれるまで待つか?
いや、上にいる愛輝とルーシィさんが心配だ。
力付くで動くか……相手は弱そうだし欽治がいれば何とかなるか。
「欽治、まずはあいつらを素早く気絶させよう」
「はい、わかりました……雪はここで待つんですよ」
「はぁい!」
声がデカい!
見つかったらどうしてくれるんだ!?
「何ですの?」
ひぃぃぃ!
雪の口を塞ぎ、身を隠す。
ダンダンダンダン
俺たちの来た方向から誰か来る。
「ホーク様、てぇへんです! 街に侵入者が!」
図体の大きいならず者だ。
こいつらは怪獣が襲ってきているから逃げたはずじゃないのか?
「しかし、侵入者って……まさか俺たちのことがバレたか? 1階で愛輝とルーシィが黒子と戦っているときに敵の増援なんてマズいぞ」
愛輝やルーシィさんはどうなったんだ?
それにホークと言うのは、あの女性研究員の名前か?
「騒がしいですわね。ここは地下にあるから大丈夫って言ったでしょう?」
「ホーク様、勇者様からのご命令をお忘れで! 危害を加えるものは……」
「この街を守るのは私の愛しいお人形さんたちに任せているので安心して大丈夫ですわ」
「それが……相手が強すぎて手も足も出ないんでさ!」
手も足も出ない?
愛輝でも勝てるかどうかわからない黒子が相手をしているのに?
まさか、他にも侵入者がいるのか?
「私の可愛いお人形さんはどうなったんですの?」
「無傷でさ! ただ、相手の侵攻をまったく抑えることができやせん!」
「相手は何百人ですの?」
「一人でさ!」
「はぁ!? たった一人を止められないってどういうわけですの! 私の可愛いお人形さんたちが無能とでも言いたいんですの!?」
「わてら防衛組も加勢したんですが、相手が無茶苦茶すぎるんでさ!」
たった、一人でここを強襲してきたのか?
よほど、腕に自慢のある奴なんだろう。
だが、騒ぎを起こしてくれているなら好機かもしれない。
「仕方がないですわね……街のどこ? まさか、ここに侵入されたんですの?」
「まだ、街の北門でさ!」
「少し、見に行ってくるんですわ。貴方たちはこの娘の能力分析をしておいてくださいまし」
「承知しました、所長」
ホークとならず者はエレベーターのほうへ戻って行った。
頼むから愛輝とルーシィさんに会わないことを願おう。
今はダリアを何とかする、絶好のチャンスだ。
「よし……欽治、行くぞ」
シュッ
シュッ
ドゴッ!
「「ぐはっ」」
さすがモブっぽい研究員、弱すぎて俺でも鉄パイプで簡単に仕留めることができた。
あとはこの培養槽だが、欽治と一緒に壊すか。
「欽治、力付くで壊すぞ」
「はい!」
その前にせっかくのダリアの裸体だ。
脳内に焼きこんでおこう。
はぁ……眼福、眼福。
お……本人でも気付いていなさそうな場所にホクロがある。
こりゃ、愛輝が大金を払って買ってくれそうな情報だな。
「よし!」
鉄パイプを強く握り、欽治と一緒にダリアが入った培養槽を叩きつける。
ガンガンガン!
ガッ!
欽治の一撃で割れないとは相当な硬さだよな。
「鉄パイプって案外脆いですね……これじゃ武器に使えないかな」
「ダリアを助けたら一度、ユーナの家に戻ろう。武器も何とかしないといけないだろう?」
「はい」
ガッシャ――ン!
「よっと!」
気を失っている研究員の白衣を剥ぎ取りダリアに着せる。
目を早く覚ましてほしいが、こればかりは何ともできないか。
ユーナとニーニャさんはここにいなさそうだし、一度ルーシィさんの元へ戻るか。
エレベーターのところまで急いで戻るが、肝心のエレベーターが24階で停止している。
ホークとならず者は24階へ行ったのか?
それなら、愛輝やルーシィさんとは鉢合わせになっていないはずだ。
すぐにボタンを押しエレベーターが来るまで待つ。
ビービービー!
シンニュウシャアリ!
シンニュウシャアリ!
警報が辺り周辺に響き渡る。
まさか、さっきの研究員らが目を覚ましたのか?
エレベーターが13階で長いこと止まっている。
まさか、誰かが乗っている!?
ここで鉢合わせしたらアウトだ。
「少し離れて様子を見るぞ」
「なんか、スパイ映画みたいですね」
「あのおねーちゃんたち、欲しい――!」
いや、楽しんでいる余裕はないから。
ガッシャ――ン!
バリン!
ガシャン!
研究所の奥から培養槽が割れる音が聞こえる。
それも一つじゃない。
いや、まさかな。
「侵入者はまだここら辺にいるはずだ!」
「全ホムンクルスを強制起動させろ!」
「起きるまで待つのも時間の無駄だ! 強制排出だ! 命令は侵入者の抹殺に設定しろ!」
気絶しているはずのモブ研究員らの声だ。
強制起動!?
ひぃぃぃ、ヤバい!
ちょっとダリアさん、いつまで気を失っているんですか!?
早く目覚めて能力を使って逃してください!





