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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
63/592

このタワーはどこかおかしい2

 服装は頭から足の先まで黒衣で覆われており何者かはわからない。

 右手には大きな太刀が握られている。

 だが、どこかで見たことがある感じがする。

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止なの」


 以前、来たときはこんな奴いなかったぞ。

 ていうか、こいつはなぜ逃げない。

 近くに巨大スライムもとい怪獣がいるだろうが。


 アーオォォン


「……ふぅ、ちょっと待ってて」


 怪獣の足がふたたび再生して立ち上がろうとする。

 目の前にいた黒子が怪獣目がけて走って行く。

 

 ズシャ!

 ドォォォン!


「あああ、高名な怪獣殿がいとも容易くでござるか!?」


 今、何をした?

 怪獣の足元を走り抜けたと思いきや、怪獣の足が再び真っ二つになり転倒する。

 遠くから見えていたとき、怪獣と戦っていた奴はどうやらこいつだったようだ。

 俺はあいつかと思っていたんだが。


「何かわからないけど今のうちに中に入るわけ!」


 ルーシィさんが見入ってしまっていた俺と愛輝に声をかける。

 そうだ、あいつは関係者以外立ち入り禁止とか言っていたし、今のうちに入らないと余計な足止めを食らうことになりそうだ。

 中に向かって走り出そうとした瞬間……。


 ギュルルル

 バコォォォン!


 足元の地面に黒子が持っていた太刀が突き刺さる。

 

「さっきも言った……関係者以外立ち入り禁止」


 怪獣の元から黒子が走り戻ってきた。

 間に合わないと思い、太刀を俺たち目がけて投げたのか?

 そんなもの投げて当たったらどうすんだよ、危ないでしょ!

 

 

「これは簡単に中に入らせてくれないってわけね……」

「むむむ?」


 愛輝が何やら考え込んでいるみたいだが、どうせ下らないことだろう。

 

「あんたたち関係者?」


 黒子が俺たちに問いかける。

 ここは正直に答えるべきか?

 いや、あの太刀筋を見てわかるがこいつは普通では無い。

 何とか戦えるであろう愛輝もガス欠気味だし、雪ちゃんは俺の背中で……。


「ずぴ――……ん……あわ……」


 あわ?

 また、なにか夢を見ているのか?


「アワビ入りコーラ……」


 だから、どんな夢なんだよ!

 あれ、背中がなんか湿っぽく……。

 ぎゃぁぁぁ!

 また、凄い量の涎でべっとり!


 ごくごくごくごくごくごく


 変態はあそこの怪獣でも飲んでて下さい!

 ルーシィが前に出て、黒子の問いに答える。

 

「あっしらはここに捕らわれている人たちを別の場所に移送するために勇者様から派遣されたわぇ」


 なるほど、勇者に頼まれたということにするのか。

 

「そう……それじゃ、身分証明カード出して」


 身分証明カード!?

 そんなの持ってないぞ。


「急な依頼だから忘れてきちゃったわけぇ。とにかく、中に入れてくんない?」

「証明できないなら無理」

「だからぁ、勇者様の直接の命令なわけ」

「マスターは何者でも証明できない者は入れてはダメって言った……だから無理」


 どうやら簡単に入れさせてはくれないらしい。

 力づくでも中に入るのもいかなそうだし。

 少し余計な時間を食うが、これしかないか。


「それじゃあ、諦めて俺たちは帰りますね」

「バイバイ」

「ちょっと……リューくん!?」


 ルーシィさんと愛輝の手を掴み、来た道を引き返す。


「リュージ殿、ダリア嬢を見捨てるつもりでござるか!」

「まぁ、俺に考えがあるから」


 一度、タワー前から引き返し適当な所で路地裏に入る。

 ちなみにタワーを覆う深い堀はあるにはあるが、タワー前だけ架け橋が降ろされている。

 タワー内にいる奴らも怪獣から逃げるために離れたってところか?

 中が無人なら、逆に助かる。

 気がかりなのは、あの太刀を持った黒子だが……。


「考えって、何でござるか?」

「ステルス!」


 俺とルーシィさん・愛輝・雪にも同じ魔法をかける。

 やはり、侵入するにはこうするしかないみたいだ。

 黒子の前でステルスをかけても意味がないし、一度どこかで身を隠す必要があるのが面倒だよな。


「それじゃあ、次は見つからないように侵入しましょう」

「リューくん、冴えてるぅ!」

「さすがでござるな」


 ゆっくりとタワーへ近付いていく。

 黒子は再び再生し始めた怪獣に対処しているようだ。

 これはチャンスだ、黒子のほうを注視しながらタワーへ向かう。

 

 アーオォォン!

 ズガァァァン!

 ズシャ!

 ドォォン!

 

 相変わらず足を攻撃し転倒させるだけだな。

 もとがスライムだから倒せないのは知っているが、攻撃することでヘイトを集めるだけのようにも思える。

 おっと、入り口はもう目と鼻の先だ。

 黒子が乱暴な奴じゃなくて助かった。

 ここにいるならず者共なら目の前に姿を現しただけでミンチにしてきそうだしな。


「やった、大成功なわけ」

「これでダリア嬢を助けられるでござる」


 良かった、侵入できたようだ。

 スリードの件もあるし、ステルスも万能ではないからな。

 しかし、今回はなんとか行けたようだ。

 入り口から中へまっすぐと進み、再び大きな像のある所まで来た。


「……誰?」


 えっ……さっきの黒子はやり過ごしたはずなのにいつの間にここへ来たんだ?


「何か気配を感じる」


 ひぃぃぃ!

 まだ見つかってはいないようだが、なにやら怪しまれている。


「うまくやり過ごすわけ」


 ルーシィさんの言う通り足音を立てず、ゆっくりと進む。


「そこ?」


 ヒュッ

 ドゴォォォン!


 俺たちとは真逆のほうだったが、また太刀を投げてきた。

 まだ、俺たちを捕捉できてはいないみたいだな。

 そのまま、慎重に進む。

 大きな吹き抜けのある場所へ出た。

 ここから地下へ行ける階段があるはずだ。


「……誰?」


 さっきの黒子!?

 いや、違う。

 ここから後ろを振り返ると、同じ格好をした黒子がいる。

 あれはさっき太刀を投げた奴だ。

 顔は頭巾で隠されているためわからないし、同じ格好をしている別の人物?

 怪獣の相手をしている奴も含めると、今のところ少なくても三人は見張りがいるってことか。

 怪獣が襲ってきてるんだから逃げろよ、お前ら。

 

「また、警備がいるでござるな」

「以前、タワーへ入ったときはほぼ無人だったんだけどな」

「とにかく、見つからないように注意するわけ」


 三人目の黒子にも気付かれないように進む。

 後ろにも俺たちを探している奴がいると、思ったとおりに散策ができない。

 ゲームなら適度な緊張感があって楽しいのだが、現実だとやっぱ怖いな。


「……そこ?」


 見つかった!?

 

 ヒュッ

 ドゴォォォン!


 俺たちの5mほど前の床に太刀が突き刺さる。

 おっかねぇぇぇ!


 コッコッコッ


 黒子が近付いてくる。

 息を殺し気配を消すことに専念するが見つかってないよね?


「……蜘蛛」


 はぁぁ、助かった。

 虫ごときでそんなに刃物投げるんじゃありません!

 当たったら危ないでしょうが!

 とにかく、まだ見つかっていないようだ。

 ルーシィさんが指で先に進めと合図をしてくる。

 黒子も向こう側へ歩いていったし、今なら進めそうだ。


「ん……まだ、気配がする」


 黒子がまたキョロキョロと辺りを確認し始めた。

 だが、地下への階段はもう目と鼻の先だ。

 

「ずぴ――、に……にんにくで歯磨き……」


 ぎゃぁぁぁ!

 雪ちゃん、こんなときに寝言、言うんじゃありません!

 

 ヒュッ

 ドゴォォォン!


「きゃっ!」


 後ろを着いて来ていたルーシィさんの頬をかすり、太刀が壁に突き刺さる。

 ルーシィさんは体勢を崩し思わず声を出してしまった。

 このままではヤバい!


「侵入者……発見……駆除開始」


 ひぃぃ、やっぱ確実に見つかっているよね!?

 黒子が脇差を抜き、ルーシィさんに目がけ走ってくる。


「力の歯車、光呟く者に荒々しき生命を与え給え……パワーアップ!」

 

 ガキィィィン!

 

 ルーシィさんが後ろで壁に刺さった太刀を手に取り黒子の飛び蹴りを防ぐ。

 筋力アップのバフをあの一瞬でかけたのか……さすが、エルフだな。

 

「それ……自分の」


 ガッ!


 刃の部分を掴み、黒子の手から血が流れている。

 こいつら、痛くないのか?


 バシッ!


「きゃっ!」


 太刀を握っているルーシィさんの手を蹴り上げる黒子。

 ルーシィさんが思わず太刀を手放してしまう。


「関係者以外立ち入り禁止……無関係者が中に入った場合……抹殺」


 グンッ!


 奪い返した太刀を振り下ろす黒子。

 このままじゃ、ルーシィさんがヤバい!

 

 ヒュン!


「あれ……消えた?」

「ふぅ、紙一重でござったな」


 ナイスだ、愛輝!

 ルーシィさんの後ろで気配を殺し見ていた愛輝がルーシィさんを助ける。


「大丈夫でござるか?」

「や、やだ……イケメン」


 いや、確かにガス欠の愛輝はイケメンだけどさ!

 今はそっちじゃないでしょ!

 ルーシィさんが頬を赤らめてお姫様抱っこをされている。

 

「ダリア嬢を救うのが先決でござる。ここは吾輩が何としても食い止めるでござるから、先に進むでござるよ」


 いや……それはダメだ。

 愛輝、一人でどうこうできる相手ではない。

 それに痩せている愛輝はあと数分くらいで限界に達して空腹で倒れてしまうだろう。


「……侵入者二人だったんだ。気付かない自分は廃棄処分?」


 廃棄処分?

 何を言ってるんだ?

 ああ、クビにされるってことか?

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