表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
61/592

この魔界はどこかおかしい7

 魔王城って、ラスボスの本拠地じゃないか!

 それってつまり魔王がいるところだろ?

 まさか、魔王に会いに行くつもりなのか?

 

「ルーシィ殿、その姿ではもしものときに危険ですじゃ。これを使ってくだされ」

「ありり~、ンマンマ。じゃ、行ってくるわけぇ」


 村長が顔を隠せるように大きな布を渡してくれた。

 ルーシィさんが俺の手を取りテレポートをかける。


 ヒュン 


 やって来たのはこの大陸のほぼ中心地。

 ルーシィさんが手に持った地図で場所を示してくれた。

 少し歩いたところで大きな都が見えてくる。


「あれが魔王城を中心に広がる城下町、ヘーアン京よ」


 ヘイアンキョウだとっ!?

 街も豪華絢爛で、この荒野に似つかわしくない程道、路も綺麗に整備されている。

 確かに碁盤の目のようになっているし、中央に他の通りより間隔がかなり広い通りが南北に伸びている。

 平安京でいうところの朱雀大路って感じだろうな。

 中央の通りを南の方角に目をやると、他の建物より大きく立派な建物がある。

 

「一番奥に見えるあれが魔王の住んでる魔王城ってわけ」

「いかにも悪魔が好みそうな形をしていますね。それで、これからどうするんですか?」

「ん――、いくら顔を隠していても都の中に入るのは危険だしぃ……」


 いまいち、はっきりとしないルーシィさんだが俺に見せたいものがあるんじゃないのか?


「よし、こっちに付いてくるわけ」

「は……はい」


 ルーシィさんの後をついて都を背に荒野を進んで行く。

 20分ほど進んだであろうか、一つの村が見えてきた。


「あの村で情報収集するわけでぇ」


 村の入り口に来ると酷い光景が広がる。

 住人は瘦せ細り、骨がそこら中に落ちている。

 腐臭だろうか、悪臭もかなり漂っている。

 こんな村まであるなんて……ここに滞在しすぎると病にかかってしまいそうだ。


「さっきのンマンマたちは村から逃げ出した人たちなわけでぇ……」


 あの村長や他のゴブリン・オークも重税に耐えられずに逃げ出した人たちだったのか。

 そういえば、歴史の授業で奈良時代とかはそういう人たちがいたって聞いたことがあったな。

 ここの人たちは逃げる勇気も無く、重い税を搾取されている人たちってことか。

 

「お姉ちゃん……食べ物……持ってない?」


 一人の子オークがルーシィさんに近付く。

 この子も痩せ細り、とてもオークらしくない感じがする。


「ゴメンね。持ってないわけ……」

「俺がチョコ持って……!」


 ガバッ


 ポケットに常備しているチョコを取り出した瞬間に奪い取られ、躊躇無く口に入れる。


「す……少ない。もっと!」

「い、いや……ごめん。今ので終わりなんだ」


 子オークはがっかりしたようで俺たちから離れていく。

 

「見ているだけでも良い気しないわけ」

「……ですね。こんな思いをするのも魔王がいるからなんでしょう?」

「魔王もね二代目なわけ。だから魔王なんかじゃない、親の七光りで粋ってる単なるバカなわけよ」

「なんで一代目の魔王が復活したときにアルス大陸に侵攻しなかったんですか?」

「アルス大陸の二代目がやり手っていうのもあったんだけどね。どうやら新しい魔王さんは外国より国内で搾取したほうが良いって思った歴代最悪な魔王ってわけ」


 自分さえ良ければいい自己中魔王か……アルス大陸に攻めないのは助かるが、それでこの大陸で身分の低い者が虐げられている。


「同じ魔族がこんなに苦しんでいるのにですか?」

「さっきのあの豪華な都見たでしょぉ? あそこに住んでいるのは魔王と魔王の配下、七柱だけよぉ。あとの住人は全部、自分たちを世話してくれる者ってわけでぇ。都以外に済んでいるのは自分たちに貢いでくれる奴隷以下の存在なわけぇ」


 勇者といい、魔王といい、自分たちの大陸で好き勝手にやっているわけか。

 いや、勇者は先遣隊がいたから戦う気はあるのだろう?

 まさか、世界征服を企てているとか……有り得そうで怖いな。

 

「何を寝てやがる! 今日はジラザード様の視察の日だぞ! きりきり働け!」


 村の奥から大きな怒声が聞こえる。

 

「ちょっと見に行くわけ」


 しっかりとンマニエル村長から貰った布で顔を隠し、声のするほうへ行ってみる。

 痩せ細り、今にも倒れそうな感じのゴブリンやオークが鍬を振り下ろしている。

 開墾している途中なのか、まだ田んぼというには程遠い荒れ地の土を何十人もの痩せたゴブリンやオークが耕している。

 それを椅子に座り偉そうに指示している肥満体系の悪魔がいる。


「今日中に新しい田畑を100㎡は作るぞ! 明日からはさらに税の爆上げだ! 喜べ愚民ども!」


 今日中に100㎡を開墾?

 無理だろ、あんな手作業じゃ徹夜したって10分の1も終わるはずない。

 

「あの偉そうな奴に気付かれないように去るわけ」

「で……でも」

「今は我慢するわけよ、リューくん」


 ルーシィさんの目が怒りに満ちている。

 俺だって、こんなに胸糞悪く感じるんだ。

 ルーシィさんだって同じか。

 村から離れ、近くの森の中で休憩する。

 雪をずっとおんぶしていたから、背中が体温でかなり湿っている。

 いや、それだけじゃない。

 涎がまたすげぇぇぇ!


 ごくごくごくごく!


 こらっ、ごくごく民は消えろ!

 今はシリアスな場面なんだ!


「……さっきね、畑を耕していた連中」

「え?」


 ルーシィさんが悲しそうな目で語りだした。

 

「助けようと思ったけど、あの偉そうな奴はヤバいわけ」

「そういえば、さっき都に住んでいるのは魔王と七柱って……その、七柱って何ですか?」

「勇者側の使徒たちと似たような奴らなわけよ。偉そうにしていたデブ悪魔はその中の一人の使いだと思う。へたに手を出したら、あの村が消されるのは確定なわけ」


 使徒と似た存在か。

 ルーシィさんが助けられなかったということは相当強い奴らなんだろう。


「さて! こっちの様子も再度確認できたし帰るわけ! リューくん、今回のこと自分の中でじっくり考えてみてね!」


 ルーシィさんが俺に顔を近付け、改めて俺に決意を促すように言う。


「はい……考えておきます!」

「よしよし! それじゃぁ、次はユーナちゃんたちを助けないとねぇ」


 はっ、しまった。

 そういえば、俺が気を失って1か月ほど経っているんだった。

 まさか、すでにニーニャさんたちはならず者共にすぅんごぉぅいことを……?

 い、いやだ!

 それだけは絶対に許さん!

 だが、首都グレンに行くことになるのか。

 

「まずはジョンちに寄ってからなわけよ」


 ルーシィさんが雪をおんぶし、俺の手を掴む。

 

 ヒュン


「ジョン――! 今、帰ったわけぇ」

「畑でしょうか?」


 家には誰も居ない。

 ユーナが魔法で増築したおかげで、広い空間にルーシィさんの声が響き渡る。

 

「そうみたいねぇ」

「おお、リュージ殿ではござんか!? どこに行っていたでござる!?」


 ……目の前に全身ミリタリーファッションのイケメンが立っている。

 あの、どなたでしたか?


「え……えっと、誰だっけ?」

「リュージ殿!? まさか、桃園の誓いを忘れたでござるか!?」

「あ、ああ! 愛輝……だっけ?」

「そうでござるよ! 隣町で小腹を満たした後、急いで戻ったらダリア嬢たちがいなかったでござるよ! いったい、何があったでござる?」


 そういえば、スリードとの戦いのとき、こいつは一時戦線を離脱したんだよな。

 腹が減ったという理由だけで。

 なのに、急いで戻っただぁ?

 お前の速さじゃ、1時間もあれば往復できただろ。

 倒れている俺を家に連れてきてくれたのはルーシィさんなんだが、まさか俺に気付かなかったのか?

 血を出して地面に倒れている俺を見落としたのかと問いたい。


「おっと……そういえば、リュージ殿はなんでトマトジュースをこぼして気絶していたんでござるか?」


 トマ……って、ちょ待っ……俺の大量出血だぁろうがぁ!

お読みいただき、ありがとうございます。

続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします。

評価はこのページの下側にある【☆☆☆☆☆】をタップすればできます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ