このラスボスはどこかおかしい16
「二人共、神はお怒りだよ。そして嘆いておられる……周囲の星々を傷つけてしまうことに……」
何を突然……ってまさか!?
「柱が居ないのなら過程をすべて飛ばしてこの星を破壊する!」
ぎゃぁぁぁ!
やっぱそうくるよね!?
「大丈夫や、見つけられるだけの生き物はすべて地球に飛ばしているで」
「ん、ミミのアドバイスのおかげ」
ポワポワ村に誰もいないのもそのためだったのか?
それでも取りこぼしの人々は居るはずだ。
ダークエルフやドワーフたちのように隠れ住んでいる者たちはまだまだ多い。
やはりこの星の破壊を黙って見過ごす訳にはいかない。
それにナデシコが俺を助けて跳んでくれるとは限らないしな。
「この星を壊しかったらどうぞ。でも、その前に欽治は返してね」
やはりナデシコは欽治の奪還だけが目的か。
ま、破壊神を祓いさえすればこの星も守れるだろうし今はナデシコと協力して欽治を助け出す。
「ドレイク、戦いながらバハムートの教えを実践して。あたしは奴の牽制に集中するから」
「えっ、お前が前に出てくれないのか?」
「物理攻撃では欽治の肉体に傷を付けるだけ」
そうか、取り憑かれているのなら魔力や神力のある攻撃でなければならない。
だからドラゴンスタイルなのか。
『こんな使い方、エレメンタルチェンジで属性神状態では無理ね』
『おいらは何処に行けばいいにゃ』
『自分は絶対に右腕ッス! ストレートでぶっ飛ばすッス!』
龍神たちも最適解を考えてくれているがこれを使うにはノーマルフォームでなければならない。
つまりステータスが一般人より少し強い程度の状態だ。
一撃でも破壊神の攻撃を喰らえば即アウト……覚悟が必要だ。
「あは……そっちが反則行為ならこっちだって」
ブンッ!
地面に向けて刀を大きく振り下げる破壊神。
俺たちとは戦わずにこの星を消すつもりか!?
「させない!」
ガキィィィン!
「くっ! 重い……」
「あはははは! この星が終わればこの身体も不要! 木端微塵な状態でも良ければ返してやるよ!」
ビシッビシビシビシッ!
破壊神の一撃をまともに受け止めるナデシコも流石だが武器を振り下ろしている破壊神の方が重力的には有利だ。
「させるかぁ! フレイムアロー!」
ボゥ!
ヒュッ
「ちぃっ!」
破壊神が避けてくれるおかげで今の危機は脱した。
今度は向こうが俺たちにお構いなしで星を破壊しようとするしもはや戦いという状態ではない。
ヒュン
「避けた後が危険だよ。神倒の型……神哭牙環剣!」
破壊神の頭上からナデシコが唐竹割り。
だが、欽治の身体を傷つけまいと本気ではないのが分かる。
いきなりチャンスがやってくるのは嬉しいが俺に出来るか?
「あっは……視えてるって!」
ガキィィィン!
『ドレイク、2属性程度ならいけるはず!』
『ワタシが左腕デース!』
『だったら自分が右腕ッス!』
師匠が独自に編み出した戦闘スタイルにバハムートスタイルがある。
そもそもバハムートは魔法が使えないため属性戦前提のバトルではどうしても不利になってしまう。
そのため師匠が考えたのが自身の身体の一部分に属性スライムを装備する方法だ。
だが一撃が相手に当たるごとに属性スライムが爆散してしまうため新たに付け替える必要がある。
だが龍神の力を持った俺に師匠が独自に考えてくれたのがドラゴンスタイル。
ノーマルフォームで身体の肢体にそれぞれ別の龍神を宿す。
いわゆるエレメンタルチェンジの龍神同時接続……かなりの集中力を必要とするため実践で試すにはあまりにも不向きすぎる。
『ドレイク、もっと両腕に集中させるにゃ!』
「集中……」
『パパならできる!』
『ドレイクしゃま、頑張って!』
『ドレイク様、貴方様ならばいけます!』
ああ、うるせぇぇぇ!
応援してくれるのは嬉しいけど逆に集中できないってばぁ!
バキッ!
「……僕の刀がっ!?」
「ん、武器破壊」
欽治の持っている太刀が綺麗に折れる。
ナデシコは俺が少しでも戦いやすいように状況を変えてくれるようだ。
……属性付与をナデシコにしてあげれたらその方が早そうなんだよな。
でもそんな魔法存在しないし……ドワーフ国で見たエンチャント済みの武器の作り方を聞いておけば良かった。
『ドレイク、集中!』
土龍神にお叱りを食らってしまった。
集中しなきゃな……うん、俺がやるべきことは欽治の身体から破壊神を祓うことだ。
「左に水龍……右に炎龍……」
ドゴッ!
「ん、武器無しでもやっぱ強い」
「あはは、翔慟賦剣の真髄は心にあり武器に頼るなだったけ?」
「そう、やっぱり欽治の記憶はあるようだね。でも、さっきから技名を叫ばないあんたは翔慟賦剣を使うべきじゃない」
「だってダサいじゃん」
うん、俺もそう思う。
じゃなくて……集中集中。
「技名を叫んでこそ剣術なり……翔慟賦剣で最も重要な掟を破るなぁぁぁ!」
そうだったの!?
単に格好つけているだけだと思ってたわ!
ヒュン
「誅武の型、戯浮剣!」
ナデシコが破壊神の真下に跳び込み破壊神の顎にかけて太刀を突き上げる。
「そうくるか。でも本気でかかってこないと……」
スゥゥゥ
ナデシコの動きに合わせるように移動し彼女の背後を取る破壊神。
「! その動きは……しまった!」
ドゴッ!
「かふっ!」
ヒュゥゥゥ……ズガァァァン!
ポワポワ村の廃墟に激突するナデシコ。
「神倒の型、裁絶魔剣だったかな? ああ、刀が無いから裁絶魔拳か」
カウンターで相手の破壊力を利用し放つ技だったよな。
太刀が無くても使えるってマジかよ。
ヒュン
「やっぱり技名を叫ばないあんたの翔慟賦剣は大したことないね」
無傷ってか関節がおかしな方向を向いて太刀で受け止めたのか?
なんか若干ホラーっぽいぞ。
「あはは、機械の身体か。肢体の可動域に限界が無いのは便利そうだね」
「ん、この身体になって更に翔慟賦剣の高みに目指せた感じ」
「でも僕に触れたらお終いなの分かってる?」
「ん?」
「ブレイク」
バラバラバラ……
ナデシコの持っていた太刀が粉々に砕け砂のように変わり果ててしまった。
そうだ、奴は間違っても破壊神。
壊すことにおいては奴のほうが上。
技の威力に加えて特殊能力が付与されているか、厄介極まりないな。
「刀で受け止めておいて良かったね。次はその義体すべてが壊れるよ」
「大丈夫、この身体は代わりがきく」
ヒュン
再びナデシコが跳ぶ。
……………うん、現れない?
何処に行った?