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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神の先にあるもの
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このラスボスはどこかおかしい2

『ドレイク、ユーナちゃんが行くなって』


『全く聞こえていないにゃ。頭プッツンしているにゃ』


『冷静さを失うとは……まだまだです』


『自分もそう思うッス』


「欽治ぃぃぃぃ!」


 渾身の力を込めて縮地で欽治に接近し頬を殴る。


 ドゴォォォ!


「お前ぇぇぇ、何してんだ!」


「あれ……誰?」


 俺の渾身の力を込めて殴ったパンチもまるで効いていない。

 しかし、欽治は正気に戻ったのか俺が誰だかは分からないようだが俺という個を理解できている。


「ドレイク……どうして、ここに居るのですぅ?」


 師匠は俺の見た目が変わっても簡単に見抜くのな。

 ドラゴン特有の鋭い嗅覚で俺がドレイクだと理解したのだろう。


「父ちゃん! ファフが……」


「ニーズ、入り口に連れていけ。そこにいる女の子が治療してくれるはずだ」


「う、うん!」


「師匠もユーナが来ているので治療を」


「そ、そうですねぇ……これはさすがに激痛ですぅ」


 それにしてはあまり痛がっていないように見えるが慣れているだけかな?

 欽治にはどうしてこんな状況になったのか問い詰めなければいけない。

 ま、狂乱状態であった以上は記憶していないだろうけど。

 知らぬ存ぜぬでは許せない状況なのは確かだ。


「欽治、お前が何をやったのか話して……あれ?」


 隣りにいた欽治の姿が無い。


「あは……」


 ドシュ


「ああああああ、ニーズ!」


 振り返るとニーズとファフが血だらけになり倒れている。

 何があった?


「ドラゴンはすべて僕が狩るんだ……あははははは!」


 狂乱状態が治ってなかった!?

 いや、そんなことはない。

 俺が殴った時、俺だと理解できていた。

 

「なんてことをするですかぁ!」


「あっは」


 ザンッ


「いっ!」


 師匠が欽治に再び殴りかかるがカウンターを受け両足を切断される。


「師匠!」


 縮地で師匠と二人の子どもに近づき抱き上げ欽治から距離を取る。


「なんて強さですぅ……物理攻撃で拙が手も足も出ないなんて」


「と……父ちゃ……」


 良かった、ニーズもかすかだがまだ意識はある。

 だが、ファフの身体はかなり冷たい。

 魂が身体から出ていっていないからまだ生きてはいるがそれも時間の問題だろう。


「あははは……これで動けない。これで世界の柱は……」


 欽治?

 今、わずかだが欽治から他の気配を感じた。

 雪と同様に欽治も二重人格とか……有り得そうで怖いな。


「お兄様!」


「ユーナ、師匠たちを治療してくれ」


「た、助かるですぅ。先に拙の子どもたちを」


 ユーナが俺のもとに駆け寄ってきた。

 遺跡の入り口で隠れていろと言ったが今は来てくれて助かる。

 

「師匠、傷が治ったらここから急いで離れてくれ」


「ドレイク……」


 俺は治療中の三人を守るため雷神化し欽治に近寄る。

 これで次は俺の目を盗んで師匠たちに攻撃をかけられないだろう。


「あは……あははは……」


 狂乱状態の欽治だよな?

 ずっと俯いているが不気味な笑みを浮かべているのは分かる。

 

「欽治! いい加減、正気に戻れ!」


「あっは……」


 俺の方を見る欽治。

 目がまともじゃない。

 純粋で綺麗だった瞳が異常に曇っている。

 

 ヒュッ


 欽治が俺の視界から消える。

 だが雷神化している俺には動物の筋肉を動かすときに発生する微弱な電気の流れが手に取るように分かる。

 動物である限りそれは絶対に避けられないことだ。

 欽治め、また俺を無視して今度こそ師匠にとどめを刺すつもりなのだろう。


「行かせねぇって言ってるだろ! ライトニングボルト!」


 バチッ


「あははは、やるね」


 今度は止めることが出来た。

 欽治は俺の魔法を剣で受け止めるがその威力により体制を崩す。


「よっ……とと」


 やはり別の気配を感じる?

 狂乱状態の欽治はずっと笑っているだけだった。

 それがさっきの攻撃では俺に話しかけていた。


「お前、欽治か?」


「あは……あはは……」


 納刀し俺の方を向く欽治。

 特に構えもしないとは舐められているのか、ドラゴン以外には興味が無いのか。


『あいつ、なんかおかしいわ』


『感じたことの無い気配だにゃ、背中がピリピリするにゃ』


 思念体のお前に背中なんか無いだろってツッコミたいが後にしよう。

 アナライズでステータスを見るが欽治そのものだ。

 だが、さっきより強く別の者の気配を感じる。


「欽治、意識を取り戻しなさい!」


「あ……れ……女神……様?」


 ユーナがニーズにヒールをかけながら欽治に声をかける。

 その声で別の者の気配がスッと消える。


「欽治、そこを動くな! 動くと……分かるな」


「父……ちゃ……ん」


 欽治に向け魔法を放つ仕草だけ見せ問いかける。


「父ちゃん? ええっ、ドレイクさんですか?」


「そうだ、欽治。お前、自分が何をしたか分かっているのか!?」


「えっ?」


 狂乱状態でやはり覚えていないのか辺りを見回している。


「ああ、そうか……僕……」


 自分が仕出かしたことに驚愕したのか俯き涙目になっている。


「欽治、この責任をどう取るつもりだ?」


「僕は……僕は……」


 欽治はこの世界に来てから出来た大切な友人だ。

 それに五年間は俺の弟だったわけだし、罰として懲役五年が無難か?

 

「お兄様、いけない!」


「ドレイク!」


「えっ?」


「僕は世界を壊す!」


 欽治が凄まじい速度で抜刀し俺に斬りかかる。

 迂闊だった、欽治が正気に戻ったのを安心して罰をどうすればいいかで一瞬、気を逸らしてしまった。


 バチッ!


 雷神状態であの動きを捉えるのがやっとだなんて速すぎるだろ!?

 少しだが頬に剣先が掠ってしまったぞ。

 

「あははは、今のを避けるなんてドレイクさんもできるようになりましたね」


 まただ。

 欽治から別の者の気配を感じる。


「お前……誰だ? 欽治じゃないな?」


「あっは……イリュージョン」


 ブォン


 イリュージョンだとっ!?

 あのおつむの弱い欽治が魔法を使えるはずがない。

 自分の姿を変える魔法で欽治が変化したのは……。


「久しぶり! 兄ちゃん」


「キンジ……」


 ヒメによって転生したときに俺の弟としてピグミーに育てられた欽治だ。

 バッグベア戦で転生前まで戻され以前の欽治に戻ったため俺が兄だったことなど記憶にも無いはずなのに……どうして?


「お前……どうして? いや、違う。お前は誰だ!」


「あは、破壊神だよ。兄ちゃん」

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