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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神の先にあるもの
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このタウンはどこかおかしい5

 暫く待つと町の中から幼女がやって来る。


「おや、ウンディ様。このような場所に何か御用ですかな?」


「衛兵のおじちゃ――ん、パパがここに居るってママから聞いたの」


「ドレイク様? いや、おりませんが……」


 領民に対して高慢な態度では無い。

 以前のウンディからは考えられないことだ。

 

「ウンディ、こっちだ」


「あ、パパ――! 随分とおっきくなったねぇ」


 普通は大人が子どもに言うセリフなのだがそれを自分の子に言われるとは……。

 

「えっ? この青年がドレイク様!?」


「はい、ドレイク様ですよ」


「あ――また新しい女をたらし込んでる! 私と言う可愛い娘が居るのに! パパ――!」


「いや、この子は……」


「ドレイク様、私はユーナさんに早く会いたいです」


「そう、ユーナの友達なんだよ! だから変な意味は無いって!」


 ナイスだ、エターニャ!

 助かったぞ。


「ユーナちゃんの友達? 後で聞けば良いし今は信じてあげる」


 ふぅ、助かった。

 さてとこの町も久しぶりだな。

 もう以前のような中世ヨーロッパの街並みではなく現代ニューヨーク風と表現したほうが良いほどの発展ぶりだ。

 ホークのやつがこの街の開発に何年も前から取り掛かっていると聞いたし、こんなサイバーチックな街になってもおかしくはないけれど……ちょっとネオンが派手すぎるぞ。

 

「おハロー、ウンディ様」


「ウンディ様、ちょりーす」


 次から次へとウンディの下に人間やエルフたちが集まってくる。

 慕われているのは良いことだがこんな短期間に何かあったのか?

 ゴブリンやオークなど魔族はグランディアの頃からウンディを知っているが、人族はウンディのことはおろか母親のルカのことだって知らないはずだ。

 

『ドレイク様、ウンディには会えまして?』


『ルカか、これはどういうことだ?』


『何のことですの?』


『ウンディが人族に信仰されるにしては早すぎるような気がするのだが』


『ああ、ユーナ様のおかげですわね。ドレイク様、グランディアの被害報告なども話したいのでお時間をいただきたいのですが……』


『そうだな、俺たちの住む場所ってあるのか?』


『はい、もちろんございますわ。では、そこまでウンディに案内させますわね』


 その後、エターニャを連れウンディと共に屋敷へ向かった。


「パパ――こっちこっち」


「それにしてもドリアドの町の原型が無くなっているな」


「はい、ニーニャの記憶とは全く違っているので別の街に居るようです」


 それ以上に人族と魔族が共存できるのが何よりで安心しているがな。

 俺の目の見えないところで問題が起こっているのかもしれないし、そのこともルカに訪ねておく必要がありそうだ。

 ま、俺はまたこの町を離れることになるがこの様子ならルカたちに任せておけば良いだろう。


「ドリアドの町じゃないよ、今はユーナタウンって呼んでいるの」


「ユーナタウン!? どうしてユーナが街の名前になっているんだ?」


「えっ、ついに実現してしまったのですか? それは素晴らしいことです」


 エターニャまで喜んでいる!?

 ちょっ、ユーナが町の名前に選ばれるなんてまるで国王みたいではないか。

 う……羨ましくなんてないよ!

 兄として心配しているだけなんだからね!


「ニーニャさんの記憶で何か知っているのか?」


「ええ、ユーナさんの母親の世代からずっと結界の維持をしていただいているので町長であったおか……ルーシィがユーナさんを次の町長に推薦していて、町名もその時に町のみんなと考えたことがあるようなのです」


 そんなことがあったのか?

 ユーナ自身から聞いたことが無かったがあいつはドリアドの住民全員から好かれていたし、今でも住民の生き残りやその子どもが多く暮らしている。

 グランディアでもユーナの人気が何故か上がっていたし、これは自然な成り行きなのかもしれないな。

 でも、ユーナ本人は喜んでいるのだろうか?

 以前のユーナなら喜んでいるどころかその立場を最大限に利用して他の街にまで自分の名声を広げようとするのは何となく想像がつく。

 だが今のユーナは育ちの良いお嬢様のようで俺も正直、別人だと錯覚するほどだ。


「ウンディ、その町名をユーナは承諾したのか?」


「ユーナちゃんは住民が平和で幸せになれるのなら構わないって言ってたよ」


 マジか……みんなの幸福を願うなんて、なんて良い子に育ったんだ!

 お兄ちゃんは嬉しいぞ!


「ああ、ユーナさんに早く会いたいなぁ」


「次のブロックを右に曲がれば見えてくるよ」


 街の中心地から離れていく。

 ここから見える勇者城のようなタワーでは無いようだ。

 

「ウンディ、あのタワーは?」


「ホークが建てたデザイアキャンセラーのこと? どんなものなのかはウンディも知らないの」


 デザイア、欲望のことか?

 それをキャンセルする?

 まさか、ホークのやつ人々の悪い想いを神族に流れ込まない装置を作り出したのか?

 ……科学では説明の出来ないものまで装置化するなんてさすがはホークだ。

 数十分ほど歩いたところでタワーマンションが立ち並ぶブロックに辿り着いた。

 ドリアドの町だったころより町の面積も相当広がっている。

 ま、人口が増えたから当然と言えば当然か。


「あそこの最上階だよ――」


「へぇ、住民と分けずに一緒のマンションに住んでいるのか」


「ユーナちゃんが神族も人族も魔族も区別されることがあってはならないってママに言ってたよ。だから、あのフロアより下層は誰でも住めるの」


 ユーナぁぁぁ、お兄ちゃんは嬉しすぎて泣いちゃいそうだよ。

 そこまでお利口さんになるなんてホークの教育術も後で聞いておこう。

 

「上層階のほうで空きはあるか?」


「ママに聞いたら分かるよ」


 エレベーターで最上階に向かい室内に入る。

 うわぁ、見晴らしが最高だな。

 

「ここが新しい住居かぁ……良い所だな」


「うん、パパとママとウンディの!」


 おやぁ?

 ちょっと待てよ。


「ローズやガイアの部屋は? あと、ユーナはどこだ?」


「ユーナちゃんは隣の3602号室でホークと一緒に暮らしているの。ローズ様はあそこに見えるタワーマンションだよ」


 ふぁっ!?

 ローズたちだけ別のマンションだとっ!?

 ルカめ、また策を弄してローズを除け者にしやがったな!

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