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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神の先にあるもの
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この雷はどこかおかしい13

 身体が熱い。

 意識も朦朧としている。


「はぁはぁはぁ……か、母様」


「エターニャ、意識が戻ったのね!? 神様がすぐに水を持ってきて下さるわ」


 母様が膝枕をしてくれているのは何となくだけど分かる。

 空が赤いのはどうしてなのだろう?

 伝わってくる熱から森が燃えているのかな?

 そっか、神様でも森を守るのは無理だったんだ。

 

「母様、熱い……熱い」


「大丈夫よ。しっかりと気を持って」


「はぁはぁ……かあ……」


「エターニャ!」


 再び意識が遠のいていく。

 母様、ごめんなさい。

 私も死んじゃうのかな?


「エターニャ! エターニャ! いやぁぁぁ!」


 ………………。

 ここは?

 村には存在しないどこかに私は立っていた。

 とても賑やかな場所だ。


『ぷはぁ! やっぱクエストの後のビールは格別だぜ!』


『今日の稼ぎはたったの10か……』


『ぎゃはは! そりゃ討伐したのがキャマドゥマだからな!』


『だってあんな気持ち悪いの剣で触れるのも嫌だし……』


 色んな種族が居る。

 話には聞いていたけれど、あれが人間?

 ウサギの耳を持った兎人族も他にも村長から聞いた種族がいっぱい居る。

 ここがお店っていう場所なのかな?

 

『ニーニャん! ねぇ、ニーニャんってば! 素材持ってきたわよ?』


『えっ?』


 私は店内のカウンターに立っていた。

 正面にはモンスターの素材を持ってきた少女と男の人が一人。

 

『ユーナさん、今確認しますね。リュージさんもお疲れ様でした』


 私は何をしているのだろう?

 ニーニャと呼ばれて反応してしまった。

 そして手慣れた様子でモンスターの素材の数を数えてから円形の鉱石をいくつか少女に手渡す。

 この数字が書かれた円形の鉱石がお金というものなのかな?

 村長の家で見せてもらったことがあるのと似ている。

 

『本当に死にかけましたよ。おい、ユーナ今度騙したら……』


『はぁ? 騙してなんていないでしょ。単なる素材集めの最中に見つけた害虫じゃない』


『アレのどこが虫だ! ほとんどモンスターだろうが! あんなでかいミミズなんて俺は見たことも無いぞ! 危うく地面に出来た穴に落ちそうになったし!』


『あららぁぁ、もしかして怖かったの? やだぁ、男のくせに情けない』


『くすくす、リュージさん大丈夫ですよ。アースワームは身体が大きいだけで何もしてこない虫ですから』


『あんなのが大量発生だなんて不愉快極まりないわ! 女神の私が一匹残らず駆逐してやるんだから!』


『今度からはお前だけで行ってくれ』


『ん――明日はこれとか良いかも? ビッグモス退治だって』


 なんだろう、とても楽しい。

 両方とも初めて見る人間なのにとても親近感すら覚える。

 男の人のほうは何だか神様に似ている感じがするのはどうしてなのかな?


 パッ


 突然、目の前が暗くなり母様の声が聞こえてくる。


「エターニャ!」


「はぁはぁ……あれ? か、母様?」


 目を開けると焼け野原となった村が眼前に広がる。

 さっきのは夢?

 そういえばニーニャって神様が言っていた人の名前だ。

 確か私の前世がどうとか、意味がよく分からなくてさっぱりだったけれど。


 ズズッ……


「か、母様……あれって」


 空に黒い粒子が集まっていくのが見えた。

 何とか頑張って腕を動かし指を指す。


「えっ? あれって……闇属性?」


 徐々に形が形成されていくがとても不安定で潰れかけの泥人形のようだ。

 

「や……やってくれたわけぇ! リュー君……いや、ドレイク!」


「そ、村長の姉君? 本当に人形だったの!?」


 この村を酷い目に遭わせた張本人だ。

 顔だけははっきりとしているが身体が黒い泥のような状態でとてもエルフとは言えない状態だ。

 村長や父様だけでなく森ごと跡形もなく消したのは間違いなくこの人だ。

 神様が倒し残った?

 

「くそ! ほとんどの闇が消滅したせいで身体が再生できないわけ! このままじゃ……うん?」


 こちらに気付かれたのか目が合ってしまう。

 すると不敵な微笑みをしてこっちに向かってきた。


「あは、あはは……これはなんてツイてるわけ。これであっしは蘇生できるしぃ」


「娘には手を出さないで……今、貴女の出した炎のせいで熱を出してしまってかなり深刻な状況なの!」


 母様が私を守ろうと彼女の行く手を塞ごうとする。

 

「うっさい! あっしだって死にかけなんだから邪魔をするな!」


 パンッ!


「キャッ!」


「か……母……様」


 母様がエルフに叩かれ地面に倒れ込む。


「闇に堕ちない? あっしの身体を形成するだけで限界ってわけ? こりゃ、急がないとまずいわけね」


 バッ!


「エターニャは私の娘なの! 指一本触れさせないわ!」


「ええい! マジでウザい!」


 母様が必死にエルフにしがみつき行く手を阻む。

 少しずつ母様が黒く変色していく。

 父様や他のダークエルフたちがあのエルフに触れたときのようなことが起こってきている?


「あんた、マジで離さないと死ぬわけよ! それでもいいわけ!?」


「エターニャを守れるなら! 神様がもうすぐ戻ってきて下さるわ!」


 母様が死んじゃう?

 嫌だ、嫌だ、嫌だ!

 神様、母様を助けて!


『ニーニャ』


『ニーニャくん』


『ほらほら、勇者の仲間がそんなことで凹まないっての』


『君の空間魔法のお陰で手荷物が少なく済んで助かっているよ。それに弓の名手ときたもんだ。我々の大切な仲間だよ、君は』


『本当に俺にも空間魔法教えてくれや』


 空耳?

 違う、頭の中で声が聞こえる。

 勇者一行……かつての仲間?

 私が知らないはずのことが何故か記憶から呼び起こされる。


『まさか、この村を発見できた者が居るとはね』


 村長だ。

 誰かと話している?


『なるほど、猫人族特有の気配感知能力か。雷神様が何もしてこなかったということは悪意ある者では無いのでしょうね』


『村長! ですがこの村を見られた以上、排除すべきです!』


 父様?

 周囲には私を物珍しそうに見てくる村民が居る。


『修行? 好奇心でここに来たわけではないと?』


『自分の危険も顧みずノコノコやってくるとはとんだ愚か者だな!』


『村長様、この者は雷神様がお認めになったのでしょう? でしたら、50年ほどここで生活をしてもらうのは? 他種族であろうと私たちと同じ人族です。殺してしまっては過去に私たちダークエルフを排除した白エルフたちと何ら変わらない……』


『リリーニャ、貴様なんてことを!』


 母様?

 すごく若く見える。

 ほとんど私と変わらないくらいの見た目だ。


『リリーニャの意見を採用します。この村を発見できた第一人者だし褒美くらいはあげないとね。ニーニャと言いましたか? 数十年はここで共同生活をしてもらいます。ついでに修行もつけてあげましょう』


 そこからの記憶も次々と頭の中から湧いて出てくる。

 ニーニャって人、凄い。

 弓の名手だと聞いたけれど、私なんて足元にも及ばないほどの使い手だ。


「エターニャのところには行かせない!」


「くそ、身体の形状が保っていられないわけ! 仕方がない。このオバハンの身体で我慢してやるわけよ!」


 トスッ!


「うん……弓矢? どこから?」


「母様を離して!」


「なっ!? 動けないはずでは? いや、それよりもその弓をどこから出したわけ!?」


 どうなっているのか分からない。

 でも次々と呼び起こされるニーニャの記憶から動けないときの対処法や色々な生き残るための技術が私を動かす。

 呼吸を変えるだけでこんなにも身体が冷えるなんて知りもしなかった。

 朦朧としていた頭もはっきりとする。


「空間魔法……」


 空間から武器を取り出す。

 空間魔法の中はすべて個人スペースだ。

 弓が入っているはずなんて無いのに様々な武器の中に


「それはニーニャの!?」


「エターニャ……? そう、これが神様の言っていた……」


 ドサッ!


 母様が地面に倒れ込む。

 身体の殆どが真っ黒になっている。

 あれも闇属性の影響なの?

 

「あは、あはははは! こりゃウケるわけ! まさか前世帰りが見られるなんて実に興味深いわけよ! あっしが誰だか分かる?」


「お母さん……いいえ、お母さんに似た単なる人形!」


「んなっ! 誰が人形かぁ! ニーニャぁぁぁ!」


 闇属性に対処できる武器は無い。

 どの武器も無効化されてしまう。

 だったら残りはこれしか無い!


「よくも母様を! 空間魔法……」


「その身体、あっしが大切に使ってやるわけよ! あんたの大好きなお母さんがねぇぇぇ!」


 ボスッ!


 黒い棘状になったルーシィが私の心臓を突き刺す。


「エターニャ! いやぁぁぁぁぁ!」


「テイクオーバー……あれ?」


 テイクオーバー、黒の書に書かれていた相手の身体を乗っ取る魔法だ。

 ルーシィの言っていた蘇生魔法がこれだったのは記憶から分かっていた。

 ニーニャもこの村で修業に励んだ時、村長からの魔法指導でどんなものかは教わっていた。

 結局、ニーニャが使えたのは黒の書の中で空間魔法だけだったけれど今はこれで十分だ。


「お母さんに似た化け物め! 異空間で一生彷徨っていろ!」


「馬鹿な!? 空間魔法をそんな使い方するなんて!」


 異空間内に空気は無い。

 そのため僅かだが空間魔法を開くとどうしても空気が流れ込もうとする。

 闇属性を触れずに倒すにはこれしか無い。

 

「あっしは……あっしはただ生き返って研究したいだけなのにぃぃぃ!」


 パッ!


 黒い棘となったルーシィがすべて吸い込まれたのを確認すると同時に空間を閉じる。

 

 ポッポッポッ……


 雨粒?

 雨が降り出してきた。

 そうか、神様がうまくやってくれたんだ。

 私はすぐに母様のもとへ駆け寄った。

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