表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神様になります  作者: 昼神誠
神の先にあるもの
553/592

この雷はどこかおかしい7

「天罰!」


 パンッ!


 両手を合わせ雷龍神に天罰を発動させる。


 ボンッ!


 ルーシィさんが内部から再び破裂する。


「ちっ! マジで鬱陶しいわけ!」


 だが、すぐに再生され森の中に逃げ込む。

 大人しく引き返してくれたわけでは無さそうだ。

 雷の天罰では足止めにすらならないか。


「雷神様、何を!?」


「ロージィとか言ったな? 今すぐに安全な場所へ行け。ルーシィさんはあんたを闇に堕とすつもりだ!」


「何ですと!? 姉君であらせられる村長を襲うなんて……」


「所詮はエルフだ。奴ら、俺たちのことなんてハナから同族だなんて思っていない」


 タナトスからの供給が途絶えていると自我を取り戻すとは限らない。

 闇ユーナや闇ニーニャだって狂ったように暴走していたしな。

 今のルーシィさんは自身で蘇生魔法を試してみたいという知識欲で動いているようだ。

 

「「雷神様、我々も戦います!」」


「駄目だ。とてもじゃないが敵う相手では無い」


「雷神様……」


 エターニャが心配そうな表情で俺を見る。

 この子のためにも村に被害を出すわけにはいかない。

 さっさと科戸の風で拡散させて拭き散らしておくべきだった。

 ニーニャさんの件もあったため情で判断を間違ってしまったな。

 森の中に入ると相手の思うつぼだ。

 この森の地形からして奇襲してくるに決まっている。

 闇属性が相手で無ければ特に恐れる必要はないのだが、アレだけは掠ってしまうだけでもアウトだからな。


「あらあらぁ来ないわけぇ? 雷神ともあろう神が情けないじゃん」


 大きな声で俺を誘っている?

 ルーシィさんの戦い方を俺はほとんど知らない。

 魔法重視なのは前世で一緒に勇者城に潜入したときに分かっているがそれだけだ。

 

「臆病な雷神も居るんだ? だったらこっちから殺ってやるわけよ」


 シ――ン


 森に静寂が戻る。

 いや、相手が魔術師なら詠唱中である可能性が高い。

 わざわざ大きな声で詠唱をする必要など無いからな。

 

「メテオ……フレイム!」


 ヒュゥゥゥ!


 なっ、こんな場所で炎属性魔法かよ!?

 上空から火花を散らしながら火球が村に向かって落下してくる。

 この国は雷属性の濃度が非常に濃い場所だ。

 当然だが雷属性と火属性の間に属性反応が起きる。

 火も電気もエネルギーの一種だ。

 それが衝突すると大爆発を起こす。

 核反応と似たようなものだ。

 

『なんとか上空で爆発させるしか無いわ!』


『ドレイク、村に被害が出ないようにするため爆発させる方向にも気を付けるべき。計算では4時の方向へサンダーアローが最適解』


 爆発した際の衝撃波だけでも村に壊滅的な被害を受ける。

 雷龍神の言う通りにするしかないか。


「どりゃ!」


 ヒュッ!


 雷の矢を火球に向かって投げる。

 雷神状態である今ならある程度は放った後でも操作可能だ。

 入射角に注意して……ここだ!


 バチッ……

 ドゴォォォォン!


「「うわぁぁぁ!」」


「「ひぃぃ!」」


 この国で火属性を使うなんて狂っている。

 火薬庫に火を投げ入れるようなものだ。

 ルーシィさん自身もただでは済まないだろうに。

 超上空で大爆発を起こす。

 轟音で森に居る鳥たちが羽ばたいて去っていく。

 

「あははは、ないすぅ! やるじゃん。でもあっしの勝ち」


「村長ぉぉぉ!」


 森の方角もしっかりと確認していたはずだが、俺の目を掻い潜って逃げるロージィの目の前にルーシィさんが立ちはだかる。

 くそっ、この深い森の視界の悪さで完全に見失ったのが失敗だった。

 さっきの魔法が囮だってのはおおよその検討は付いていたのに!

 ルーシィさんがロージィに触れ魔法を唱える。

 

「ダークブレイク」


「そうか、それほどまでに深淵を……」


 ドロッ


「うわぁぁぁ、村長!」


 ロージィが黒い液体になりルーシィさんの中へと入っていく。


「貴様ぁぁぁ!」


 馬鹿、やめろって!

 武装したダークエルフたちがルーシィさんに向かって斬りかかる。

 

「ふぅん、これが黒の書の内容か。なるほど……蘇生って言ってもその程度のものか。でも試してみる価値はあるわけぇ」


 ドシュドシュドシュ


「無傷!?」


「な……んだとっ?」


「今すぐ離れろぉ!」


 一斉に斬りかかっても無傷なのは周知の事実だ。

 変なのは何か考え事をしているようで反撃をしないことに違和感を覚える。

 ダークエルフや俺のことは全く眼中に無いってか?


「ここで一番若そうなのは……あっ、子どもが居るじゃん」


 スゥ


 エターニャとリリーニャの側に影移動し近付くルーシィ。


「ひっ!」


「お母様!」


 まさか、エターニャを使って何かするつもりか?


「天ば……」


『推奨できません。内部爆発させると闇属性の破片があの親子に直撃します』


「くそ、だったら……エレメンタルチェンジ! ウィンドフォーム」


 ビュォォォ


「雷神……様?」


「雷神様が風神に変わっただとっ!?」


『あ――もう! ダークエルフの視線が一気に変わったじゃない。でも仕方が無いか』


『おいらの力であの人形も木端微塵にしてやるにゃ!』


 風神状態に変化したが科戸の風を作っている時間は無い。

 今はまずあの親子をルーシィさんから離す!


 ヒュッ!

 ガシッ!


 二人を掴みルーシィさんから距離を取る。

 

「ふ、風神!?」


「雷神様が風神?」


「今は気にしないでくれ。とにかく逃げるぞ」


「どういうわけ? 神族が属性を変えた?」


 ルーシィさんも呆気にとられているようだ。

 距離をある程度取ることができたし二人を離し科戸の風を作るため右手に風属性を集める。


 バチッ!

 ビュゥ……


「風が集まらない? どういうことだ?」


『この高濃度な雷属性の中で風属性だけをうまく抽出するのが難しいにゃ』


「マジかよ!?」


 やばい!

 今、闇人形を葬る手段で思い付くのは科戸の風だけだ。

 土属性や雷属性で闇属性を細かくできるものが無い。

 

「やっぱパチもんの神じゃねぇかよ!」


「本物の雷神様は何処だ!?」


「最初からあんな怪しげな仮面を付けているだけでおかしかったんだ!」


 ですよね――!

 ってそれはさっきもツッコんだから別にいいか。

 村長がルーシィさんに殺されたってのにその怒りの矛先を俺に向ける連中も出てきた。

 信仰されることで得ていた力も急激に低下してしまったが特に問題はない。

 

「風神なんぞに任せていられるか!」


「村長の仇を取るんだ!」


「「お――!」」


 こうなるとエターニャとその家族だけでも守ることを優先するか?

 だが父親のほうは武装兵と共にルーシィさんに突撃しそうな勢いだ。

 

「相変わらず手前勝手な連中なわけ。ま、人族すべてがそうなんだけどぉ」


 敵であるルーシィさんのほうがよく分かっていらっしゃる。

 俺はもともと人間だったからそういうものだと理解できているが純粋な神族がこういった手のひら返しを何万回以上も経験すると壊れてくるのも頷ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ