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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神の先にあるもの
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この雷はどこかおかしい6

「雷神様……」


「この村をお助けください」


 ダークエルフの民たちが不安げな表情をして俺に懇願する。

 ま、闇属性の性質なんて知らない人のほうが多い。


 ザッザッザッ


 ルーシィさんの前に向かう。


「雷神族ねぇ……面倒なわけぇ」


「ルーシィさん、貴女もタナトスからの供給を失い自我を取り戻していますか?」


「あっしの名前を知っている?」


 ああ、やっちまった。

 つい癖で名前を呼んでしまった。

 

「………………」


 ルーシィさんが俺の目をジッと見つめる。

 俺の姿は少年体型から青年体型に変わっている。

 それに鬼の仮面を付けているため誰だか特定するのは簡単ではないはずだ。


「ああ、なるほど。得意な盗聴をしてタナトスとあっしらの動きをずっと見ていたわけね。雷神のやりそうなことだわ」


 ほっ、顔を隠しているおかげか俺の正体がバレずに済んだようだ。

 本来なら分かってくれたほうが話が早くて良いのだがダークエルフに俺が雷神では無いことを知られると危険だからな。

 

「何をしにここへ来た?」


「あっし、すでに死んでいるしぃ。何故かは分からないけどぉタナトスから操作されていない間にあっし自身で蘇生魔法を試してみようかなと思ってぇ、ダークエルフの村を探していたわけぇ……」


 ルーシィさんほどの魔術師が蘇生魔法はすでに失われたものであることを知らないはずが無い。

 適当なことを言って俺の反応を見ているのか?

 タナトスを呼び捨てにしているのも気になる。

 蘇生魔法とダークエルフの村に何か関係でも有るのだろうか。


「この村に蘇生魔法があるのか?」


「黒の書……村長のロージィが持っているっしょ?」


「貴様、どうして村長の名を!」


 武装した一人のダークエルフが抜剣しルーシィに斬りかかろうとする。 


「待ちなさい」


 コッコッコッ……


 広場の奥から見える屋敷から一人のダークエルフが姿を現す。


「えっ?」


「村長、危険です!」


「みんな村長を守れ!」


 あの人がこの村の村長?

 ルーシィさんにそっくりだ。

 肌が褐色である以外は瓜二つの姿をしている。


「おっ、あんたが村長? ふぅん、へぇ……」


「貴女がルーシィ・ルグレイドですね?」 


「何だとっ!? あのエルフが白の書の著者!?」


「この地上で最強の魔術師ではないか!」


 さっきから白の書とか黒の書とか魔法書か何かなのか?


『おいらもさっぱりだにゃ』


『情報共有……これが白の書です』


『雷龍神、さすが物知りね』


 俺の頭の中にも情報が流れ込んでくる。

 白の書、それは現代魔術のすべてが書かれた一冊の本だった。

 俺が転移したての頃に読んでいた魔術書や転生後ピグミーの村で読んでいた魔術参考書などはすべて白の書から抜粋され簡易化された書物らしい。

 ということは失われた光属性と闇属性を補助魔法として誕生させたのはルーシィさんなのか?

 全く知らなかった。


「じぃじに聞いたことがあるけどマジモンだったわけねぇ」


「ええ、ルーシィの双子の姉」


 へっ、お姉さん?

 

「あのエルフ族、村長の妹……だとっ!?」


「パピーとマミーはずっと隠していたけどねぇ」


「忌み子としてすぐに捨てられたからね。ダークエルフは単にメラニズムなだけなのにね」


 メラニズムはアルビノとは逆の条件で誕生する。

 確か遺伝子的にメラニンが欠乏して全身が真っ白になるのがアルビノだったから、単にダークエルフ族はメラニンが過剰なエルフ族のことだったのか。

 見た目が黒いだけで中身はまんまエルフ族ではないか。

 エルフ族を憎んで当然かもしれないな。


「なるほど……でも今更感あるよねぇ」


「そう、今更何しに来たって感じ」


「あっしも旅人やってる時に探そうと思ったことはあったわけよ。でも情報が皆無で百年ほどで諦めちった」


「たったの百年? エルフ族としては諦めが早すぎる。つまりはその程度のものだったってことでしょ」


 いやいや、百年は長いだろ?

 人間の条件下で考えてはいけないのか?


「だってぇ、情報がマジで見つかんないんだもん」


「でも今は辿り着いた。しかも、その肉体は何?」


「タナトスに作られた身体なわけよ。世界の裏の存在なだけあって、この村のおよその位置も知れたから来たって感じ」


「闇属性……そう、あれが」


「森はもとに戻せないしぃ、めんご!」


「ま、あの程度の面積なら良い。それで黒の書で蘇生するって?」


「そうなわけ! 急がないとあっし消えちゃうしぃ」


「黒の書はすでに無いよ。完成させた直後に雷神様が禁忌に触れるからと言って無理矢理献上させられたしね」


 ギロッ!


 ルーシィさんが俺を睨みつける。

 いや、俺の仕業じゃないしぃ!


「そういえば、あっしを殺してくれたのも雷神だったわけぇ! あのクソ忌々しい雷の女神め! そもそもそのだっさい仮面は何!? あんた、あのクソ女神の親族ならここで滅ぼしてやんよ!」


「貴様、雷神様に刃を向けるつもりか!」


「あ――うっさい。今どき、神族を拝めてんのあんたらくらいっしょ? こんなところで引きこもって外界も知らず神族の本来の目的も知ろうとせずにさぁ」


 確かにルーシィさんが風神を奉っている姿を見たことがないな。

 娘のニーニャさんが勇者の仲間をしたことで、この世界の勇者と魔王の争いが神々の賭け事で起きていた事実を知っている者は少ない。

 ま、そのゲームもすでに魔王や勇者という概念が崩壊しタナトスによって神族が滅ぼされていっている現状では成り立っていない。

 

「ルーシィ、雷神様に危害を加えることは許さない。それに……」


 ここまで信仰力が強い種族も確かに珍しいんだよな。

 長寿種のエルフに崇拝されるのは半永久的に神族にとって力の根源となっている。

 俺も雷神化している間はこの民たちから信仰されてすぅんごぉい気持ちが良いし。

 信仰欲も癖になりそうだ。


「この世界の理から外れた貴女がいつまでもこの世に留まることのほうが異常だと思うのだけれど」


 世界の理か。

 それは何もルーシィさんに限った話では無いんだよな。

 俺もそうだ。

 あの最悪な雷神にブレスで消滅させられ、魂を性格の悪い土神に利用され土人形となり前世の記憶を持ったまま新たな生を送っている。


「じゃ、どうするわけ?」


「今すぐに引き返して。すでに死人とは言え妹に手を出したくはない。エンドロイのことも今回は許すから」


「ふぅん、強気じゃない。闇に勝てるっての?」


「勝てない。勝てるはずがない。ダークエルフはこれからもここでひっそりと暮らしていく。これは単なる命乞い」


「……そっか。ま、黒の書がこの国にあることさえ分かっただけでも儲けものか。でも探すの面倒だしぃ著者が目の前に居るんじゃぁねぇ」


 ズズッ……


 ルーシィさんの影がゆっくりと伸びロージィに向かっている?

 他のみんなは気付いていないようだ。

 ロージィを取り込み記憶を共有すれば黒の書の内容が分かる。

 くそっ、結局ここで殺るしか無いのか?

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