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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神の先にあるもの
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この雷はどこかおかしい1

 地脈を通りヘルヘイムへ行く。

 この世界から土属性が消えた影響なのか空は明るく緑豊かな大地になっていた。

 それにしても見たことのない植物ばかりで別世界に来たようだ。

 ニーニャさんが石化された場所に行くと小屋は完全に崩れ雑草が生い茂っている。


「以前来た時もすでに半壊していたし当然か。土龍神、どうした?」


『想像はしていたけれど、これは良くないわね。早いところ元のヘルヘイムに戻さないと……』


「成仏しきれない死者たちの行き先が無いためだよな?」


『そうよ。全地脈の交わるここに死霊を集めておかないとモンスター化したときにより多くの生命が失われる』


 死霊系モンスターは厄介な存在だからな。

 寿命であろうと何だろうと死に至った直後、魂は成仏し冥界へ渡るのが普通なのだが、その世界の理に逆らう者も居ないわけではない。

 それが地縛霊や悪霊だ。

 世界の理よりも私的な念が強すぎるとどうやら成仏できないらしい。

 そして時間が経つごとにその魂は神族と同じように人々の想いの影響を受けモンスター化してしまう。

 そのため一箇所に集めておく必要がある。

 その役目を負っていたのがヘルヘイムだ。

 ま、悪い言い方をすると死霊のためのゴキブリホイホイってところだ。

 一度入った死霊を逃さないドーム状の結界が破れてしまったし、まずはそこから作り直さないといけない。

 はぁ……次から次へと仕事が増えてくる。

 今は休憩がてらにここへ来ただけだ。

 

『安心なさい。あの結界は今の貴方ではとても作り出せるものではないわ』


「だったらどうするんだよ?」


『当分の間は死霊を見つけ次第、貴方が直接送って差し上げなさい。それしか方法が無いわ』


 それは今までもずっとやってきた。

 だが、それは俺の目の届く範囲に限られる。

 世界は広い。

 今、この瞬間もこの世に未練を残し亡くなっていく者たちは大勢いるだろう。

 

『ドレイクは世界を救うヒーローになりたいのかにゃ?』


「そんなわけないだろう」


『だったら気にする必要はないにゃ。おいらたち龍神だって世界のすべてを常に把握できているわけじゃないにゃ』


 でも神となってから何か使命感のようなものに常に囚われている感覚がする。

 俺の思い過ごしだったらいいのだけれど……。


『ささっ、早いところ彼女の輪廻転生先を見てみましょ。これ一度してみたかったのよねぇ』


 一度してみたかった?

 おいおい、結局は自分の欲望を満たすためだったのか!?

 

『そうじゃなきゃ、こんな提案しないわよ』


『そうだにゃ。おいらはヘルヘイムという場所に来てみたかっただけにゃ』


 ま、いいけどさ。

 俺だってニーニャさんが転生先で幸せに暮らしているところを見たいという欲望に負けたわけだしな。


『あの雑草が邪魔ね。この辺り一帯だけ地脈の流れを変えて荒れ地に戻しましょう』


 土龍神に言われるがままに地脈操作をし植物を枯らしていく。

 小屋を小さな社に変えニーニャさんの亡くなった場所に墓標を建てる。


『アースメモリーで彼女だけを追うのよ』


「ああ、やってみる」


 大地の記憶でニーニャさんがヒメに騙され石化させられた瞬間まで遡る。

 数時間後、ニーニャさんの身体から魂が抜け出した。


『今よ、成仏して冥界に渡るところをしっかり見なさい』


 これはかなり神経を使うな。

 土龍神の力を使って特例的に冥界も見れる。

 そこは何も無い。

 完全な無だった。

 有である魂が無の場所に行くとニーニャさん特有の色が失われ透明な魂になっていく。

 これが浄化か。

 俺やユーナ、ドリアドの町の記憶もすべて消え去ったわけだ。

 そして透明の魂が冥界の先に進んでいく。


 ドクンドクン……


 次は真っ暗な場所だ。

 心臓の音が聞こえる。

 

「良い子に育ってね……」


 誰かの声?

 もしかしてここは胎内か?

 

『これが輪廻転生。浄化された魂はすぐに新たな息吹となるのよ』


『土龍ちゃんが作り出したシステムだにゃ』

 

 母なる大地ってか?

 生まれてくるのは母親からだけどな。

 そこから早送りで記憶を見る。

 そして、ニーニャさんだった子が誕生する。


「おぎゃぁおぎゃぁおぎゃぁ」


 はわわわ!

 また女の子だ。

 なんて可愛い!

 だが今回は猫耳では無いようだ。

 少し尖った耳……エルフなのは母親から見ても分かる。

 だが、それよりも気になるのは肌が色黒なことだ。

 ダークエルフってこの世界に存在したかな?

 

『エルフは全部おいらの崇拝者だにゃ。でも、この家にある印は雷龍ちゃん? どういうことだにゃ!』


『この種族ってまさか……』


 風龍神は苛立ち土龍神は驚愕している。

 俺にはさっぱりだけどニーニャさんの転生先ってレアな種族なのか?

 さらに記憶を早送りして村の全容を見てみる。

 その頃にはニーニャさんだった子は5歳になっていた。

 名前はエターニャと言うらしい。

 なんとなく名前が似ているのは偶然だろう。

 

『やっぱりダークエルフの村よ! まさか実在していたなんて!』


『にゃ――! エルフは全部おいらのものなんだにゃん! 雷龍神を信仰するエルフはエルフじゃないにゃ!』


 ダークエルフも実在して居たようだ。

 ま、北欧神話の国々の名を冠する場所があるくらいだし居てもおかしくは無い。

 

『一体何処にあるんだにゃん! 今すぐにでも向かって滅ぼしてやるにゃ!』


 いやいや、なんでやねん!

 穏やかに暮らしている種族なんだし別に放っておけばいいじゃないか。

 

『でも場所は確かに気になるわね。大地を司る者として全種族の生息地くらいは把握しておきたいでしょ?』


 俺は気にならんぞ。

 倍速再生でもこのダークエルフの村の掟はすべてエターニャの両親から俺も聞いていた。

 他の種族と交友していない種族らしい。

 そして村を守るように存在する霧の森の中で自給自足の生活をしているようだ。

 決して豊かでは無いが村は平和そのものだ。

 エターニャの成長を現在まで進めて見ていたがニーニャさんに似てかなりの美少女に成長している。

 俺は十分に満足できた。

 今のニーニャさんが平穏な生活を送れているのならそれで良いのだ。


「母様、今日はイノブタを父様と獲ることができました!」


「あらあら、エターニャも随分と弓の腕が上がったものね」


「ははは、母さんの血を受け継いでいることだけはあるようだ」


 うんうん、これぞエルフって感じの生活だ。

 さてと俺もやることが他にも多いし、見るのはこれほどにしておこう。

 ニーニャさん……いや、エターニャ元気でな。

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