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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神の先にあるもの
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この国はどこかおかしい4

「コスモスの頭の中にある情報を取り出しているわけでは無いのだろ?」


「それが出来たらどんなに楽なことか……」


「この記録媒体に書き込んでどうするつもりなんだ?」


「コスモスさんの頭の中を一度まっさらにして書き込ませる……簡単に言えば脳の入れ替えですわね。非人道的だと思いますか?」


 移植と考えれば納得が出来ないわけではない。

 だが脳移植なんて人として良いのだろうか?

 臓器移植は脳死された人から取り出したものを使用すると聞いたことがある。

 だったら脳を移植するのは一体誰の……言うまでもなくホムンクルスだろう。

 人造人間の医学的利用価値は確かにある。

 誕生したばかりでまだ覚醒していない状態なら脳死と代わり無いと思えば良いか?

 

「コスモスがもとに戻るなら……だがそのために犠牲になるナデシコ型の製造番号だけ教えてくれ」


「勇者様はお優しいですわね。犠牲にしない方法もありますことよ」


「え、そうなの?」


「脳の入れ替えでは無く新たな身体を用意し、そこにコスモスさんの情報を与えればそれはもうコスモスさんでしかありませんわ」


 あちゃー、そうきたか。

 ホムンクルスならではの出来ることだよな?

 しかし俺の中に入っていたプログラムとしてのコスモスに生を与えたのは俺だ。

 その際に使った入れ物はダリアのホムンクルスだった。

 その後も2度身体が別のホムンクルスに変わっているし今更か?

 いや、今回は違う。

 プログラムとして存在していたコスモスの魂はこの肉体に入ったままだ。

 新しい身体に魂を移し替えると現在進行系のコスモスの記憶も引き継いでしまう。

 記憶は同じだが魂が別の相手、それって本当に同一人物だと言えるのか?

 

「すまん、少し考えさせてくれ」


「ええ、まだ記憶を取り出す作業に時間がかかるので収集が完了しましたらお伝えしますわ」


 コスモスの眠っている部屋で暫くの間コスモスを見守る。

 そうだ、ホークに聞くことが他にもあった。

 

「ホーク、最終試練のことなんだが……」


「ああ、いつ現実へ戻っていたかですわね?」


「そうだ、いつから俺は現実へ?」


「勇者様には現在のグレンをその目で見ていただきたかったですの。最終試練が開始されると強制的に近隣の森へ転送されるようになっておりましたわ」


 最終試練が始まった時にはもう現実だったってことか。

 でもそれならどうして嘘を付いてまだ夢の中に居ると思わせたのだろう?


「なぜ騙すような真似を?」


「勇者様はトラブルに自ら入っていき結果として巻き込まれている節がありますわ。それもこれも他人のことを心配しているから。夢の世界と思っていれば他がどうなろうと関心を寄せないだろうと思いましてのことですわ」


「まさか雪が街で凶行に走ることも知っていたのか?」


「彼女は街へ買い物に出ると大抵ああなりますわ」


 それを放置している勇者軍って……。

 街の住人もよく我慢しているな。

 街を捨てて逃げればいいものを他に行く宛がなければ留まるのも無理はないか?

 

「街の様子を見てもらいたかったって雪のせいでとんでもない目に遭っただけだがな」


「それで良いのですわ。彼女を見捨てる決心は付きましたでしょう?」


 なるほどな。

 欽治の妹で幼い頃を知っているが故にどうしても手が出せなかった。

 それにパペットの能力の恐ろしさと弱点も知ることができた。

 良い勉強になったのは確かだ。

 街の住人を救うことは出来なかったがあの時は見捨てても構わない夢の世界だと思っていたからな。

 ……あー俺って自分からトラブルに突っ込んでいっている気がする。

 でも放っておけない質なんだよな。

 ホークの観察眼は研究者としてだけでなく状況を理解するのにも役立ちそうだ。


「雪のことで欽治と話す必要がありそうだな」


「あの方なら坑道奥の地下神殿ですわね」


 地下神殿?

 あっ……あああ!

 そうだ、ヤマタノオロチのことがばれていたんだ!?

 

「すまんホーク、ガイアを見ていてくれ!」


「あっ、勇者様! はぁ、こちらも仕事がございますのに……」


 ホークに眠っているガイアを預け急いで坑道へ走る。

 あれからかなりの時間が経っている。

 ヤマタノオロチはすでに屠られた可能性は高そうだが欽治がそんな場所にいる理由が分からない。

 もしかしたらヤマタノオロチの驚異的な再生力で未だに決着が付いていない可能性もありそうだ。

 

「おお、ドレイク様じゃ!」


「見てくだせぇ! あのホークとか言う人間に教えていただいた技術で坑道内も安全になりましたわい」


 坑道の入り口が綺麗に整えられてトンネルのようになっている。

 これからホークの頭脳を借りて国が発展していくのか。

 ま、想定外とは言え領民の暮らしが豊かになるのなら良いことだろう。

 

「ここに和服で刀を持った剣士は居ないか?」


「ああ、あの女性ですね? 名前は確か……」


 女性では無いのだが……。

 今は急いでいるし居ることが確認できたなら奥へ行ってみるしかない。


「欽治だよ。ありがとう」


「おお、そうでしたわい」


「そのまま真っすぐに進んでもらえればドラゴン様の神殿です」


 坑道内も整備されて綺麗になっている。

 ローズもここに来ているし魔封石の鉱脈も見つかったようだから後で寄ってみよう。

 兎に角、先にヤマタノオロチのところだ。

 坑道内を30分ほど直進すると豪華な装飾が施された扉が目の前に現れる。

 欽治が暴れていると思ったがやけに静かだな?

 ヤマタノオロチを討伐して賢者タイムにでも入っているのだろうか?

 

 ガガッ……ガコン


 扉を開けると巨大なドーム状の空間が広がる。

 重厚な扉と似たような装飾が至るところに施されている。

 それに外のように明るい。

 あの光る鉱石は加工できないほどの硬さだった。

 だがそれも師匠の馬鹿力の前にはいとも簡単に粉々になった。

 砂の状態でも光っていたためコンクリートに混ぜて使ったようだ。

 

「きゃっきゃ!」


「ほら――高い高――い!」


 欽治と子どもが2人だけでヤマタノオロチの姿は無い。

 すでに倒されたのか?


「あっ、パパ――!」


「父ちゃんだ!」


 ふぁっ!?


「わぁ、リュー……じゃなくてドレイクさん戻ってきたんですね?」


「パパぁ……遊ぼ――」


「父ちゃん、父ちゃん、母ちゃんは?」


 何故、俺の方を見てパパやら父ちゃんやら言うのだ?

 それにこの子たちには立派な角があるし鱗の付いた尻尾も生えている。

 

「ドレイクさん、バハムートさんは? あっ、この子たちとは初対面でしたね? ほら、お父さんに自己紹介をして」


 な……んだと!?

 またしても俺の子どもだとぅ!?


「僕はファフ!」


「おいらはニーズです!」


「それにしてもドレイクさん凄いですね。まだご自身も子どもなのに子孫をしっかり残せるなんて……」


 スミマセン!

 俺の意思では無いんです!

 眠っている間に俺が襲われただけなんです!


「あ、お母さんからお父さんに会ったら言う言葉覚えてる?」


「うん!」


「せーの!」


「「責任取ってね! お父さん!」」


 なんてこと子どもに言わせとるんだ師匠!

 ってか俺の繁殖力、百発百中じゃねぇか!

 こんなチート能力いらないっての!

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