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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
525/592

この能力はどこかおかしい5

 ……ヤマタノオロチは無事だよな?

 それも後で聞こう。


「こっちに戻ってきた直後は何をしていたんだ?」


「ん、色々と情報収集。ドレイクのことはホークから聞いた。まさか、あたしが村長の依頼で出向いた荒野に居た赤ん坊があんただったのは驚いたよ」


 そういや転生した俺や欽治を助けてくれたのはナデシコなんだよな。

 ……ああっくそ!

 俺の弟だった欽治のことをまた思い出してしまった。

 先祖返りして今はグランディアに居るとは言え赤ん坊の時からずっと近くに居た弟を簡単には忘れられない。

 母さんはその事を知っているのあろうか?


「もう良い? さっきパージして失くしてしまったから新しい腕を付けてもらうために地球に行ってくるね」


 ヒュン


「あっ、まだ話が……って行っちゃった」


「グランディアで暮らしているのでいつでも会えますよぉ。それにしてもドレイク強くなったり弱くなったり忙しいですねぇ」


 本当にその通りなんだよ!

 ホークによって睡眠学習した武術は全て覚えているとは言え、EMSで鍛えられた筋力や体力はすべて闇ユーナに噛み付かれた時に葬られてしまった。

 この数年間が一瞬で無意味になってしまうなんて時間の浪費以外の何物でもない。

 

「そうだ、師匠はシャオの近くに居たんじゃ?」


「あの変態さんは拙に興味を無くしたみたいで今はフリーですよぉ」


「やっぱり身体のあちこちをいじられたのか?」


「そんなことは絶対にさせないですぅ。この身体はドレイクだけのものですよぉ」


 ガバッ


 師匠が俺に抱き着いてくる。

 もう正妻戦争は嫌だから勘弁してほしいのだがな。

 くっ、この感触だけはどうしても耐えられ……ぐへへ最高だぁ!

 

「うんうん、こんな息子を好いてくれる娘が居るのは親として嬉しいこっちゃで」


「母さんもそういって師匠の胸の谷間に潜らないでくれ」


「師匠も今はグランディアに?」


「当然ですぅ。あ、早いところ帰って見せたいものもあるのですよぉ」


 見せたいもの?

 ま、グランディアに戻ってやらなければいけないことはたくさんあるしコスモスの状態も確認したい。

 後はルカとローズに心配をかけたことを詫びなければ……あと説教もだな。

 コスモスを追いかけて出ていってからとんでもないことに巻き込まれ続けた。

 そうなったのも全部あの2人が変なことを企むからだ。

 

「ドレイク背中に乗るですよぉ」


「なにしてんねん。はよ帰るでぇ」


 俺の縮地は短距離専用のため結局は師匠に頼らなければ長距離移動が出来ない。

 ……風神になれば超高速移動ができるのではないか?

 さっきも身体を空気のようにすることができたしな。


『風は自由にゃ。身を行きたい場所に向ければ簡単にゃ』


 俺の頭の中で風龍神が話しかける。

 今更なのだが風の龍神なのにどうして語尾がにゃん?

 ま、どうでもいいか。

 

「早く移動できるよな?」


『そんなに急いで何処へ行くにゃん? 自由に時間なんてものを気にする必要はないにゃ』


 あっ、これは絶対に早くないやつだ。

 風の力を持ってしても師匠の物理移動には敵わないのか?

 なんだかできそうな気がするのだが風神の力を使いこなすために特訓が必要だな。

 

「師匠、迷惑を掛ける」


「ドレイクのためなら何のそのですぅ」


 ドォォォン


 師匠の背中に乗った直後、高速移動で相変わらず息が苦しくなる。

 師匠の縮地は本当に凄い。

 俺もある程度は使えこなせるようになったとはいえ師匠と競争すると負けてしまうだろう。

 無の境地への至り方が師匠とは違うからなのだろうか?

 それとも単なる筋肉量の違いなのかは分からない。

 

「うっひゃぁぁぁ、早すぎるで。もうさっきの場所が見えなくなってしもうたやん」


「ふふっ、落ちたら危ないですよぉ」


「大丈夫や。このぽよんぽよんの中に居れば落ちへんて」


 母さんは師匠の胸の谷間から顔を出している。

 そう言えばどうやって雪の能力を解除したのだろう?

 

「母さん身体に異変は無いか?」


「ふぇ、元気やで。急にどないしたんや? けったいなやっちゃな」


「姫様のことは覚えているか?」


「姫様?」


「雪様だよ」


「ドレイク、ミミは覚えていないですよぉ。どうやらスリープをかけた状態で石化させると記憶を失うようですぅ」


「記憶喪失ってことか!?」


「でも安心するですぅ。どうしてなのか一部分だけしか覚えていないようでドレイクのこともしっかりと判断していたでしょぉ」


 あの時の母さんは意識があると雪の能力によりすぐに自死を試みようとしてしまっていたためスリープをかけ続けていたのだがいつかは目が覚めてしまう。

 俺だって四六時中母さんを持ち歩くことなどできない。

 そのため雪の能力の解除方法が分かるまで仕方無く眠っている状態で石化させていたのだがそれが功を奏した?


「せやねん。起きたら7年以上経っとるし驚いたで」


 その割には何も気にしていなさそうだよな。

 でも母さんらしくて安心できる。

 

「でも石化を解いたのはローズなんだろ? 俺が命令していないのにどうしてそんな勝手な真似を?」


「ローズに聞いたらナデシコに脅されて仕方なくやったみたいですよぉ」


 ああ、俺の部屋に置いていた石像をナデシコが見つけてしまったのか。

 確かにあいつなら無理矢理解かさせようとするだろう。

 

 ドォォォン!


「グランディール大陸が見えてきましたぁ」


 南の大門が見える。

 勇者軍……じゃなくて魔王軍の数は以前より多くなっている。

 もしかして再びグランディール大陸に攻め入るつもりか?

 すでにほとんどのゴブリンやオークは狩りつくされたはずだ。


「また以前みたいに迂回して行っちゃいますかぁ?」


 アレクサンダーはもう勇者ではなくて魔王なのだし魔王の拠点になりそうな場所は壊しておくべきだ。

 それにこれから攻め入る目的地はグランディアの可能性が高い。

 まだ何処かで怯えながら隠れている者たちも探せば見つかりそうだが大陸全土を捜索するなんて不可能だ。

 そんな中、確実に居ると分かっているのはグランディアで暮らしている領民くらいだろう。

 それに魔王プレイの一環として勇者の国を滅ぼすなんてアレクサンダーが考えつきそうなことだしな。

 これ以上先に進ませるわけにはいかない。

 今の俺ならば魔王軍の襲撃を止めることは簡単だ。


「あいつらをグランディアに行かせるわけにはいかない。ここで壊してしまおう」


「相手が魔王になったのなら手加減はいりませんねぇ」


 ドォォォン


 師匠が俺をおんぶしたまま垂直に跳ぶ。

 空気を蹴り二段ジャンプすることでかなり上空まで飛び上がる。

 足下には南の大門に建てられた要塞が見える。

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