表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
524/592

この能力はどこかおかしい4

 薙刀を杖のように使いながら重力場を前に進み闇ユーナに接近する。

 すでに闇ユーナの下半身は霧散し消え去っている。

 闇ユーナの両腕で掴まれないように気を付ければ余裕で龍神の御霊を取り返せそうだ。

 重力場を抜けた直後に縮地で一気に間を詰めてしまえば……。


 ヒュッ

 

「あはっあはははは……はっ!」


「もらった!」


 ザンッ


 闇ユーナの胸にある風龍神の御霊に薙刀を当て身体から引き剥がし俺の手に取る。

 あとはこの御霊に俺の神力を通せば何かしら反応してくるはずだ。

 

「タナトス様にもらった御霊を返せぇぇぇ!」


 ガブッ


 まだこんなに抵抗する力が残っていたのか!?

 消滅が侵攻し俺が近付いた時には首から下の部分まで完全に消え去っていたのに急いで離れようとした俺の右足に噛み付かれる。

 

 ドロッ……


 闇に触れられてしまった。

 俺の右足からゆっくりと死が進行していく。

 それだけではない。

 ステータスのありとあらゆるものが急速に減少していく。

 ATKやDEFなど一度上げたら減ることのないものまで数値が下がっていく。


「あははは! やってやったわ! これであんたも後は死ぬだけね!」

 

「ドレイクぅぅぅ!」


「バハムートちょっと踏ん張ってて。あっちを助けに……わっ!」


 グンッ


 空から降ってくる氷石が突如勢いを増し落下速度を上げる。

 

「これは重力魔法の影響みたいですぅ……わわわっ」


「やられたね……」


 ニヤリ


 闇ユーナが俺の右足に噛み付いたまま不敵な笑みを浮かべる。

 重力場を自らの意思で移動できるのか?

 すでに右足の感覚が無い。

 切り落とせば何とかなりそうだがやるか?

 悩んでいる暇など無い!

 両掌を右大腿部に向けアーススラッシュを放とうと魔力を込める。

 その時だった。


 ピタッ……


 何だ?

 周囲を見渡すと全てが停止している。

 俺の右足の侵食も停止しており不思議な感覚に囚われる。

 

『にゃにゃん、属性を変えるにゃん』


 声?

 頭の中に直接幼い子どもの声が聞こえる。


『早くするにゃ』


 属性を変える?

 意味が分からないぞ。

 

『おいらを使うにゃ。風龍神の御霊にゃ』


 龍神の御霊だって!?

 風龍神が俺に話しかけているのか?


『おいらを識れば良いだけにゃ』


 風龍神を識る?

 

 パァァァ!


 龍神の御霊が激しく輝き俺の中に溶けこむように入っていく。

 ……風龍神の記憶が流れ込んでくる。

 この星ではない何処かの惑星?

 ありとあらゆるドラゴン族が闊歩している光景が目に映る。


『今は思い出にふけっている暇が無いにゃ』


 おっとそうだった。

 詳しい説明は後回しにさせてもらう。


「闇ユーナ、お前はユーナじゃない。死をばら撒く最低な死神だ。その手で数多の生命を奪った罪をここで贖え」


「あははは! 最後の悪あがきで何をするつもり!? もうあんたは消え……」


「エレメンタルチェンジ! ウィンドフォーム!」


 スゥゥゥ


 闇ユーナを残し俺は風と一体化する。


「ドレイクが消えたですぅ!?」


「殺られたの?」


「あは……あははは! リュージを語る悪神を殺ってやったわ! あははは……」


 ブォォォ!


「なっ、何よ? この突風はぁぁぁ……」


 ボシュッ


 頭部だけ残った闇ユーナが一筋の突風で霧散し消滅する。

 

 ヒュゥゥゥ


「ふぅ、終わったか」


『にゃにゃ、よくやったにゃん』


「あれはドレイク?」


「でも髪の色が違う」


「あとは空から降ってくる氷石か。師匠、ナデシコ、そこから離れていてくれ」


「やっぱりドレイクですぅ!」


「ん、了解」


 ゴォォォ!


 風神の力を持ってすれば自由自在に風の流れを変えることなど容易い。


「近くが海で良かった。海に放れば問題ないだろう」


 強風で氷石の落ちる方向を変えアルス大陸とガンデリオン大陸の間にあるミッドウェル海峡に落とす。


「ドレイクぅぅぅ、やったのですねぇ!?」


「髪の色が変わっているのはどうして? スーパーサ○ヤ人じゃあるまいし……」


 ナデシコも地球で漫画の魅力に取り憑かれたか?

 ま、元気そうで何よりだ。


「これのおかげだよ」


 ポゥゥゥ


「風龍神の御霊ですねぇ。激しく輝いているのは初めて見たですぅ」


「風龍神のおかげで俺は風属性に魂を繋ぎ止め風神になったんだ」


「もとの状態に戻れないのですかぁ?」


「土神の力はすべて闇ユーナによって持っていかれてしまったんだよな。風龍神どうなんだ?」


『大丈夫にゃ。ただし神族では無く単なる土人形としての力しか残ってないにゃん』


 風神の状態は身体がふわふわとしていてなんだか落ち着かない。

 通常時は土属性をベースとしていた方が良さそうだ。

 なんだかんだと13年も付き合ってきた身体だしな。


「エレメンタルチェンジ、ノーマルフォーム」


 ズンッ


 身体に重みが加わりいつもの身体に戻る。

 だが土神としての力はもうない。

 闇属性に捕まって生き残れただけでも十分だ。


「エレメンタルチェンジって?」


「自身の属性を変える技ってところかな? 今は風龍神の御霊しか持っていないから風神にしかなれないけどな」


「属性を変えるって……そんな真似どの神族にも出来ないはずですぅ」


「ん、神族は生まれ持ってる属性でずっと生きていく。土属性の神族が風属性になることなどどうあがいても無理」


「今の俺は土神では無いよ。土で作られ人間の見た目をした特別なゴーレムでしかない」


 エレメンタルチェンジは何も持っていない俺だから発動できた。

 闇属性は全てを死滅させる。

 以前の俺から神としての力だけでなく今まで鍛えて上げてきたステータスも全てデリートされてしまったのだ。

 そのため今の身体は単なる入れ物にしか過ぎない。

 ま、そのおかげで属性を変えるなんて荒業が出来たのだがな。


 ポスッ


 地面に座り込みしばし休憩をする。

 色々と聞かなければいけないことが大量にある。

 まずは目の前に居るナデシコから話を聞いてみよう。


「ナデシコ、その身体はどうしたんだ? っていうか今まで何処に行っていたんだよ」


「ん、地球の仮想世界」


 仮想世界?

 俺が訓練させられていた夢の世界のようなものか?

 それともアニメやゲームでよくあるあの仮想世界なのか?


「それって未来の地球だよな?」


「そ、ダリアや欽治が生まれ育った世界。ヒメに石化されそうになった直前に意識だけ跳ばしたらそこに居た」


 自分の体を捨て魂だけで異世界間を渡ったのか。

 相変わらずトンデモ能力だなトラベラーってやつは。

 

「身体が無いからその義体に入っているんだよな」


「ん、そういうこと」


「俺の住んでいた時代では空想上の代物にしか過ぎなかった義体がまさか実在するなんてなぁ」


「可動域が肉体以上に動くからかなり便利」


 グリングリングリン


 ナデシコが首を360度回してみせる。

 人間の形でそれをやられるとホラーでしか無いから止めてくれ。

 

「ほんまに以前からバケモン並みに強かったのに本物のバケモンになって帰ってきたから驚いたで」


「ミミ、バケモノ呼ばわりは止めて。頭握りつぶすよ」


 俺の母さんを脅すなよ。

 そう言えば母さんにも聞きたいことがあるが後にするか。

 

「それでいつ戻ってきたんだ? それに俺のことをどうして知っている?」


「ん、戻ったのは3ヶ月前。今はドレイクの国にお世話になってる」


 最終試練を始める前に聞いたな。

 ルカがホークに近況報告する際にグランディアに誰かやって来たって。

 あれはナデシコのことだったのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ