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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
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この決戦はどこかおかしい10

 俺が最優先で行うことは集中することだ。

 あの闇ユーナが大人しくなりナデシコと会話している今しかチャンスが無い。

 俺の無の境地への至り方は師匠の何も考えないものではない。

 ただ一点にのみ全ての思考を研ぎ澄ます。

 ここがリアルなら闇ユーナの攻撃で俺は即死してしまう。

 いや俺だけではない。

 母さんやナデシコ、それに師匠までも危うい。


 アレクサンダー?

 そんなやつは知ったことではない。

 どちらにしても闇には今の俺では手も足も出せない。

 そうするとなれば集中することは1つだ。

 全力で逃げる。

 それしか考えてはいけない。


 だが問題がある。

 自身を優先して逃げるべきなのか、それとも仲間を守りながら撤退すべきなのか。

 後者を選ぶことが人として当然のことなのだが仮にもここに居る仲間は頼りになる者たちばかりだ。

 ナデシコにしても師匠にしても自身の命を守ることくらいは余裕でできるだろう。

 母さんは俺のポケットにでも入ってもらえれば済むことだしな。

 

「くすっ、それで良いのですよぉドレイク」


 師匠も俺が悩みやすい体質なのは知ってくれている。

 だからすぐに助けに来てくれたのだろう。

 

「ユーナ姉……貴女に触れる者はすべて死んでしまう。それが分かっていながらハグしようとしたの?」


「当然でしょ? ナデシコ私たちこれで1つになれるのよ? 嬉しくないの?」


 誰が自ら死ぬことを喜ぶんだよ!?

 よほど病んでいなければそんなこと考えもしないだろうが!

 

「ん、やっぱりあんたはユーナ姉じゃない」


 ナデシコは闇ユーナに説得を試みているわけではないようだ。 

 自身で心の踏ん切りを付けるために話していたのか?

 だがそれでいい。

 相手に情が残っているとこの上ないほど戦いにくい相手がタナトスの軍勢だからな。

 今の俺でもニーニャさんの人形とは正直言って戦いたくない。

 ユーナ?

 ぶん殴る程度はできそうだがさすがに息の根を止める時に思いとどまってしまうだろうな。


 カシャ


 ナデシコが闇ユーナの前で鞘を手に取り構える。

 もしかしてここで戦うつもりか?

 止めておけって!

 光属性でなければ絶対に倒せない相手なんだぞ!

 

「ドレイクぅ? また余計なことを考えていますねぇ?」


 そうだ集中しなければ!

 今を逃すと逃げることも迂闊にできなくなってしまう。

 

 ググッ……


「ナデシコ、もしかして私と戦うつもり?」


「それしか無いのなら……」


 一人前の侍と同等にナデシコは冷静さを滅多に失わない。

 だが今は若干の躊躇いが見られる。

 対話だけで闇ユーナがユーナ自身で無いと思うのは簡単なことではない。

 それはどうやらナデシコでも同じようだな。

 刀を抜きたいのだが抜けないのもそのためだろう。

 見えなくても音で判断できる。

 目が開かないため音が余計に感じ取りやすくなっているのだろう。

 周りに音に気にせず集中する。

 兎に角ここから逃げることを最優先するのだ。

 

「よぉし俺様たちはここから引き上げるぞ!」


「ヒャッハ――!」


「あっ! こらビビリ勇者待ちなさい!」


「貴様の相手はそこの勇者だと言っただろう。それと勇者ドレイクよ次に会ったときこそ勝敗を決めようぞ」


 捨て台詞だけ一丁前に吐いて去っていく魔王(仮)。

 何度も言うが俺は勇者として戦うつもりはないからな。

 そうだな……グランディアに戻ったら欽治に勇者の座を渡してしまえばいい。

 うん、そうしよう。

 

「隙有り」


 ヒュッ!

 ザンッ


「なっ!?」


 ナデシコが抜刀した音が聞こえた。

 斬られたときの斬撃音もしっかりと届いたしもしかして闇ユーナを斬ったのか?


 ズズッ……


「ふふん、物理攻撃なんて闇の前では何の役にも立たないわよ。だからナデシコ一つになりましょ」


「ナデシコ! その刀を早く捨てるです!」


「ん……」


 ドプン


 闇に触れたものからでも即死効果は伝わっていく。

 やはり迂闊に攻撃することもできない。

 師匠は龍神の欠片だけあって闇属性をしっかりと理解できているようだ。


「目が開いた。ドレイクやったですぅ!」


 まだ目だけだが閉じたり開いたりまばたきをすることができるようになった。

 心も落ち着いてきている。

 無の境地に近付いている証拠だ。

 師匠はまったく変わっていないな。


 ナデシコは声だけ聞いていればロボットかと思っていたがそうでもなく普通の人間と見た目に変わりはない。

 ただ関節部分が可動式フィギュアのようにパーツが一部露出している。

 あれってもしかして義体とかいうやつか?

 未来の地球では普通に存在していたりする?

 ま、俺の居た地球と同じ軸の世界とは限らないのだがな。


「やっと起きたんか。うちの息子なんやから寝坊助はあかんで」


 母さんもずっと石化して雪の能力から身を守っていたため年をとっていない。

 そもそもピグミーは身体が小さいくせに寿命は人間の3倍以上あるようだし見た目が変わっていなくても当然か?

 

「ダークウィンド!」


 ヒュン


「もう! 逃げてばっかりじゃ一つになれないでしょナデシコ!」


 当たれば死ぬんだから避けるのは当然だろうが!

 闇ユーナの言うことにいちいち突っ込んでいてはきりがない。

 

「母さんポケットに。師匠も心配してくれてありがとう」


「ドレイクそんなことは後でいいから早く無になって身体を動かすですぅ」


 口も動くようになった。

 いや首から上は普通に動かせる。

 俺もシャオに首の骨を折られたはずだがそれも完治しているようで違和感がまったくない。

 ナデシコは避けることに集中して何度も瞬間移動している。

 あの能力は身体が変わっても健在のようだ。

 

「んもう! 当たらなくてむしゃくしゃしてきた!」


 闇ユーナは本物と同じく短気なのは変わりない。

 これは良くないな。

 腹いせにこっちに向かって攻撃してきても何もおかしくはない状況になりつつある。


「ん、おけ」


 誰かと話している?

 あの感じはホムンクルスたちと同様に誰かと通信しているのか?

 

 ヒュゥゥゥ


 何かが遥か彼方から飛んでくる。

 グレンの方向からのようだ。

 細長い筒に翼の付いた……飛行機?

 いやそれにしては小さすぎる。

 もしかしてミサイルか!?


 ヒュン


「わっ!」


 俺の目の前にナデシコがジャンプする。


「バハムートそっちは?」


「まだですぅ。ドレイク早く無になるですよぉ!」


「ほんまに! 一国の王様になっておきながらだらしなさすぎるで!」


「あと数十秒ほどでここに核が落ちる」


 ふぁっ!?

 か、か、か、核兵器を使ったのか!?

 もしかして闇ユーナを倒すために?

 ナデシコは昔から手段を選ばないほうだったがさすがにそれはやりすぎだぞ!


「急いで離れないと……仕方ない」


 ガシッ


「えっ?」


 ナデシコが俺の頭を掴みそのまま……。


 ビュン


「わぁぁぁ!」


 なんて筋力だ。

 俺をボールのように投げやがった!?


 ちゅっ……ドォォォォォォォン!

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