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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
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この決戦はどこかおかしい4

 上流層で暮らしている住人たちもあんなサイコパスが間近に居るのに平気な顔して暮らしているなんてどうにかしている!


『正妃様また殺ってるよ』


『おっほほほ、少しでも側室が減れば勇者様とお会いできる機会も増えることですし助かりますわ』


『ほんとだよ―。勇者様の側室多すぎるんだって。お会いできるのが3年に1回なんて誰だって欲求不満になっちゃうもんね』


『この生活を手放してまで危険を犯したくは無いしねぇ』


『正妃様が枝打ちをしてくれるから助かるわぁ』


 なるほどな。

 雪も大概だがこの周辺の住人も十分に性根が腐っているようだ。

 ま、現実では無いし誰が何をしようと俺には関係が無い。

 俺も雪を見限る決心が付いただけでも良しとするか。

 

 バババババ!


『きゃぁぁぁ!』


『そこおどきなさい!』


 銃乱射事件でも起きていそうな感じだな。


『あっははは、死ね死ね死ねぇぇぇ! あたしがスッキリするために死ねぇぇぇ!』


 もう完全にやばいやつじゃん!

 雪の声が聞こえるだけで恐ろしい。

 全員を操るような言葉を吐かれたら俺にも届いてしまう。

 彼女の能力の有効範囲が最低でも半径3キロ以上あるのは分かっている。

 騒ぎを起こしてくれているおかげでこの辺りのドローンも雪の方へ向かっているようだ。

 野次馬じゃ無いのだからわざわざ集まらなくても良いのにドローンに組み込まれているAIもちょっとおかしいのでは無いか?

 

 ドンッ!


 縮地を使い勇者城方面へ進む。

 雪の能力範囲から出なければ危険だ。

 1分ほどで勇者城の周囲を守る堀の前に着いた。

 底には相変わらずマナが湧き出している。

 触れると魔粒子だけの存在になり消えてしまう。

 ある意味堀として最大限の役目を果たしているんだよな。

 だが今の俺なら楽々飛び越えられる。


 タンッ


『よっ……』


 勢いをつけてジャンプしたときだった。


『グレンに居るやつら全員お座りだ!』


 ふぁっ!?

 雪の声が聞こえる?

 そんなはずは無いはずだが声が聞こえるということは……。


『ちょっ!? こんなところで勢いをなくしたら堀に落ちてしまうだろうが!』


 身体が言うことを聞かず膝を曲げ正座しようと動き始める。

 やはり能力を使われた!?


 ガシッ!


 堀の内側でなんとか崖に掴むことが出来たが足が正座しようと動くため姿勢がおかしくなる。

 落ちたらお終いだぞ。

 なんとかしなければ!


『今日はやけに機嫌が悪い。だからあたしが考えた遊びを町に居る全員でやってもらう!』


 遊びだと!?

 ふざけるな!

 町の住人はお前の玩具では無いんだぞ!

 

『ブサイク狩りだ! 男であろうが女であろうが関係ねぇ! ブサイクを見つけ次第殺せ!』


 な、なんだってぇぇぇ!?

 人によって美的感覚は多少なりとも変わる。

 そんなの余程の美男子や美少女でなければ全滅するだけだぞ!?

 

『はっ! 雪様のご機嫌の為に!』


 口が勝手に動いた!?

 違う、意識が一瞬だが持っていかれていた。

 やばいやばいやばい!

 無関係な相手を傷付けるどころか命を奪うなんてまっぴら御免だ!

 

『こ、この! 身体ぁぁぁ俺の言うことを聞けぇぇぇ!』


 ガコンッ!


『うわっ!』


 崖の掴んでいる部分が崩れ落下してしまう。

 マナの中に落ちるわけにはいかない!

 

『アースピール!』


 ボコッ!

 

 石柱を崖から横に突き出しその上に座り込む。

 雪の能力で分かったことがある。

 距離がそれなりに離れていても有効範囲内に居れば声が聞こえてしまう。

 そしてもう一つは距離が離れていると能力の効き目が若干だが弱まるということだ。

 実際に俺の意識に植え付けられた狂気を自我でなんとか保てている。

 雪の眼前に居た時はそんな余裕など無かった。

 彼女の言われるがままに身体も意識も動いてしまう。

 

 ズガガガ!

 ドカァァァン!


『うわぁぁぁ!』


『いやぁぁぁ!』


 街中の至るところから銃声と悲鳴が聞こえる。

 殺し合いが始まっているようだ。

 だがここはあくまでも仮想。

 俺が目覚めると消えて無くなってしまう世界だ。

 何処で何が起きていようが俺には関係ない。

 

『お、俺もブサイクを狩りにいかないと……』


 だから違うって!

 効果が弱まっていても持続時間は永久なのか? 

 一瞬だが何度も意識が改変されそうになる。

 雪が次に全体へ能力をかけるまでこの衝動は収まらないようだ。

 下手に動くと危険だな。

 街中で俺が暴れたりしたら目立ってしまう。

 そうなると雪に見つかって終わりだ。

 最終試練では運も試されているが始まって早々についていないな。


『あはははは! こりゃ良い! ブサイクな奴らが駆逐されていくぜ!』


 雪めぇ!

 どこで教育を間違ったらあんな悪女になるんだ?

 セツが生まれつきそうだとしたら悪魔の子そのものだな。

 

『雪様もうお止めになっ……』


 パァン


『五月蝿い舎弟だ。貴様はもういらん』


 雪とは距離がかなり離れているはずなのに声が聞こえるのは何故だ?

 しかもサングラスをかけた怖いお兄さんの声も聞こえた。

 舎弟も雪の支配下で逆らう意思など存在していないはずなのにさっきも雪を制止しようとしていたよな?

 街の住人に雪から離れるようにも指示していたし。

 どういうことだ?


『さぁて何匹ほど狩れたかなぁ? お前らお座り!』


 ビシッ


 俺の中に植え付けられた狂気が消え去った。

 意外と早く止めてくれて助かった。

 だが足は正座したまま動こうとしない。

 アースピールの上に座っているから安心だけど下からマナの淡い光が見えて恐ろしいんだよな。

 一秒でも早く堀から抜け出したい。


『最も多く狩れたやつには褒美をやる! そして一匹も狩れていない雑魚どもは……』


 ふぁっ!?

 ま、まさか死ねなんて言わないよな?

 

『ブサイクの血で穢れた場所を徹底的に掃除しろ!』


 グンッ


『はっ! 雪様の仰せのままに!』


 タンッ!


 雪が能力を使った直後が最も強く影響を受けてしまう。

 意識は完全に掃除をしたくてたまらない気持ちになり正座していた身体もすぐに立ち上がり堀から抜け出す。

 そして街のほうへ走り出そうとしている状態で俺の自我が戻った。

 掃除でも街へ戻るなんて有り得ない。

 最終試練をクリアするために地下研究所へ向かわなければならない。

 

『身体ぁぁぁ言うことを聞けぇぇぇ!』


 グッ


 勇者城へ向かって一歩を踏み出すだけでも相当な精神力を使う。

 身体と意思がそれぞれ逆の方向を目指そうとするため一歩進んで二歩戻るという状態が続く。

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