表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
510/592

この修行はどこかおかしい20

『あのクソ爽やかなイケメンが勇者なのか!?』

 

 勇者の姿が変わっている。

 ドリアドの町でユーナが攫われたあの一度しか顔を拝むことは無かったがあの時は世紀末な格好をしており強面の中年だった。

 それが画面に映っているのは爽やかな好青年だ。

 勇者と言われれば納得できるほどのイケメンになっているが俺が見たのは別人だったのか?


『勇者様は全盛期であった20代の姿にバッグベアさんの力で戻りました。謁見時などは姿を本来の年齢に戻されるのですがバッグベアさんが亡くなったことでそれも不可能となり4代目勇者として活動されております』


 そんな裏事情があったとは知らなかった。

 しかし20代に戻っても顔がまったく別人なのは何故なのだろう?


『俺が知っている勇者なのか? 顔が若返ったとしてもまったく違いすぎるぞ』

 

『顔は雪様の頼みで整形なされましたわ』


『ふぁっ!? 勇者が整形?』


『はい、すでに3回ほど整形なされております。半年ごとに雪様に飽きたため顔を変えろと言われているようで従者の皆も困惑しているようです』


 ……あ―たまに居るよな。

 惚れた女のために何でも言うことを聞く男って。

 だがそこまでして雪に尽くすか?

 半年ごとに言われているってほとんど雪に愛想が尽かされているのでは?

 ま、好きとか飽きたとかの理由で結婚だの離婚だのって考えがお子様過ぎるよな。

 他人の家庭に口出すつもりなど無いが勇者が雪の尻に敷かれている感じなのかな?

 だが勇者がそんなのってなんだか夢が壊れるなぁ。

 

『ちょっと待てよ? それって雪が能力を使っているのでは?』


『可能性は捨てきれませんね。勇者様本人は否定し続けておりますが……』


 うわぁ、それはほとんど疑う余地も無く雪に能力を使われているのではないか?

 バッグベアのリペアも効果があるようだし勇者の力も異能力は打ち返せないのだろうか?

 でも俺は異能力者では無いし勇者と正面から戦うことになる。

 雪を何とかこちら側に持ち込めたらいいのだがあの様子では聞く耳も持たなそうだ。

 それに雪は幼い頃からサイコパスの片鱗は見せていた。 

 まさか愛する夫にまで能力を使い従わせるとは最初は驚きもしたが納得もできる。

 でもそれって……もはや雪が真のボスみたいになっているじゃねぇか!

 いやいや勇者だって十分に悪党だ。

 結局は似た者夫婦ってことか。

 

 グンッ!

 シュッ!


『わわっ! ちょっと天使の私になんてことするのよ!』


『闇よ滅せぇぇぇい!』


 モニターを見ると勇者が闇ユーナを押している。

 しかも拳一つで闇魔法を払いつつユーナに接近していく。

 

『ひゃっはぁぁぁ! さすが勇者様だぜ!』


『あの黒い女も為す術も無く勇者に蹂躙されるのだろうな!』


『勇者様、俺達にも後で分けてくだせぇ!』


 取り巻きのセリフが小悪党なんだよなぁ。

 しかもこれって中継されているはずだ。

 全国の視聴者に勇者の悪行が知れ渡っても問題無いのだろうか?

 ってか愛する奥さんが居るのに他の女性に手を出すなんて勇者として以上に男として最低ですよ!

 ま、闇ユーナにそんなことはできないのは俺が一番良く分かっている。

 そもそも堕天使は身体そのものが闇属性だ。

 勇者は触ろうとしただけで闇が祓われならず者は触れると闇に堕とされてしまう。

 

『んもう、どうして闇魔法が効かないのよぉ!』


『ふははは、そのような魔など俺には効かぬわ!』


『きゃぁぁぁ! 勇者様素敵―!』


 ならず者は勇者軍の尖兵だから近くに居るのは納得できるがあの女性たちは誰なのだろう。

 やたらと黄色い声を上げて勇者の顔がプリントされたうちわを振ったり名前が書かれたタオルを持ったりしている。

 勇者グッズを展開までしているなんて何とも商魂たくましいことだ。

 まさか勇者のファン?

 んな馬鹿なっ!?

 村や町を襲った張本人を好きになる人なんて……居なくも無いか?

 

『あの女性たちは?』


『勇者様の側室です』


 側室だとっ!?

 ひぃふぅみぃ、数えるだけで30人以上は居る。

 なんて羨ま……げふん!

 爽やかなイケメンになっただけでなく側室が何十人も居るなんて男の敵以外の何者でも無い!

 近くのならず者どもは羨ましくないのかな?

 お、俺は羨ましいぞ!

 誰でも良いから嫉妬で後ろから刺して来れないかなぁ?

 しかし雪の姿は見当たらないよな?

 正妻だから連れてきていないとか?


『雪様は面倒だから勝手に行ってこいと勇者様に仰られていたようです』


 なんだか勇者がパシられているようにしか思えなくなってきた。

 愛する正妻に無下にされて勇者に少しばかり同情しそうだ。

 俺もコスモスと結婚生活したらそんな風になったりしないかな?

 嫌だ!

 恐妻家だけは絶対に嫌だ!

 

 シュパッ!


『きゃぁぁぁ!』


『うぉぉぉ! 勇者様がやりやがった!』


『勇者様頑張ってぇぇぇ!』


 闇ユーナの右腕に勇者が触れると闇が祓われ右腕が蒸発する。

 ダークドールの身体も消し飛ばすほどの能力を持っているなんてさすがは勇者の力だな。

 しかし時間が経つほどにユーナの右腕は再生していく。

 ダークドールは傷を付けても瞬時に回復するはずだ。

 再生速度が遅いのは勇者に触れられたためか?

 それともあの場所に居ないタナトスが関係している?


『こうなったら! エヴァーラスティングフロストアビス!』


 パキッパキパキパキ


『ぐわぁぁぁ!』


『きゃぁぁぁ!』


 パキン……ドロッ


 周囲に居た勇者軍の尖兵や側室が瞬く間に凍結し氷像を残した状態で肉体が溶ける。

 中継カメラを操作する者も凍りついたのか視点が一箇所に固定した状態で勇者を追いかけていない。


 ブッ……ブツン!


『中継を切断したのか?』


『放送事故のようなものです。あの状態で放送していても勇者軍の為になりません』


 あの場所で生きていたのは勇者のみだ。

 闇ユーナをどう片付けるのか知りたかったが仕方がないか。

 それにしても闇ユーナも一般人を殺すことに何の躊躇いも無かった。

 側室があのような場所にいる事自体が悪いと言えばそうなのだが闇ユーナがユーナの姿をしていることで俺は何とも言えない気持ちになってしまう。


『では始めましょうか』


 最終試練が始まろうとしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ