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俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
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この修行はどこかおかしい19

『まず話しておくことがあります。ドレイク様が神薙龍識であったことは魂情報から明確となりました』


『魂情報?』


『ホークさんが発見なされたものです。魂が持つ情報ですね。そこには生まれた時から現在までの内容が記憶されています』


 まぁ当然だろうな。

 魂は脳に記憶されている内容のバックアップ的な役割も果たしている。

 生死を管理する土神族の王族は知っていて当然の内容だ。

 俺はヒメからその記憶を受け継いだだけだから詳しくはないがな。

 だがそれを独学で発見するなんてホークってオカルト方面でもやっていけるのではないか?

 

『それと雪に何の関係があるんだ?』


『ドレイク様がリュージである時にご覧になられたかと思いますがホークさんの研究室でユキとセツは分離致しました』


 それは今でもしっかりと覚えている。

 パティの毒にやられ雪がホークの研究室に設置していた培養槽の中で治療を受けていたときのことだ。

 一つの光が雪の身体から分離し隣の培養槽に移った。

 そして急速にホムンクルスが生成されセツが誕生したのだ。

 今思えばあの光はセツの魂魄だったのだろう。

 ……ということは雪の中には2つの魂魄が存在していた!?

 魂の数は一人に一つだ。

 絶対に例外は存在しない。

 多重人格者であろうとそれは変わらないはずだ。

 

『そして貴方たちがここを去った数日後セツ様と勇者様は出会いました』


 そこからはセツと勇者の馴れ初め話だった。

 特に興味は無いが勇者は息抜きにバッグベアの能力で子ども化し休息を得ていたようだ。

 勇者という肩書きがある以上は対等な相手をされないことに嫌気が指すのはよくあることだがあの勇者がそんなことを気にしているとは意外だった。

 

『そして勇者様とセツ様は結婚いたしました。ですがセツ様の身体はホムンクルスです。寿命は決して長くはありませんでした』


 なるほど……。

 なんとなく分かった気がする。

 ホムンクルスの身体では長生きできない。

 だったらユキと共生できていた肉体を得ればいい。

 それでセツはユキと接触したのか。

 初めから違和感を覚えていた。

 なぜセツは勇者軍を裏切って劣勢のローウェルグリン城にやってきたのか。

 ユキが俺にも詳細を話さず守っていたセツと交わした密約の内容、おそらくセツを再び自身の身体に戻すことなのだろう。


『勝手だな。ユキの意識では勇者のことなど知らないはずだ。どうしてあんな事を仕出かした』


『マムの手助けもありセツ様はユキ様の身体に戻ることが出来ました。その後は簡単です。セツ様が自身の魂情報をユキ様へと移すだけ……それでセツ様とユキ様は一つの人格となり雪となります』


 魂情報を移しただと?

 別のパソコンのデータをすべて上書きさせるような危険な行為だぞ。

 ユキの記憶の中にまるで自分が経験したような現象が起こるはずだ。

 そうか……恋心というのは素晴らしいものであると同時に厄介なものでもある。

 ユキもセツの記憶で勇者に惚れ同化を促進してしまったんだ。 

 もっと一緒に居たいそんな思いがセツの魂情報を一変も残すこと無くユキに上書きされていった。

 そんなのユキは騙されたようなものでは無いのか。

 いやセツもユキも同じ存在だ。

 心の中で起こったことを他人がどうこう言えるものでも無いか?

 

『だから今の雪はどちらでもないんだな……』


『そういうことです』


 欽治が雪の側から離れた理由もそこに有るのだろうか?

 能力レベルもセツよりユキのほうが高かった。

 今の雪は2人の中間に当たるレベルだと思ったほうがいい。

 そしてセツ状態の時にしか発動できなかったサモンの能力も使えている。

 結果的にユキの時よりパペットの能力は弱体化しているがセツの時よりかは強化されている。

 性格はどちらかと言うとセツ寄りだな。

 人の話をまるで聞かないところがそっくりだ。

 

『第四試練では上手くいったが現実でもうまくいくとは限らない。それに謁見の間に雪が現れるのは確実なのか?』


『未来に確実はありませんがこの訓練は必須です。意図しないところで出会っても今のドレイク様なら雪様の能力を打ち破ることができるでしょう』


 ま、そうだろうな。

 問題は雪が勇者の側に居た場合だ。

 2人を同時に相手にすることなど絶対に無理だと考えるまでもなく分かる。

 

『勇者の下に辿り着いた時に雪が居る確率は?』


『そのための最終試練が準備されております』


 また雪が出てくるのか。

 雪対策のほうが念頭に置かれているように感じてしまう。

 それほど彼女が使う能力が驚異的であるとホークも理解しているのだろう。

 他人の意思など関係せず従わせてしまうからな。

 まだタイマンを張って拳でどうにかできる勇者のほうが簡単なのは確かだ。


『それが終われば俺はここから出られるのか?』


『はい、その時に勇者様が何処に居るかは神のみぞ知るですが……』


 俺だって一応神なんだけどなぁ。

 勇者が城に戻っていたらそのまま最上階を目指すことになる。

 居なければホークと相談しどうするか決めることになりそうだ。

 タナトスの件も残っている以上勇者との決着は早めにつけておきたい。

 勝てるかどうかはまだ五分五分だがな。

 コスモスも少しずつ回復しているようだし俺も気合を入れて頑張るか。


『中継が始まったようですね』


 試練の続きを受けようと決心した次の瞬間がこれかい!

 でも勇者の戦いは勉強になるし見ておこう。

 決してサボりたいからテレビを見るわけじゃないからねっ!


 ジュルッ

 ズガガガ

 ドゴォォォン


 爆風でカメラには煙しか映っていない。

 激しいバトルをしているのは分かるが勇者は何処に居るのだ?


『このっ! どうして闇に堕ちないの!』


 バリッバリバリ!


 闇ユーナの声が聞こえた。

 煙の向こう側で戦っている。

 

『はぁぁぁ!』


 パァン!


 ユーナの闇氷魔法が消滅しただとっ!?

 一人の好青年がユーナが放ったダークブリザードアローを右手でいとも簡単に払い除ける。

 

『あの右手こそ一族に伝わる勇者の証です。すべての魔を払い除ける奇跡の手……』


 それは知っている。

 以前ジョンおじさんから聞いたことがあったためだ。

 だが俺が気になっているのはあの爽やかイケメンだ。

 きぃぃぃ、なんて憎たらしいほど格好良いのかしら!

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