表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺、神様になります  作者: 昼神誠
神のいない世界
504/592

この修行はどこかおかしい14

『ここって何処なんだ?』


『アルス大陸の最北端にあるスノーティアです。複数の村とユーグラシア王国が存在していた場所です』


 ここがスノーティアだと?

 映像が横に移動するが見えるものはすべて真っ黒だ。

 漆黒の大地に高くそびえる黒い山が妙に目立つ。


『あの奥に映し出されているのが霊峰セントホルンです』


 あれがセントホルン山?

 降り落ちる雪が黒い大地に降り積もることなく溶けていっている。

 本来なら白銀の美しい風景が広がっているのだろう。

 ダリア、これもお前の仕業なのか?


『ユーグラシア王国とスノーティアの住人は?』


『すべて行方不明です。もとからノルド国とは疎遠な関係でしたのでいつ滅びたのかも判明しておりません』


 やはりタナトスは神族だけでは無く人族も滅ぼすつもりか?

 いや、この世界そのものを破壊する?

 それだけの力を持っているのは確信できる。

 おふくろの言う通り光の神にならないと手も足も出せない。

 

『映像はこれだけです。下手に変色している部分に足を踏み入れようものなら瞬く間に闇の中に沈んでしまいます』


『だからセントホルン山には近付けない?』


『はい』


 ユーナの欠片はどうなっている?

 無事なのか?

 今もセントホルン山に存在していても近寄れないのではどうしようもない。

 くそっ、純神ユーナは確実に人々の願いを取り込んで成長してきている。 

 特にこんな欲望渦巻く首都では汚れた願いが滞留してユーナにとっては毒でしか無い。

 このままでは確実にディーテのような悪神となってしまう。

 願いを吸収しないように魔力を遮断する部屋さえ作ってもらえれば良い。

 実際にグランディアの屋敷にあるユーナの部屋の壁には魔封石を細かく砕いた成分を染み込ませている。

 

『ホークに今のユーナをこれ以上成長させないように言ってくれないか?』


『ご安心下さい。すでにホークさんの自室は改築され高純度の魔封石で覆われております』


 ほっ、そうだったのか。

 それなら成長は確実に遅延する。

 ユーナがディーテのようになってしまうと言ったことが功を奏したのだろう。

 一緒に暮らしているホークの願いは邪心では無いと思いたいがその周辺に居る連中がアレではなぁ。

 特に今の雪やシャオなんて近付くことを禁止したいほどだ。


『ホークの部屋には他に誰か来たりしないのか?』


『ホークさんが許可しているメイド用ホムンクルス以外は。使徒に割り当てられているフロアは基本的に立ち入り禁止区域となっておりますので』


 だったら雪やシャオが来ることは絶対に無いか?

 近くに居るのがホムンクルスばかりなら純粋な心の持ち主だし、ユーナが汚れる心配はしなくても大丈夫だろう。

 いや、むしろホムンクルスたちの願いを取り込ませ成長を促したほうが良いのでは無いか?

 今のユーナは昔の記憶をすべて失っている。

 いわば新生児と同じようなものだ。

 人格の形成は幼少期が大部分を占めるはずだろうし、純粋なホムンクルスの近くで成長したユーナに自身を守る魔法を発動してもらったほうが良い。

 今の状態は引き篭もりをさせているのとほとんど変わらないからな。


『すまん、ユーナのことだがホークに相談してくれ。それが良いと判断するかどうかはホークに任せるからさ』


『はい、どのような内容でしょう?』


 ホークにユーナにはそのフロアを自由に使ってあげさせたいこととホムンクルスと積極的に関わるように伝えた。

 もちろんその理由についてもコスモスに伝えるようにお願いした。

 俺の見逃しがなければホークは受け入れてくれるはずだ。


 ゴブリンやオークたちが魔族では無いこと、差別の対象では無いことを理解させるには環境が悪いかもしれないがそういう事は後で教えてもいいだろう。

 そういった類は倫理観に基づくものだ。

 ユーナはもとから知能が高いし俺が言っても分かってくれるはずだと信じたい。

 理解できないなら……まぁその時はその時だ。

 そもそも人一人の意識を変えた程度で差別が無くなるわけではない。

 だが身近な者が差別しているのは見過ごせない。

 そういった大人が増えれば良いのだけどな……。

 幼少期からそう教わってきた以上は倫理観も簡単に変えられないものなのかな?


 ピピピッ!


『では第四の戦闘プログラムを始めましょう』


 まだ気になることはいくつか残っているが今は少しでも早く修行を終えてここから出ることを優先したほうが良さそうだ。


『で次はどんな内容なんだ?』


『勇者様と戦うにはどうしても避けられないであろう問題をクリアしてもらいます』


 また意味深な事を……。

 勇者を守ることに全身全霊をかけるスリードが相手か?

 ま、あいつに勝てないと勇者には近付くことも出来ないだろう。


 ヴヴ……


『制限時間はありません。ある方のことを想うのならば拳も魔法も禁止です』


 ふぁっ!?

 それって戦うなって言っていることと同じだろう?

 スリードが相手ではないのか?

 ステージがカビル山脈の麓から見たことのない室内に切り替わる。

 玉座が置いて有るということは何処かの謁見の間なのか?


『ドレイク、あたしが命ずる! 貴様は今すぐその無能な自分の頭を破壊しろ!』


 んなっ!?

 ゆき……?

 違う、せつが玉座の横に現れ俺にパペットの能力をかける。


『はっ! 雪様の為なら!』


 俺の手が勝手に動き目の前に掌を向ける。

 そして……。


 ズガァァァン!


『はっ!?』

 

 気が付くと真っ白な空間に戻っていた。

 俺の頭の中での出来事だから自死させられても死にはしない。

 だがこの恐怖心だけは今も残り続ける。

 助かったのは良いがどうして第四試練の相手が雪なのだ?

 コスモスが戦闘プログラム開始前に放った言葉は兄である欽治や雪本人の事を想うと攻撃できないだろうという意味なのか?

 確かに雪には散々な目に遭わせられたが欽治が悲しむ姿を見たく無かったし俺自身も幼い頃の雪を知っているため本気で憎むことは出来なかった。

 

 ヴヴ……ヴ……


『ドレイク様、今回のプログラムもクリアしないと先には進めません。時間がもったいないので開始します』


 ヴン


 再び何処かの謁見の間に背景が切り替わる。

 いや何処の謁見の間なのか大体分かる。

 おそらく勇者城の謁見の間なのだろう。

 雪が居ると思われる場所はそこしかないからな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ